2話
翌朝。
今日は土曜日なので、学校に行く必要はない。
起きて着替えて顔を洗ってご飯を食べる。ここまでいつもと一緒。
問題はそれからだ。
僕には趣味らしい趣味もなく、部活動は帰宅部だ。やることがない。
ここは帰宅部の活動内容の一つとしてずっと家に居ようかとも思ったけど、母に邪魔だから出ていけと言われてしまったので、僕は渋々家を出ていく。
何を思った訳でもなく、取り敢えず近所をぶらついてみる。なんか不審者になったみたいだ。もしくは認知症で徘徊しちゃうお爺ちゃん。
そうだ、本でも買いにいこうか。こう見えて僕は高校に進学してすぐにあった自己紹介タイムで趣味を読書だと言っちゃうくらい本が好きなのだ。何も思い浮かばなくて適当に言っただけだけど。
近所に幾つかある本屋の中でも一番近いのは商店街にあるので、その方向にまっすぐ歩く。一応駅にもある。徒歩30分だけど。
住宅街を我が物顔で通りすぎると、住宅に並んでこぢんまりとしたラーメン屋がある。味はとても良いけどその辺の家と見分けられないのであんまり繁盛はしていないらしい。店主の老人(と呼んで良いのかわからないくらいマッスルだけど)が趣味でやってるらしいので、そんな心配は無粋だろう。
ラーメン屋を通りすぎるとすぐに商店街がある。徒歩でだいたい15分。
「あれ······」
商店街の入り口のバカデカいアーチの様なものを通ろうとしたときに、なんとなく違和感を感じた。
今日はいつもより人が少ない。
天気も良いのに、こんな状態になるのを見るのは初めてだ。雨の日でも傘をさした客でいっぱいになるからやっぱり初めてみる。
いや。
人が少ないというより、全員いない。
店の人も客もみんないなかった。今日は町内会で避難訓練でもあっただろうか。扇子屋のカウンターに置いてある、いかにも生まれたてです!って感じの入れ歯が僕の仮説に信憑性を与えてくれる。
いや、やっぱり人はいた。
一人だけ。
商店街の、決して狭くない大通りのど真ん中に、彼女はいた。
その青い髪の彼女は、僕よりも我が物顔で商店街を闊歩していた。