1話
その日は、変な一日だった。
変と言うか、なんだかいつもと違う一日だった。
通っている高校からの帰り道。
家から学校までの道程はそれほど長くない。だから僕は自転車通学ではなく、徒歩で学校まで通っている。
家から徒歩15分。ちなみに駅までは徒歩30分。小さい頃今の我が家に引っ越す際、不動産屋の人が自信満々にそう言っていたのが今でも記憶に残っている。
一体どこに自信を持てる要素があるんだ、駅まで徒歩30分······。
徒歩30分の話は置いておいて、今は帰り道。
住宅が立ち並ぶ道をまっすぐに進んでいく。この道を抜けると商店街があり、通り抜けるまでに美味しそうな臭いが漂ってくる。成長期の僕はこの誘惑を振り切るために、若干早足になる。
···成長期、なのかなぁ。成長期だといいなぁ。
一般的には成長期といえば中学生の時期を示すそうだけれど、残念ながら僕は遅咲きの桜なので、もうすぐ竹の様にビュンビュン身長も伸びるはずだ。七夕にそう書いた短冊を竹に吊るしたし、きっとそうだ。
高校一年生の春の現在、未だにその兆しすらないけど。
商店街を抜け、あとはまた何の変鉄もない道をひたすらに歩く。
何の変鉄もない道を。
いつもならそうだった。
けど今日は違うらしかった。
道の先に、青い髪の女の子が倒れていた。
「え···?」
僕は周りを見回す。辺りに人の気配はない。商店街の方は人が賑わっていたのに、どうしてだろうか。
「あー······」
僕がなんとかしなければいけないのだろうか。
といっても、一体なにをすればいいのか、残念なことに全くわからない。倒れている青い髪の女の子への対処法なんて、オカピの生態と同じくらい未知だ。
「あの、大丈夫ですか?」
そう呼び掛けながら、僕は青い髪の女の子に近づいていく。
「う···」
あ、女の子が何か呻いた。意識はあるみたいだ。よかった。
「い、意識あり!」
自分への確認も兼ねて言ってみる。たしか中学校の時、保険の授業でこうすればいいと習ったはずだ。
次に呼吸の確認もしてみる。たしか鼻の下に指をおいて、息をしてるかを確かめるんだったっけ。
「······」
あれ、間近で見て判明したけど、この子の顔、案外可愛いな···。呼吸の確認ってどうするんだっけ?人工呼吸すればいいんだっけ?嘘だけど。
らちが明かないので救急車を呼ぶことにした。
ポケットからスマホを取りだし、119に電話する。場所と変人···怪我人?やっぱり変人で正解かな。がいることを伝える。どんな場所でも現在地がわかる、標識先輩のお陰さま。
程なくして救急車がやってきて、状況を説明し、救急隊員に赤の他人だと判断されたようで、僕は帰された。
「···なんか、変だったなぁ······」
残りの帰り道を歩きながら、僕は呟いた。
帰りが遅くなったので、その日は途中でラーメンを食べて帰った。