お池にはまってさあ大変
オイラの名前は 大田 小太郎。
生まれは化け狸のメッカの四国のある都市です。
知らない人は知らないけれど、知ってる人は知っている、化け狸は普通に人間社会で暮らしているんだよ。
オイラも生まれは山の中だけど、化け狸年齢一歳で、無事に人に化けれるようになってからは、ずっと街で暮らしているんだ。
化け狸年齢って言うのは、生まれて7年で一歳、14年で二歳、21年で……と数える。
生まれ18年のオイラは大体二歳半。
10年以上街で暮らしていて、勿論学校も通っている。
え?住民票とかはどうしてるんだって?
そんなもの、蛇の道は蛇とだけ言っておくよ。
人間知らない方がいいことも多いのだよ、君。
そんなオイラなんだけど、大学一年の夏休み、誕生日を爺ちゃんの家で過ごす為、お山へ帰省していた。
久々のお山にちょっと浮かれちゃったのは自覚している。
9月になると山の中は案外涼しいよな、なんて思いながら散策していたオイラは、気の早いどんぐりを見つけてしまい、テンションは爆アゲだ。
元々タヌキは雑食だし、化け狸は人間界で美味しいもの沢山食べてるけど、どんぐりは別だ。
猫にマタタビ、狐に油揚げ、タヌキにどんぐりだ。
落ちていた木の枝で、どんぐりを払い落とす。
パラパラと落ちてくるどんぐりに、思わずニヤニヤが止まらない。
しかしうっかりしたことに、ここは山中、坂道になっていて、落ちてきた丸々としたどんぐりは、コロコロと転がっていく。
「あ!待て!どんぐりーー!」
コロコロ転がるどんぐりを追いかけて、周りを見ていなかったオイラは、木の根に足を引っ掛け転んでしまい、どんぐりと一緒にコロコロ転がって、池にはまってしまった……。
そして気づけば見知らぬ森の中。
実家の山には無かった大岩や、見たことのない大木、草花。
何より空気の感じが違う。
転がったショックでタヌキ姿に戻っているし、脚は捻ったようで痛いし、何よりどんぐりはどこに行ったの?
どんぐりコロコロでお池にはまったら、ドジョウが出てきて一緒に遊ぶんじゃないのーー⁉︎
心細さとパニックで、ついつい鳴き声が漏れてしまう。
父さん母さん、じいちゃんばあちゃん、ひいじいちゃん、ひいひいじいちゃん…どんぐり………。
そうして暫く鳴いてると、いきなり金髪の外国人が出てきて、オイラを抱きしめた。
……?
金髪の姉ちゃんなのに、日本語ペラペラだ。
オイラのことを可愛いって言ってるのはよしとしよう。
しかし、小さい小さい言い過ぎなんじゃないの?
少し濃ゆい金髪の男も出てきた。
まあ良い、さあオイラを思いっきり愛でるがよい!
と、緊張を解こうとしたら……今この姉ちゃん何て言った?
食べる?
え?この令和の時代に狸鍋ですか?
ジビエ愛好家ですか?
何言ってるんですか?
猟奇的な彼女ですか⁉︎
オイラは慌てて変幻して叫んた。
「タヌキは食べても美味しくないよ!」
私事でありますが、これを書いてしばらく後、出勤しようと思ったらエンジントラブルで車が動かず、マップ見ながら、使ったことのない沿線の駅に向かって歩いてて…………
田んぼにはまりました……。
田んぼって思ったより低い位置にあって、登って道路に戻るのに一苦労。
コタの呪いかと思いましたよ。
田んぼにはまっても異世界へは行かれませんでした。