魔女の森③
「いくつものルートから似たような質問が来ています。
折れた木を持っていくのはセーフか?
ヘリで森の上空を飛んでも構わないか?
要約してしまえば、そういう事ですよね」
「分かりやすいねぇ。芸が無いよ」
魔女の元には、多くの質問が寄せられる事となった。
もちろん、直接聞く事ができるのはサウノリア、アズ外交官だけなので、実際にはそちらに声が寄せられるのだが。
パンクしそうな通信回線をどうにか宥め賺し、拾った質問をまとめてしまえば、上記二つが浮かび上がってくる。
サウノリアに預けられた古木の売却額が一般庶民の年収百年分を軽く上回った事で、それに続こうとする連中が張り切ってしまったらしい。
人間、考える事は誰しも同じなのだ。
「それで、どのように答えましょうか?」
「おそらく売れるだろう木はまだまだあるけどね。
流通って奴を考えるなら、サウノリアの判断で、そうだねぇ……三社まで絞っておくれ。三社だけ、許可を与えておくれ」
「希少価値の維持ですか」
「誰も彼もに許可を出せば、ろくな事にはならないからね」
そんな金に目が眩んだ連中に対し、魔女はサウノリアが許可を出した者にだけ、木材の回収を許す事にした。
古木の件といい、魔女がサウノリアを特別視していると、周囲が認識するように振る舞う。
いや、実際にサウノリアが特別扱いされているのは間違いないのだが。
ただ、サウノリアに特権を与える事そのものは不思議な話でも無い。
魔女の森に面する国は二つ、サウノリアと北征王の国だけだ。北征王側から魔女のところに押しかける手段が無いため、自動的にサウノリアが優先されると言うだけだ。
サウノリア側から魔女のところに行くのは道があるのでなんとかなるけれど、逆の方に道は延びていないのだ。北征王は、残念ながら魔女への繋ぎを持てないでいる。
「それ……サウノリアに全部押しつけていませんか?」
「ははは! まぁ、いいじゃないか。相応の見返りを求めな、アズ坊や。まだ金とコネは必要だろう?」
「お金は欲しいですけどね。コネの方は、扱いにくいんですよ」
サウノリアが森での倒木回収業の元締めになる事で、多くの寄付金が集まる事は簡単に想像できる。
また、希少品販売に関わる事で金満な連中に伝手ができる可能性もある。
問題は、できた伝手、コネは一方通行ではないという事。
自分たちが相手を利用するように、相手もサウノリアを利用してさらなる利益を上げようとする事だろう。
金持ちはただ金持ちなのではない。金持ちとして「何か」を抱えているから金持ちなのだ。
利用するつもりが利用され、骨までしゃぶり尽くされるなど、珍しくもなんともない。
アズはそれを警戒していた。
「ま、森の件であればアタシがケツを拭いてやるから、気楽におし」
悩むアズに、魔女はいつもの笑い声で応じた。




