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大乱のシーナ①

 その日、魔女は非常に嫌そうな顔をした。


「アズ坊や。至急、本国と北征王に連絡しな。

 南海王の勢力がガタガタになったってな」


 南海王の勢力圏で大量に制裁をしたのだろう。気だるげに魔女はアズへと情報を流した。


「分かりました。理由をお聞きしても?」


 アズはすぐにそれを承知。

 南海王の勢力圏で為政者が大量死したのであれば、旧シーナ大央国の混乱が予想される。急ぎ、対策をする必要があった。

 北征王への連絡は国の誰かにお願いするとして、まずはサウノリアの官僚へと連絡を取るついでに、魔女に更なる情報提供を求めた。


 すると、魔女はとんでもない発言をする。


「南海王の馬鹿が、核を北都に撃とうとしたんで止めたんだよ」

「はぁ!?」


 どうやら、現状は核戦争一歩手前だったらしい。

 魔女は自前の理由で核戦争を止めたようである。





 北征王の治める北都は、魔女の森から200㎞以上離れている。

 単純に考えて、核攻撃をされたとしても魔女の森まで直接的な被害は出ないはずである。


 しかし、だ。

 上空の気流の関係で、魔女の森まで核の灰が流れてくることが予想できた。

 そうなれば森が放射能で汚染されてしまう。

 魔女はそれを嫌い、核攻撃を止めようとしたのだ。



 最初に南海王に命令中止を命じたが、拒否されたのでこれを殺害。

 それでも止まらなかった軍のトップやその周囲にいた連中が、仲間が魔女に殺され続ける中、意地になって核の発射ボタンを押そうとした。


 そうやって将官が死んでしまえば下は大混乱だ。兵卒がどれだけいようが、指揮官が居なければ意味は無い。

 そんな中で誰かがこんな事を言ったのだ。


「今、北征王が攻めてきたら我々は負けるしかない。勝利するには核攻撃しかない」


 結果、魔女は百を超える制裁を延々と行う羽目になったのだ。

 彼らは彼らなりの正義で戦おうとしたのだが、巻き込まれる方は堪ったものではない。

 魔女は一切の容赦をしなかった。



 そうやって核攻撃をどうにかした魔女であるが、さすがに「今回は疲れた」とばかりにアズを追い出してゆっくり休むことにした。

 ただ、ゆっくりするためにアズを追い出したことが、為政者たちの間に無価値な希望を見出させた。


「同時に1万人以上が森に攻め込めば、大半は死ぬだろうが、魔女をどうにかできるかもしれない」


 いわゆる、飽和攻撃という奴である。

 相手の防御を上回る手数で攻撃することで直撃を狙う戦術だ。

 反魔女を掲げる者たちに、幻の光が差し込んだ。





 なお、現実はそんな事をしようが無駄である。

 十万どころか百万人でも、どうとでもなる。


 ただ、それを証明する手段がないため、張りぼての希望は張りぼてであることが誰にも分からなかった。

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