弟子希望④
「糞ッ! これが出入り禁止か!」
弟子入りをしようとした政治犯の男は、例外にはなれず森を追い出された。
魔女を説得しようとしていたのに、気が付いたら森の外。
そして森に入ろうとしても森に近付けない。森に向かって歩いて行っても、一向に前に進まないのだ。目の前に見える木々との距離が縮まらない。
そして状況を把握し、悪態を吐いてから気が付いた。
「ジュン? ヨーナ? ハン? どこだ、ここに居ないのか! パパはここだぞ!!
追い出されたのは私だけだと!? 子供たちは!?」
ここに居るのは自分一人。
大切な我が子が一人もいないではないか。
男はそれに気が付くと、踵を返して近くの警察に駆け込んだ。
「魔女に我が子らが浚われたんだ! 助けてくれ!!」
「状況を説明していただけませんか?」
「いつもと同じさ。馬鹿が馬鹿をやって追い出されただけさね」
アズ外交官が、警官を連れて事情を聞きに来た。
魔女はサウノリアの国民ではないので国際警察を連れてくるのが本来の筋であるのだが、それでは時間がかかりすぎるため、近所の警官を借り、急いでやって来たのだ。
もちろん逮捕権など無く、魔女をどうこうするつもりは無い。
ただ、自分以外にも話を聞く人間が必要であり、形式的に連れているだけだ。
「アタシは森で馬鹿をやった連中は何時だって追い返してるよ。
武器を持った連中は命を奪い、武器を持たなきゃ出入り禁止さ。なぁーんにも態度は変えてないね。
あの男は馬鹿をやったから追い出して出入り禁止。ガキどもは何もしてないからそのまんま。それだけの話さ」
「では、浚われたというのは、あの男が勝手に言っているだけですね。肝心の子供たちは? ここには居ないようですが」
「アタシのいう事を聞きゃしないから、遅れて追い出されているよ。
触るな、って言ったのに、勝手に物を触ろうとしていたからね。泥棒には相応の仕置きをしておいたよ」
魔女は当たり前のように説明をする。
そうしてアズ外交官が見せられたのは、魔法でカエルにされた三人の子供の姿であった。




