弟子希望②
「それだけの力があれば、どれだけの人が救えると言うのか! 貴女は何も分かっていない!!」
「むしろアンタが何もわかってないよ。さっさと帰りな」
自分のため、不死のため。
そんな連中以外で面倒くさいのは、人類全体の利益のために協力しろと言う連中である。
要は、自分たちも魔法を使いたいから教えろと言っているのだ。魔女の都合を無視して。
自分の欲求に素直な分、不死を求める連中の方がずいぶんマシであった。
「アタシは森の魔女だよ。森の外の事なんざ知らないね」
「力を持った者には、それ相応の義務がある!」
「その義務っていうのは、守った連中からの恩恵を受けることが前提さ。アンタはなぁんにも世の中を見ていないね。
力が欲しければ努力しな。誰かの協力が得たいなら、協力者を募ればいい。
全く無関係なアタシを巻き込むんじゃないよ」
この「人権派」を名乗る男は、森の魔女に魔法に関する情報を広めろと言う。
それこそが人類への貢献であり、最終的に魔女にとって利益になると断言する。
「外に協力者を作る事は森を守ることに繋がる!」
「この森だけなら、アタシ一人で十分なのさ。実際、今までそうしてきただろう?
と言うかね。アンタらみたいな子供に魔法を教えた方がよっぽど怖いよ」
魔女はもちろん首を横に振る。
何を言われようと揺るがない。
そして、人権派の男は矮小な俗物でしかなく、魔女の心に響く何かを言えやしない。
彼は一般大衆に対し、聞こえのいい言葉を言う事しかできないのだ。
身命を賭して何かに挑むような信念の持ち主であれば魔女も違った事を言うだろうが、誠意も敬意も無く、ただ自己主張したいだけの人間に丁寧な対応をするほど魔女も暇ではない。
男もまた、他の弟子入り志願者のように出入り禁止にされるのであった。
そのように塩対応の魔女であるが、数少ない例外として、キツい事を言えない相手もいる。
まだまだ純粋で心優しい、無垢な幼子である。
さすがの魔女も、子供には優しかった。




