十字軍③
「魔女に助けられる反魔女集団w」
「潰そうとしている相手に助けられるって、どんな気持ち? ねえ、今どんな気持ち?」
「うはw 相手にされてないwww」
反魔女を掲げる組織、新生十字軍は、魔女の公認を得たことにより瓦解し始めていた。
彼等は様々な思惑が絡み合ってできた少数派である。
魔女と政治を切り離して考えようという主張から、最終目標は魔女を殺す事とする政治家まで。それでも「魔女は必要ない」という想いだけで繋がっていた。
それが魔女の公認を受けてようやく一息吐く事に、周囲は大いに煽りだしたのである。
彼等は自分のやろうとしている事の道のりの遠さを理解していた。
だからこそ、自分たちの世代では土台作りと割り切って、魔女の公認という屈辱に耐えてでも道を作り上げる気でいた者が多い。
なにしろ反魔女には命の危険が伴うと思われていたのに集まった集団だ。他の政治家に比べて気合いが違うし、実力がある。
ただ、魔女に支援される事のデメリットを理解していなかった、しきれていなかったという点は大いにマイナスであったが。
魔女の公認を蹴り飛ばす事は可能だ。
「魔女に公認される謂われはない」と言えばいい。
しかしそれをすると、彼のみならず、彼の後援者まで殺されかねない。家族はともかく、同じ思想の仲間まで命の危険に晒されかねないのだ。
いざというときに遺志を継ぐ誰かがいないというのは、組織としてかなり危険だ。一世代だけの組織など、砂上の楼閣に等しい。
だから“次の世代”を考えると、公認を拒絶するのは――組織として、悪手である。
周囲からの嘲笑に耐えながらも踏みとどまるしか無い。
魔女の公認で一息吐く事はできたが、新生十字軍の進む苦難の道のりは、まだ始まったばかりであった。
新生十字軍を煽っている集団は、別に彼等を潰したい訳では無い。
面白いから、思わずそれを口にしているだけなのだ。
ノリと勢いに任せた衝動的な行動である。
ただ、煽り集団には魔女が自国の政治に絡む事を忌避する者も混じっている。魔女が国民であるならまだしも、自国の者以外に政治に干渉される事はやはり嫌なのだ。
そういう者はどちらかと言うと「反魔女掲げるなら魔女の公認なんて跳ね飛ばす気概を見せろよゴルァ」などという、ガッツの足り無さを指摘するような、発破をかける気持ちで煽る書き込みを行う。
ただ、投稿された画像の見た目や書かれた文章だけを見ると、そんな気持ちが全く伝わってこないのだが。
支持者である彼等から、一見すると十字軍の政治家は煽られるようになってしまったように見える。
それは十字軍にとって、かなり、痛い。
彼等は孤立無援となるまで追い詰められようとしていた。
そして公認したという魔女は、
「なんでこうなるかねぇ」
と森でぼやいていた。
魔女に殺されるかもしれない恐怖で成立しない組織が、魔女に公認されて成立が危ぶまれる。
どうやって口を挟めば良かったのかと考えたが、それを考えても仕方がないと割り切ったのだ。
正解は、おそらく口を挟まずにいれば良かったと思い付いた。
ただ、その正解を実行するのはもう不可能で、よくよく考えれば十字軍を支援しなくてはいけない理由も無く、流れに身を任せるだけで充分だったからだ。
彼等はまだ魔女に手出しをしない。
それでいいのだ。




