大乱のシーナ②
ある程度以上の戦力差が生じたとき、何らかの理由で政治的な混乱が生じたとき。
そういうタイミングであれば、戦闘行為が無くても国の統廃合が行われる。
南海王が核を使おうとして、それを魔女が止めた。
この情報が流れた段階で、南海王の支配地域は新しい南海王を立てずに他勢力に吸収されることを選んだ。
核兵器は強力だが、使った時の被害が大きすぎる。
そんなものを元同胞に使おうとした故・南海王への批判はすさまじく、南海王の親族は南海王を名乗ることが恥ずかしい、市民は南海王を名乗るものを王と認めたくない。
そんな感情論が国を支配したためだ。
結局、核兵器は他の核兵器への抑止力でしかなく、先制攻撃には使えない見せ札でしかなかった。
南海王はそれを理解できず、我を通そうとして盛大に自爆したのだ。
「――と、いう訳でして、南海王の勢力圏で戦闘行為はほとんど行われなかったようです」
「そいつは良かった。
まったく。年寄りを働かせるもんじゃないよ」
事後処理の話を聞いて、魔女は清々したと、すっきりとした表情を見せた。
戦闘行為があっても無くても構わないが、森に手出ししようという連中が居なくなり、状況が落ち着くことは望ましい。
今回は大量に制裁をしたが恨みはほとんど買っておらず、むしろ「身内の暴走を止めてくれてありがとう」と感謝されることの方が多かった。
内心では恨んでいる連中も、それを表に出せば周囲の制裁が待っているので表に出しづらいだけかもしれないが。死を悲しむところまでは言葉にしても、魔女への恨み言を口にできない雰囲気となったのだ。恨み言は全部南海王に、となっている。
一般には、それほど核の使用には忌避感を持つ者が多い。
「これを機に、核兵器根絶と行かないのが残念ですけどね」
「ま、手にした武器を捨てられる連中なんて、そうそう滅多にいないもんさ」
サウノリアは、核兵器を持っていない。
世界大戦では敗戦国だったため、核関連技術は開発させられないのだ。
原発なども外国の主導で建造されているし、そちらの分野は国内では完全に手付かずである。
そのため、他国の核兵器に怯えていて、一つでも核兵器が減ればその分、国が安全になるという意識が強い。
ただ、こういった事件が起きようとも核開発は続けられている。
世の中とは、核を嫌う民衆に支えられた国であっても、大体そんなものである。
国という見えない鎖は、民衆と違って核兵器を縛ってはなさないのだ。




