秘薬騒動・終/白の守護者⑤
ネット上で問われた魔女の制裁。
その支持率は8割ほど。
これまで魔女が直接人を殺すという事をあまりしなかったので、それだけ魔女が「話せばわかる」相手だと思われていたという事だ。
実際、魔女はこれまで警告・威嚇・警告・殺害と段階を踏んでいるので、警告された段階で相手が退けば殺しはしない。
その後の扱いに関してはフォローも何もないため、サウノリアの前大統領の様に死刑になる事もあったが、普通、そこまでフォローする者はいない。
普段であれば、退く者を追わないのが魔女の流儀であった。
ただし、今回はそういった警告は“すでに行われている”という扱いになったため、問答無用で彼らは全滅した。
シーナ大央国は一党独裁の一応共産主義国家という事になっている。
「なっている」というのは、共産主義本来の持つ公平性が完全に失われているからだ。
「能力に応じて働き、必要に応じて取る」という理想は、一部の人間が富を独占する資本主義を否定したはずだが、結局は多くの民間人が貧しい生活を強いられ、共産党の幹部か一部の富豪だけが裕福に暮らす国になっている。
自称共産主義者により共産主義が否定された国家、それがシーナ大央国だ。
そんな国だからこそ陸軍の大半が革命家に従い、不満の対象であった前政権の共産党を粛清したというわけだ。
その革命家がテロリストとも知らずに。
追い詰められていたのだ。シーナ大央国の民衆は。
そんなテロリストたちは「共和党」を名乗り、正しく富を分配すると言って国民の支持を得ようとしていたわけだが、それが実行に移されることは無かった。
魔女の制裁が発動したからである。
主席となった白の守護者の男は国際平和を謳っている最中に脳卒中(脳出血)で死んだ。
脳の太い血管が不自然に破裂し、死んだのである。
軍事力で国をまとめ上げようとした主席が急に居なくなってしまったのだ。
国の意思決定を行うのは中央政治局の常任委員の7人、通称「シーナセブン」と言われる人間だ。
ここも白の守護者の思想に侵されていた人間だったため、彼らも死んだ。
シーナ大央国は、クーデター後の一ヶ月も経たないうちに政治機能が沈黙したのである。
短期間で共産党も共和党も死んで居なくなったことにより、地獄の釜が蓋を開ける。
大央国はいくつもの小国に分裂し、統一戦争を始めてしまった。
防ぎたかったはずの戦争が形を変えて始まってしまった。
魔女の制裁は、戦争の引き金となったのである。




