秘薬騒動⑦/白の守護者②
白の守護者は、魔女を狙うのを辞めた。
自分たちの命をかけて何かするより、全ての悪を魔女のせいにして暴れまわる方が楽だからだ。
守護者の名とは裏腹に、何をしても「魔女が悪い」と言いながらテロを行う白の守護者たち。
森にさえ手を出さなければ自分たちの身は安全だからと、彼らはそのように勘違いした。
「魔女さえいなければ、お前たちも平和に暮らせたのになぁ!
恨むなら魔女を恨めよ!!」
魔女の制裁は、森に手を出した者に限られる。
彼らは「制裁は」森に手を出さなければ発動しない仕様の裏を突いた気でいた。
「ほら。これが『白の守護者』の幹部と、そこに資金を提供している企業の一覧だよ。
さっさと捕まえちまえ、あんな連中」
魔女はルールにより直接手を出せないが、情報提供ぐらいは出来る。
以前の狂信者の時のような顔を見せる協力よりもはっきりとした形で力を貸すことを決め、暴れている連中のリストを渡して捕まえるように言う。
特に企業による資金提供は詳細な情報が載せられており、どういった方法で資金がテロリストに流れたのか、調べやすくなっている。
魔女も自分の名前を勝手に使ってテロをする連中に対し、直接制裁を加える事は出来ないが、本気で容赦する気が無かった。
魔女はかなり怒っているのである。
これを受けてアズ外交官は「魔女は魔法が使えるんだから、本人にどうにかしてほしい」と内心で思いつつも、リストを受け取り、テロリスト狩りを始める。
テロリストはサウノリアが主な活動場所であるが、関係している連中は世界中に散らばっている。
サウノリアは主に国々の首脳部へ情報を流し、テロリストを捕まえるようにと依頼をする。
情報を受け取った過半数の国は民主主義であっても政府の権力が強い。
情報を手に入れると証拠をつかむ前に対象を拘束。その後、証拠集めをするという迅速な対応をして見せる。
人命や安全保障と個人の人権を比較したとき、人命を優先しても大丈夫なのだ。魔女に対する信頼もあり、国は証拠のでっち上げまで行ってテロリスト狩りに勤しんだ。
一部の国は先に証拠集めをしようとしてテロリストに逃げられるが、逃げる先の国がすでに無く、他国の隠れ家もかなり押さえられている。
資金も銀行口座を凍結されればどうにもできず、テロリストたちは一人、また一人と捕まっていった。テロに協力する企業も、全く関係ない一般社員を巻き込みつつ潰れていく。
問題は逃げ出すテロリストではなく、最期にひと暴れを、と言い出す連中であった。
ネット情報で作られた爆弾や、非合法組織から供与された銃を使ってのテロはなかなか防げない。
彼らは射殺されるまで文字通りの意味で最後の一撃を放って逝った。ビルや遊園地、人通りの多い駅などが標的となり、白の守護者は暴れて回る。
迅速な対応をした国はともかく、動きの遅かった国では少なくない民間人の死傷者が出てしまった。
魔女が直接介入すれば防げたかもしれない。
そんな思いがどこからともなく呟かれるようになった。




