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サウノリア王国③

 サウノリア王国に、どんな意図があるのか?


 答えは、「何もない」である。


 ただ本当に、現大統領の、森を領土に組み込みたいという領土的野心が暴走しているだけなのだ。

 「自分なら大丈夫」という根拠の無い自信に満ちた、阿呆(だいとうりょう)の暴走であった。





 そしてサウノリア王国は、軍を動かした。

 森の木々が邪魔なので、まずは百名の工作兵が木を切って道を確保しようとする。



 兵士が森の前に進むと、魔女の警告が飛ぶ。


「ここから先は殺し合いの場だよ! 覚悟がある者だけが前に進みな!

 3歩歩けば、右腕を撃つ。

 10歩歩けば、脳天を撃つ。

 上の連中に言われただけで逆らえないなら、ノコギリを捨ててしまえばいい。その時はアタシが守ってやるよ」


 この段階で、兵士の9割以上がノコギリだけでなく銃までその場に捨てた。作業を命じられた兵士全員が、一瞬で上官の命令に背いたのである。

 これまではあやふやな情報で魔女に挑み勝利できると思っていた兵士たちであったが、実際に姿なき声を聞かされては正しい認識を余儀なくされる。

 現実が欺瞞を払拭したのだ。

 一介の兵士に与えられる褒美などたかが知れているので、彼らは即座に身の安全を優先したのだ。


 残りの1割未満は、指揮官以上の人間である。

 彼らは作戦の成功報酬に目がくらんでいたので、ほとんどが作戦を遂行しようとした。


 なにせ、彼らは指揮をするだけの人間だ。

 歩いて撃たれることが無いので、「自分は安全」だという認識もあった。


「おいお前ら! 何を――」


 その指揮官たちは、何をしている、とは最後まで言えなかった。

 全員、体が動かなくなったからだ。

 最低限の生命維持に必要な筋肉以外が弛緩して地に倒れ伏した。



 これは森の近くにいなかった、軍事基地の将官や幕僚も同じである。命令拒否をした兵士を守るため、それを咎める人間が一掃されたのだ。


 こうしてサウノリア王国軍は、一瞬で壊滅した。



「せ、戦闘機を飛ばせば――」


 報告を受けた大統領は、顔色を悪くしながらも継戦の意思を兵士に伝えようとするが。


「さっさと降伏しな。死にたいのかい?」


 遠距離から脅されて、早々に降伏宣言。

 暴力では魔女に敵わないと、100年ぶりに証明されることとなったのである。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「大統領」といえば普通は共和国の元首をさす言葉であって、王国のトップなら通常は王。
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