弟子希望①
悪徳記者が逮捕され、大手新聞社が謝罪に追い込まれた。
「馬鹿が馬鹿をやったってだけで親のように会社まで悪く言われる。育てた親ならともかく、アタシには分からん話だね。
ま、その親だって、大人になった子供の責任なんざ取る必要があるとも思えないがね」
“被害者”であったはずの魔女はそのように騒ぐ世間に皮肉を言い、新聞社に責任を求める世論の圧力に疑問を投げかけた。
大衆は魔女の言葉に対し、特に反応をせず自身の正義を掲げ、そのまま新聞社の社会的責任を問い続ける。
魔女は世の中がどう動こうが関係ないので、その一言以上の干渉はしなかった。
そうやって魔女は世の中に何かを求めて動くことはしない。一言だって求められて言った言葉ではなく、ただアズ外交官から話を聞いて漏らした感想でしかない。
ただ、他の誰かが勝手に何かを魔女に何かを求めるのである。
「弟子にしてください!」
その日の客は、開口一番そのように言った。
「弟子なんざ要らないよ。とっとと帰りな」
弟子入りを言い出したのはまだ若い娘だ。
サウノリアやシーナと言った近所ではなく他国の出身で、わざわざ海を越えてやってきた。
熱意と行動力だけはある、困った種類の人間である。
魔女のところには、定期的にというか、年間数十人の弟子入り希望者がやってくる。
魔女の魔法に魅せられた者、500年を超えて生きる魔女の不老不死の秘密を知りたい者、もっと単純に魔女に成り代わりたい者。その理由は様々だ。
魔女とは、それだけ多くの魅力を持っているのである。
ただ、森の魔女は弟子を取る気が無い。
これまで魔女が頷いたことは一度として無く、全員が追い返されて終わった。
「では、お傍でお世話を!」
「アタシは、要らないと言っているんだよ」
誰がどんな条件を付け食い下がったところで意味は無い。
この日の客も、最後は追い出されて終わるのだった。




