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狂信者①

 神は実在するのだろうか?


「さぁねぇ。いるとは思うけど、人間の考える神様じゃないのは確かだね」


 魔女は500年以上の時を生きる、世界一の生き証人だ。

 その魔女ですら、神の存在を感じたことは無いと言う。


「ま、宗教なんざ、アタシにゃ関係ないからね。

 同じぐらいの時を生きた宗教家ってのが居たなら違う事を言うんじゃないかねぇ」


 魔女はそう言って笑うのだった。





 某国某所。

 とある宗教施設。


「あの魔女をどうにかする手段は、何かありませんか?」

「もう、ミサイルで森ごと焼き払うしかないのではないでしょうか」

「細菌兵器のようなもので、気が付かれずに……いえ、危険な感染症を持つ者に接触させるのが確実ではありませんか?

 接触させる者にも黙っておけば、魔女も気が付けないと思われます」

「それなら最初から魔女とよく接触する者――アズと言ったか。あのサウノリアの外交官は。彼の家族から順に感染させておけば良いのでは?

 こういった事で信者を徒に消耗するのは良くない」


 そこでは魔女抹殺に向けてとある宗教の司祭たちが相談をしていた。

 彼らは司祭の地位にもあるのだが、異端審問官でもある。

 現代では表に出る事を許されない、非合法な行為を行う連中であった。



「あの男、所詮はただの政治犯だったな。子供が苦手という情報を上手く扱いきれず、自爆して終わるとは」

「魔女の術の仔細は、結局分かりませんでしたね」

「外の連中は信仰が足りないのだ。だから神の御加護が及ばず、あのような失態を演じる」


 異端審問官たちの仲でも、一番豪奢な衣をまとった男が苦々しく愚痴をこぼす。

 彼は宗教的正義の名の下、少し前にとある国の政治犯を助け、魔女のところに彼を送り込んだ。

 魔女の魔法で一発逆転を狙うように唆して、魔女の魔法を詳しく調べようとしたのだ。



 もちろん、彼らは一般に魔法が流布することを許しはしない。

 手に入れた魔法は彼らだけが厳重に管理し、神の威光を知らしめるため、有効に活用する手はずであった。


 上手くいけば儲けもの、その程度の認識で送り込んだのだが、それでも失敗すれば面白くないのも確かなわけで。

 彼らは最後には軽犯罪者と化した政治犯に対し、侮蔑の感情を隠すことは無かった。




「とにかく、だ。

 あの忌々しい魔女の目に付かぬよう、事はすべて秘密裏に運ぶように。

 すべては神の御心のままに」

「「「はっ! すべては神の御心のままに!」」」


 森の魔女は、家でその様子を監視しながら、「こいつらどうしてくれようか」と思案するのだった。


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