3話
「待ってました!」
青い髪の彼女は、あって無いような胸を張って言い張った。透き通るような声だった。
「待たれてました」
僕は控えめに言った。あるようなないような存在感はポケットの中にしまってる。他にも度胸とか魅力とか、色々しまってある。
「この辺にいれば君に会えるって信じてたよ!君が私を助けてくれたんだよね?」
「助けたっていうか······」
わからないで僕を待ってたのかな。さっきまで商店街のど真ん中に立っていたのを脇に移動する。このままど真ん中で会話をするのは何故か気が引けた。
「君の言う助けたって言葉の意味が、倒れてる君を見つけて救急車を呼んでそのまま帰ったっていう僕の行為を意味するのなら、確かに僕は君を助けたよ」
「なんかまどろっこしーい」
彼女は未だに商店街のど真ん中で仁王立ちしたままだ。時代が時代なら「処す?処す?」とか偉い人同士で相談されそうだ。
「君は私を助けたんだよ。行き倒れてた私を助けてくれたんだよ。もっと誇りに思っていいんだよ?」
「あ、そう···」
見てみれば、さっきまでは彼女の青い髪にばかり目がいって気がつかなかったけど、彼女はブカブカのパーカーにジーンズを履いているだけだった。僕も似たような格好だけれど、彼女のはなんというか、あまり清潔なようには見えなかった。
「君、家出中とか?」
「おぉ、まさしくそんな感じだね」
「家に帰りなよ」
「そんなことより友達にならない?」
「え?」
良心っぽいものの呵責から、もしくは帰宅部の使命感からか家に帰ることを推奨してみたら、何故か倍以上の善意が僕を襲ってきた。ナニコノココワイ。
「···友達にはならないよ」
「えーひっどぅーい」
「まずは知り合いからってことで」
「それ告白されたときの断り方じゃなかったっけ!?」
こうして。
僕と彼女は出会ってしまった。