狂信者②
「それで。彼らをどうするのですか?」
「今のところは何も“できない”ね。アタシのルールは教えてやっただろう?」
狂信者たちによる魔女抹殺計画。
その一端を教えられたアズ外交官は、魔女にどうするのかを聞いてみた。
だが、魔女はまだ動かないと軽く返す。
「アイツらの手口は、アタシがやったのと同じ。
軽く唆しはしたけど、命令はせず背中を軽く押しただけ。まだ直接動いちゃいないからね。
安心しな。何もさせる気は無いからね」
魔女は、森の敵に対し制裁を加える。
それは命令する奴にも及ぶが、唆した者には及ばない。
それを良しとしてしまえばネットでいろいろ言っている連中も同類となり、裁かねばならない。
基準となる線は必要で、魔女はそこを超える事をしない。
なので、彼らが実際にミサイルや危険なウィルスなどを用意しようとすればその直前に動くが、今はまだ何もしない。
付け加えると、出来れば組織ごと消してやりたいとは思うが……どうするかは、まだ決めていない。
「正直なところを言いますと、こういう時、魔女様は心のままに振舞うと思っていました」
「あながち間違っちゃいないね。アタシはただ、できるだけまとめて潰したいって思っているだけさ。何度も相手をするのは手間だろう?」
アズ外交官はまだ動かないという魔女に苦笑で彼女への印象を述べたが、魔女はそれに普通に笑って返した。
言われてしまえばアズにも納得できる話で、魔女らしいと笑ってみせる。
こういったとき、先制で彼らを叩いた場合、何らかの証拠など訴える物が無ければ周囲は魔女をより危険視する。どこかの独裁者のごとく自分に逆らうものは皆殺しだと言っているのと変わらない。
そうなれば彼らが何をしようとしたから魔女の災いに晒されたのか理解しにくくなる。また、魔女を危険視する者が後に続きかねない。
だから動き出してから潰すのだ。被害はそれでも防げるのだから。
ただ一点。気になる事があるとすれば。
「ん? アンタの家族も監視してるよ、アタシは。
アタシに近いところにいるんだから、それぐらい我慢しな」
アズ外交官の家族の安全は保障されるのか。
どうやらその心配は無さそうである。
 




