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東海王③

 国家元首、総理、首相、大統領。

 こういった「民主的に選ばれた国の代表」と「国王」の違いは何か?


 血統による継承と考える人が多いかもしれないが、最も大切な違いは「権威」である。

 その血筋の正当性によって保障される「権威」が重要なのだ。

 王の「権威」は王の命よりも重く、時に白を黒に変えるほど絶対視される。



 さて。

 魔女に求婚して断られた挙句、三日間だけとはいえトイプードルになった男に、「権威」はあるのか?

 考えずとも答えは出る。そんなもの、無いに決まっている。





「東海王の国が割れました」

「アタシは知らないよ」

「そうですね。魔女様に結婚されると、我々としても困りますので」



 権威の失墜した東海王の国は、見事に割れた。

 東海王は権威失墜の責任を取るため人に戻ってから斬首刑。

 その後継者を名乗り南の方に「南海王」、北には「征北王」が立ち、争いだしたのだ。


 こうなるともう、何が何だか分からない。

 サウノリアは誰とどのように外交をして国交を成立させればいいのか、判断に迷う。

 旧シーナ大央国にあるどの国も「シーナ大央国の正当後継者である」という文言を要求するため、どこかと付き合いを持てば、その他と喧嘩になってしまうからだ。


 シーナ大央国より以前に崩壊した連邦国家があったが、その時よりも状況が悪いので、どの国も判断に迷う事だろう。

 そういう意味では、死んだ東海王はまだ付き合いを持てる男だったのだが。

 すべては終わった話である。



 その原因になったのはもちろん魔女なのだが、だからといって責任を追及する人間は、サウノリアの政府にはいない。

 民間にはちょっといるのだが、「だったら結婚すればよかったのかい?」と言われるとそんなことは無いので口を噤むしかないのだ。


 犬に変えた部分のみを問題視したとしても、そうなると魔女には身を守るすべがないため、現実的な対策が無くなる。

 問題の根っこを考えていけば東海王の求婚こそが一番の原因であり、魔女の非を問う事などできなかった。



 アズ自身、魔女が東海王と結婚などしようものなら大いに困ることになるため、国が割れたという話をしたのは、ただの報告でしかない。

 当たり前だが、その混乱を収拾してくれと頼む気もない。

 どちらかと言えば、手出ししないで欲しいとさえ思っている。手を出されると余計に混乱しそうなので。





 その後、魔女への求婚に「その手があったか」と考えて続く者はいなかった。

 犬になりたいと思う性癖の持ち主は、あまりいなかった様子である。


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