マスゴミ④
一度評価が覆れば、そこから先は坂を転がり落ちるように下がっていく、とはならなかった。
なぜなら、魔女は一切反論しないし、姿を見せないからだ。
そうなると後は外野が勝手に騒いでいるだけであり、燃料になる話題が先に尽きてしまうからだ。
それに魔女の擁護をして評判を上げようとする動きがあった。
魔女関連グッズを作っていた企業などは秘密裏に人を使い、マスコミに対抗して魔女の悪評を塗り替えていく。
魔女の居ないところで、騒ぎは続いていた。
「くそっ! スポンサーの意向には逆らえないとか抜かしやがって! あの腰抜けどもが!!」
そうやって魔女の悪評を立てていたマスコミであるが、一部の連中は「上の意向ですので」と言われ、活動を自粛せざるを得なかった。
序盤の「魔女の森に入れなくなった」程度の報道や、サウノリアの現状を伝えるドキュメンタリー程度であればスポンサーも口うるさくは言わなかっただろう。
しかし、直接魔女を悪く書いた記事が出回ると口を挟むようになる。
燃料になる話題が尽きかけていたことも災いし、そういった連中は別のアプローチをすることになった。
魔女の悪評を立てるにはどうすればいいか。
マスコミは生け贄を使って魔女の危険性を報じる事にした。
森に侵入した一般人が魔女の警告に従わず大怪我をした。そんな話があれば魔女の立場が悪くなるに違いないと考えたのだ。
要は、ヤラセである。
センセーショナルであればそれでいいと、いざとなれば自分たちが生け贄の者を襲って怪我をさせればいいとまで考え、間抜けな計画を実行に移した。
「おい、本当に大丈夫なんだろうな?」
「ああ。過去にやらかした連中も、いきなり命を奪うことだけはなかったって言っていた。裏付けもちゃんとある」
「なぁに。前金はちゃんと渡しただろう? 大丈夫さ。信用しろって」
一部のマスコミ、大手新聞社の記者をやっている男は、サウノリアで無職の男を使い、計画を実行した。
魔女は森の木々を勝手に伐る者を嫌う。
男に斧を持たせ、魔女への挑発とするのだ。
チェーンソーなどではなく斧を渡したのは、もしも魔女に何かされたときに男が怪我をして道具を落としたとき、チェーンソーであれば大怪我・大事故に繋がりかねないからである。
タイミングにもよるが、斧の方がおそらくマシであろうと考えたのである。
男は簡単に斧の使い方を学び、人目を避けるように深夜の森へと向かった。




