サウノリア王国①
サウノリア王国はまず、魔女をサウノリアの国民とすると言い出した。
「はぁ? アンタらの国に従う気は無いね。アタシにいったいどんな利があるってんだい?」
「まず、税を納めろと言っているわけではなく、その名声をお借りしたいというのが我らの願いです。
名をお借りする御代としましては、これだけの金銭を――」
「金なんざ要らないよ。アタシはアンタらの国で買い物なんてしてないだろうが。ちょっとは頭を使いなよ」
金で国民にして、その後、土地を奪うつもりで外交官は話を進めようとするが、その計画は最初から成立しない。
「ですが、最近の電化製品など、様々な品がありまして――」
「要らないって言ってんだよ、そんなもの。だいたい、電気も通ってないこの家でどうやって使えって言うんだい」
「ここまで電線を引きます。電気を使えるようにするのは国の義務、電化製品を使う事はすべての国民に与えられた権利ですから」
不機嫌そうな魔女に対し、外交官は負けてなる物かとぐいぐい口説き落としにかかる。
綺麗事を並べ立て、少しでも気を惹こうとするが。
「はぁ。仮にも外交官ってあろうものが、こんな言葉遊びもできないだなんてね。100年前よりずいぶん質が落ちたもんだ。」
魔女は、怒りよりも呆れを含んだ顔をして、外交官を見限った。
「要らない、と言ってるんだよ。アタシは。
直接も遠回しにも言って見せて、それを察しきれないような情けない青二才がいっちょまえの口を利くんじゃない。
もういい。帰りな」
手を払う仕草をして、帰れと言う魔女。
魔女はもう、この外交官を話し相手として見ていない。
だが外交官も仕事でここに来ている。
帰れと言われ「はいそうですか」と帰るようでは子供のお使いではないか。
そんな無様な真似は出来ないと、なおも言い募ろうとするが。
「しつこい男は嫌われるよ。≪強制転移≫」
魔女の魔法で、森の外まで送り返された。
こうしてサウノリア王国の野望は、第一回の失敗を迎える事となったのである。