大乱のシーナ③
二度にわたり最大与党が崩壊したことでシーナ大央国が消えて、東海王が犬だから為政者失格となり、南海王が核に頼って魔女に殺された。
内乱はいまだ収まる気配を見せず、大陸は誰がどう言いつくろおうが混乱の極致にある。
旧シーナ大央国の後釜、後継者にふさわしい為政者というのはなかなか現れない。
居たとしても、この混乱を早々に収める手段などどこにも無いのだが。
それでも世界中の多くの人が、一刻も早い混乱の収拾を願っていた。
特に、力無い民衆にとっては切実な願いだった。
「最近は北征王のところも難民問題が発生しています。
サウノリアはまだ大丈夫ですが……一部の難民が、こちらを目指しているという話もありますね」
「ふぅん。サウノリアは難民を受け入れるのかい?」
「まさか。言葉も風習も違う民族を大量に受け入れては混乱は避けられません。
また、難民のように税収が期待できない相手にインフラを利用されては国民の不満が一気に高まりますから。今の不安定な政情ではとても受け入れられないでしょう」
戦争が長く続くと、戦地を離れて平和を求める人間が出てくる。
その多くは北征王の支配地域、北都を目指しているらしい。
中には、旧シーナ大央国から離れるため、そのままサウノリアまで行こうとしているという噂もある。
戦争が無ければそれでいいという戦争難民は、受け入れ国にとって負担でしかない。
彼らが移住先の国に対し根付こうとしているのであればまだいいのだが、彼らにとって移住先とは仮宿だ。根付こうという気持ちの人間などほとんどいない。
中には経済的に豊かな場所で生きていきたいと願う者もいるが、そんなものに郷土愛などを求める方が愚かである。一見根付こうとしているように見えても、周囲の人間と摩擦を起こす事の方が圧倒的に多い。
また、彼ら難民は自分の風習を捨てようとしない。
とくに宗教関連が厄介で、異教徒が一緒に暮らして問題が起きないと考えるのは楽観論ではなく妄想論だ。
互いが宗教的価値観を守ろうとすればぶつかるのが当たり前であり、どうしても周囲への配慮が出来なくなる。
すでに長い間、同じ国で暮らしている場合はある程度の妥協が済んでいるから大丈夫なのだ。新しく来た住人、難民にそういった地方独自の事情を理解しろといったって、それは簡単ではない。
そして近代国家のほとんどは「宗教の自由」を謳ってしまっているため、改宗を迫る事は法的にできない。問題は必ず起きる。
難民とは、基本的に「国にとっての毒」でしかないのだ。
受け入れられるのは、相応の余裕がある国に限られる。
そしてサウノリアは、つい最近に前大統領がやらかしたので、余裕など全く無い。
難民を受け入れるという選択肢は無かった。




