秘薬騒動④
国連。
多くの国が集まってできたそれは、公平公正な機関かと言われると、そうではない。
ごく一部の国が自分たちの国のために他の国に色々と命令をする、そしてそれがあたかも公平であるかのように世界中の人々へ見せつけるための機関だ。
いや、ある意味では公平公正な機関か。
経済力と軍事力、この二つが強い国が正義となるのだから。
両輪は無理でも片方ならば、と、一部の国で止めろと周囲から言われても核兵器が開発されるのは、下が上に倣った結果でしかない。
そんな国連で、サウノリアの代表は多くの国から責められていた。
「魔女の森への道を開放するべきだ!」
「あれはサウノリア一国が独占していい物ではない!」
「なぜ、貴方達だけが利益を受け取る!」
基本的な論調は、弟子入りで人が集まった時と同じだ。
魔女に向けられた言葉がサウノリアに向けられただけで何も変わっていない。
人類全体の為に魔女個人を蔑ろにする。
魔女の意思など、世界平和のためには踏みつぶしていいと彼らは思っている。
それが、正義だと。
そう言っているのだ。
この流れは、誰でも簡単に予測できる流れでしかない。
だからサウノリアの代表は、焦る事無く、事前に魔女から引き出した言葉を伝える。
「『アタシは、面倒ごとはごめんだよ。何を頼まれようが、どうするかはアタシ次第さ。魔法を教える気も無いし、手を貸してやろうとも思わない。何より、アタシは森の外に行く気なんてさらさらないよ。文句があるならかかっておいで』以上です」
「横暴だ! 本当に魔女本人が言っているか、その保証もなく信じられるか!」
これも予想できた流れである。
だから、追加で釘を刺す。
「疑うようでしたら、証明の為に特別な対応をする、と聞いています。
――今の言葉が偽りであるかどうか、試してみますか?」
今度は、誰も何も言わなかった。言えなかった。
虎の威を借る狐は、虎の言い付け通りの仕事をこなせたことに胸をなでおろした。




