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国の始まり

さて、この国の話を少ししよう。



この大陸は世界的に言って西の大陸と呼ばれている。

その西の大陸の東に位置するのが、マコフォルス達の住むセファクムール王国だ。

雄大な大地は、大陸的に見るとほんの一部でしかない。

北は果てのないような砂漠が広がり、その先は海に面している。

国の西と南は天を衝くような山脈が連なり、南の山脈は、二月ふたつき程進むと海に出ると言う。

西の山脈は、半年ほどかけて進んでいくと、そこには繁栄を誇る大国が有ると言われている。


つまり、セファクムール王国は孤立した国と言っていい。


元々この国の民は、船で数十日離れた小さな島国からの移民であった。

諸事情により国を離れ、永住できる地を求め、大船団で国を離れた。

過酷な船旅を経て、数艘の船でこの地へたどり着いた人々は、この地に自分たちの国を起こした。

それが今から250年ほど前のことで有る。


小さな国から少しずつ領地を拡大していったのだが、そこで黙っていなかったのが、先住民の獣人達であった。


土地をめぐり、種族は争う。

二種族の争いは数十年続く。

元々数の少なかった獣人達も、そもそも入植してきた絶対数が少ない人族も、お互い数を減らし、疲弊しきっていた。


その争いに終止符を打ったのが、険しい山脈を越え、西の大国からやってきた冒険者パーティだ。


【同じ大地に住む人が、争いあって何が生まれる。

見た目や生活習慣が違う、考え方が違うからと、相手を排除するのは正しいことなのか?

言葉も通じる者同士、会話をし、譲り合い、妥協点を見いだし、手を取り生きていくことができないと言うのなら、お互い滅びるしかないのではないか?】


疲弊していた二つの種族は考えた。


そもそもなぜ戦っているのか?


『暮らしていた所に見知らぬ者が来た、追い出せ』


『住もうと思っていたら、先住民がいた、追い出せ』


始まりはそんなものであった。

お互い話もせず、お互いを排除することから始めてしまったのが間違いだ。


冒険者だいさんしゃの言葉に、当時の主導者は考えを改めることとなった。


それが約200年前。

初めのうちはしこりもあったが、年月とともに【同じ地に住む者達】として、自然に接するようになってきた。


今では、人族も獣人も、ハーフの人達も、セファクムール王国民として平和に暮らしている。


そんな出来事から【冒険者】は憧れの職業であった。


しかし、孤立したこの国には、冒険者ギルドを作る程の規模は無い。

まず第一に、依頼が無い。


西や南の山脈に入らなければ、凶悪な動物もいないし、魔物が居ると言われていても、実際にこの国で見た者はいない。

薬草採取は主婦の仕事だし、冒険者の依頼にありがちな護衛をしようにも、孤立した国の国内のどこに護衛がいると言うのか。


実際この国での冒険者の仕事は、失せ物探し、手紙や物資の配達、子守り、畑の手伝いなど、何でも屋みたいなものばかりだ。

稀に今回のような、山奥に住む動物を狩る仕事があるくらいなので、今では冒険者を名乗る者もほとんどいない。


それでも、アスファリムにとっては、子供の頃から聞かされていた、昔話の英雄とも言える【冒険者】は憧れの職業であることに変わりはなかった。

大人になったら冒険者になって、西の山脈を越え、大国へ行きたい、それが彼女の夢だ。


子供の頃に、冒険者になって西の大国へ行くと言うと、周りの大人は夢だ、妄想だと笑ったけれど、二つ年下の弟だけは、

「姉ちゃん凄い!僕も連れてって」

と、目をキラキラさせていた。


そのキラキラした瞳に力をもらい、彼女は弓の腕を磨き、魔法の鍛錬にも力を注ぎ、体を鍛え、知識を仕入れ、夢を実現させるための努力を惜しまなかった。


そんな彼女の本気を感じた周りの大人は、いくつかの条件を考え、あたかもそれが冒険者としての常識だと、彼女に告げた。


それが、

・冒険に出るのは成人以上

・単独で行動してはならない

・女性だけのパーティは認められない

・得意武器が一つ以上、生活魔法以外の魔法が使えること

・星が読めること


最低この五つの条件を満たさなければ、冒険者と名乗れても、旅に出る事はできない。


それでも彼女は諦めなかった。


そして巻き込まれたのが弟であるマコフォルスである。


そして、今また新たな出会いが、彼女の夢への一歩となるのである。

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