サウノリア王国②
次にサウノリアが打った手は、己の正当性を周囲に主張し、戦争の権利を得る事であった。
「300年前! この森のあった土地は我らサウノリアの領土であった!
だが、魔女に不当に占拠され、今に至る!
これは失われた領土を取り戻すための戦いなのだ!」
ちょうど政権が変わった――サウノリアは王国を名乗っているが、現在は一応民主主義という事になっている――事もあり、対魔女強硬論が主流になっていた。
魔女本人はサウノリアに対しなんの主張もしないため、歴史が捏造され悪とされても森から離れた場所で過ごしている国民は気にしないのだ。
ただ、この主張はお隣の覇権国家、シーナ大央国から突込みが入る。
「ふん! 過去、我が国と戦う時には魔女に泣きつき助力を得てようやく戦争の体を取ることが出来たというのに、それを忘れ魔女を悪役に落とすとは!
相も変わらずサウノリアの猿どもは歴史を残すという事を知らんな!」
シーナ大央国にしてみれば、サウノリアの主張を認める理由がない。
むしろここでサウノリアの非を叩くことで大央国がサウノリア王国に勝利するという流れ・前例を作ることが出来るので、嬉々としてサウノリアを責め立てた。
自国が王国に攻め込んだこと、そして退けられたことは屈辱である。
しかし敗北を受け入れ魔女を英雄のごとく扱えば、シーナ大央国は国際社会に器の大きさを見せつけることになる。
過去の敗北も、いま利用できるなら利用する。
大央国はとても強かだった。
そしてこの論争でサウノリアが勝って利がある国というのは、ほぼ無い。
また、サウノリアの主張する300年前の土地の所有権が本当かどうか、多くの国の官民問わず調べ出した結果。
「おいおい、サウノリアの連中が用意した資料、全部ニセモノじゃねーか」
「サウノリアの森の近くの連中に聞いてきた。そんな事実は無いって。国にばれると殺されるから誰が言ったかは教えられんが」
「魔女本人に凸してきた。「アタシは500年前からここに居る」だってさ。
証拠に森に来る前に持ち出したっていう装飾品、見せてもらった。こっちは本物確定な。炭素年代測定法で調べたから間違いない」
「物証ありかよ。サウノリアの嘘、跳満で確定なw」
「三倍満どころか数え役満だろwww」
サウノリアが嘘つきだと、全世界に情報が流れる。
それを否定する手段は無く、ここで武力行使に出れば他の国が介入する手はずまで整えられ、サウノリアは沈黙するしかなかった。
そして、最後に魔女がサウノリア王国に向けたコメントを求められると。
「森が欲しいっていうならかかってきな! アタシは逃げも隠れもしないよ!
グダグダ言わなきゃケンカも戦争もできない腰抜けが!! 他の連中に手出しなんざさせないさ、アタシ一人がとことんまでやってやるよ!!」
まさかの挑発行為。
ファッ〇と、中指立てて一騎打ちを所望した。
サウノリア王国と森の魔女。
世界中の誰もがサウノリアが無謀な挑戦を本当にするのかと、固唾を飲んで見守ることになる。