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大乱のシーナ④

「そういえば、難民たちが森にも来ていたという話ですが……大丈夫なんですか?」

「森から恵みをちょっとばかり持っていく分には構わないさ。

 今だと木苺なんかが美味い時期だからね。摘まんだところで怒る気も無いよ。

 猪なんかの獣も、森の浅いところにいるようなのは狩ったところでグダグダ言ったりしないさ。獣の方も、人里に行っていただろうしね」


 北征王は難民を受け入れない方針だったが、それでも難民は勝手に国へと潜り込む。

 国境全てを監視するのは現実的ではないし、どうしたって穴は出来る。

 現代ではスマホを活用し、難民同士で密入国の手引きをしている所もある。

 これは陸続きの大陸国家だけでなく、島国であっても泳いで密入国をするような気合の入った難民もいるので、どんな国であっても例外ではない。



 一時期、西の国々ではそうやって泳いで密入国をした難民が溺れ死んだのを国境警備隊が見殺しにした動画が流出したことで、「残酷だ」「助けるべきだ」などと人権派が騒いだことがあった。

 その国は民意により、泳いでいる難民を追い返すことが難しくなってしまった。逆に助けなければいけなくなったのである。


 そうやって国境警備隊に助けられた難民はその国に感謝する事など無く、その助けてくれた国に居座るようになった。

 また、他の難民もその話を聞きつけ、その国には一年間に数千人の難民が押し寄せる結果となった。

 結果として、その国は難民により治安が悪化。それだけが原因ではないが経済が破綻し、国は存続の危機に陥ることになる。


 人権意識は大切だが、国家運営において人の命はそこまで優先しなければいけないのかと議論になった。

 答えは未だに出ていない。



 北征王の国に密入国した難民だが、彼らの一部は魔女の森の近くに難民キャンプを勝手に作り、当地の警察と何度も衝突している。

 何度追い払っても何度でも土地を不法占拠する難民に警察だけでは対応しきれず、近々、軍が動くだろうと言われていた。


 そんな難民たちだが、中には魔女の森で採取を行い、食料を得ている者たちもいた。

 彼らは魔女の森がどういう所かを知っていたが、警告が出ない範囲であれば何をやってもいいだろうと考え、無知ゆえに怖いもの知らずであった。

 逆に警察は魔女の森を恐れるため、あまりそちらに行くことは無い。

 軽く踏み入っただけであれば魔女は何も言わないが、元から森の近くにいる分、彼らの危険意識は強かったのである。



「まぁ、森に住み着こうものなら、容赦なく追い払うがね」


 魔女は「そんな事はしないだろう」と軽く言う。

 森で生活するのはかなり厳しいのだ。

 そして森を切り拓けば魔女が怒り狂うことは周知されているので、まずやらないだろうと。やっても少数だろうと。

 特に今はスマホを使って情報共有しているのでなおさらだ。


 そんな魔女の様子を見てアズは、「フラグ建てですね。絶対に出ますよ」と思ったが、口にはしなかった。

 彼が何を言おうと、難民たちはきっとやる。

 そして「自分は大丈夫」と「弱者(自分)は守られるべき」と言い出す連中が大多数と知っている。



 もちろん、アズの方が正しかった。

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