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東海王②

「初めまして、だな。魔女よ」

「とっとと帰りな、若造」



 魔女のところに東海王がやって来た。


 東海王は旧シーナ大央国の前身、その皇帝の血を引く者だと名乗っている。その血筋だからこそ、王を名乗っているのだ。

 彼の領土は旧シーナ大央国の東にある海岸沿いの大都市を3つ分と、首都であった北都を抑えているため、現在の小国群において頭一つ抜きんでた勢力だ。東の沿岸部を制しているから東海王なのだ。

 旧シーナ大央国は広大な土地を持つが、内陸部はほぼ空洞化しており、主要都市の9割が東と南の沿岸部にある。領土面積では他に劣ろうが、質では東海王の勢力が圧倒的に上に立っているのである。


 東海王は現在60歳手前であるが、筋骨隆々とした大男である。年齢以上に若く見え、精気滾る野心家といった風貌だ。

 見た目通り声が大きく力強いリーダーシップを発揮するが、やや独善的で下からの人気はあまりない。

 もしも彼が民衆への配慮の出来る男であれば、上手く立ち回っていれば、シーナ大央国は消えずに済んだかもしれないのだが。すべては仮定の話である。



「返事をお聞かせ願おう」

「もう答えただろうが。断るよ」


 外見的な話で言えば、魔女と東海王では魔女の方が年上にしか見えない。

 魔女も実年齢を考慮すれば若々しいというか、70歳ぐらいに見えるのだが……東海王と外見年齢のつり合いが取れるとは、言い難い。


 そういった事を考えれば、魔女への求婚は魔法の力を求めてであることは明白だ。

 魔女に頷く道理は無いし、そもそも普通の求婚であったとしても魔女は断っただろう。

 森の外の誰かと結婚する気は無いし、森に生きる男など、存在してほしくもない。アズのように通う人間は許容できても、それ以上踏み込ませる気が無いのだ。



「断られたからと言って、素直に応じるつもりは無い」


 東海王は魔女に向かって一歩踏み出し、肩を掴もうとするが。


「キャン!」


 トイプードルにされてしまう。



「犬にするのも、500年ぶりだね」


 悪さをした子供であれば、カエルに変える。

 では、魔女に手を出そうとした人間は、というと、今回のような求婚者であれば「発情した犬畜生」扱いという訳で、小型犬になる。

 トイプードルが選ばれた事に深い意味など無いが、特に害の無い小型犬にしておけば盛った男など怖くない、という罰である。



 このあと、犬になった東海王は護衛の兵士がちゃんと連れて帰った。

 途中で謀殺されることも無かったので、彼は最低限の忠誠を得ているようである。


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