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狂信者⑤

 結局、サウノリアの国家権力により教会の異端審問官達はその存在を明るみに出される事になり、教会組織に国際警察による捜査のメスが入った。

 一部の孤児院が非合法工作員の育成施設になっているところもあり、これで一安心。



 ……とは、ならなかった。





「やれやれ。教会の連中も不甲斐ない」


 教会の異端審問官は引っ張り出されても、組織が一つではなかったのだ。

 この宗教は長い歴史の中でいくつもの派閥を作り、分裂し、別組織として異なる宗派を作り上げていた。

 最大勢力の教会組織からは異端審問官が消えたとしても、別組織の異端審問官が残っている。


 国際警察まで出張ったとはいえ、さすがに別組織まで手を伸ばす余裕がなく、彼らは無傷のまま悪巧みができた。

 いや、逆に教会組織の不祥事がいい隠れ蓑となっていたため、非常に動きやすくなっていた。



「では、今のうちに我々が動きますか?」

「いやいや。その様な事は必要ない。

 あの魔女には利用価値があり、今回のように異教徒どもに裁きを下すのにちょうど良い。

 神も我々に積極的に手を出さないあの魔女であれば、その存在を認めているはずだ。あれだけの力を個人で保有しているという事は、それを神がお認めになっているという事なのだよ。

 でなければあの魔女にはすでに神の裁きが下っているはずさ。なにしろ、あの魔女は五百年も生きているという話だからね」

「では、静観なさるので?」

「あの組織から裏が消えるのは我々にしても面白くは無いかな。

 しばらくして、ほとぼりが冷めればまたすぐに動き出すだろうが、そこで少し手を貸してやろう。教会に影響力を作っておくのも悪くない」


 その別組織は、魔女排斥を企んでいなかった。

 強大な魔女だけに都合良く利用すればいいと考え、理屈を付けてその論理を正当化する。


 魔女は森に手出しをしなければ何もしてこない。

 ならば放置が組織として一番有益であると分かっていた。


 ただ、他の組織を唆し、自分たちがかすめ取るように利益を得れば良いと画策して。

 ……画策してしまい。


「何か面白い事を言っているねぇ?」

「あ、あ、あ……」

「ひぃっ!?」

「せっかく掃除(・・)が上手くいったって言うのに、コソコソされたら面白くないんだよ」


 彼らは魔女の勘気に触れる事になる。



 サウノリアの前大統領のように正面からかかってくるなら正面から潰す。

 この手の表だって動かない連中相手であれば、裏で潰す。

 自分が手を下さずとも問題ないと思えばその様にするし、自分が動かねばならないと思えば――





「今回の件のご報告に来ました」

「そうかい。ご苦労なこったね」


 アズ外交官から、魔女は教会の顛末を聞く事になる。

 その他の事は何も無い。


 魔女はただ、誇らしげに仕事を終えたアズの話に耳を傾けるのだった。


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