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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
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終わりと始まり1

 トヨと別れたトウジは真っすぐキノウラシェルターの心臓部、シェルター内政治統括を任される領主がいる巨大な建物へと向かいその一角を歩いていた。


 トウジの向かう場所へと続くその廊下は途中から照明が消え闇へと続いている。


「来ましたね、外は大騒ぎですよ。まぁ、シェルターが危機にさらされることなんてめったにないから当然かもしれませんけど。さぁ、こちらへ」


 廊下の奥、暗がりから女性の声が聞こえトウジは子への聞こえた方へ歩き目的の部屋の中に入る。


 その部屋も廊下同様に暗く、モニターのブルーライトや薄暗くした間接照明が部屋をぼんやりと照らす。


「お疲れ様です。蒼薔薇隊のハシラ・トウジ」


 声の主は顔は暗くて見えないが艶やかな髪質の様で薄暗くされた電灯の光をその髪はキラキラと反射させている。


「まぁ、仕事だからな」


 薄暗い室内にトウジを含めて5人の人影、互いにシルエットのみで確認が取れる状況で足元すらよく見えない部屋の奥に陣取っている。


「一応決まりなので聞いておきますけど、あなたがここにきていることは誰にも言ってはいませんね? 私は本来ここにはいないのですから」


 声の調子から面倒くさそうにしている女性、彼女の手元がブルーライトで浮かび上がりそこで握られているペンがくるくると回る。


 その光の元凶である小さなモニターにはトウジが歩いてきた廊下の監視カメラの映像が映されていて彼の後に誰もついてきていないことはここにいる全員知っていた。


「ああ、たぶん問題ないはずだ」


 先に部屋にいた声の主を含めた四人は椅子に座っているがトウジは立ったまま話を続ける。


「でも、皆がお祭り騒ぎで盛り上がっているのにあなただけいないというのは怪しまれませんか? そこから私の存在がばれれば、結構まずいことになりますよ?」


 彼女たちは王都の精鋭の一つ冬桜隊、4名すべてが整備士の本来なら王都から出ることのない名ばかりの精鋭。


「帰る途中に迷子になったと言えば大体何とかなっている」


 彼女たちは兵器開発を主な仕事としていて、トヨのエクエリと10輪の装甲トラックも彼女たちの技術の一部が使われている。


「……そうですか、今までもそれでごまかして?」

「一応な、詫びの品を買う余計な出費がかかるが」


 王都の精鋭には二種類あり、色の名前のついた薔薇隊が主力とされ主に生体兵器と戦かう。


 そして、名前に桜の名前を持つ隊は整備士のくくりに入った研究者、技術者の集まりで作られている。


「それくらいのお金なら行って下さればこちらで用意しますよ? 別に痛くもかゆくもない金額ですし、すべて用意してもらえる私にはまずあまり使う機会がないですもの」

「別にいい、おれも精鋭の給金で十分すぎるほどの額をもらっている」


 彼女たちが精鋭のくくりに入るのは王都から出てからの活動に精鋭同様の待遇を受けさせるためであり、桜の名前を持つ隊は本来の精鋭の生体兵器と戦う力というものが一般兵以下のほぼ皆無と言ってもいい状態、精鋭でありながら戦力にならない名ばかりの精鋭。


「そうですか、では本題に入りましょう。今回の特定危険種と各門の防衛隊について。先に防衛隊の話の方がいいですね、防衛隊の中で精鋭に推薦すべき勇敢なあるいは知識ある人材はいましたか?」

「ここに駐留している間は特にそういった人材は見つけられなかった。あ、いや、破壊された前線基地の指揮官が意外と無茶をしていたな、一個人の戦闘力とは無縁だが特定危険種相手に迎え討ちに行くようなことをしていた」


 トウジの仕事は前線基地やシェルターの一般兵の中に精鋭としてやっていけそうな人材を探し出し王都に報告すること。


 どこかで新しく精鋭の隊ができるときに彼らを推薦するためのリストを作るのだが、シェルターに報告義務があるのだがほとんどのシェルターは防衛任務の主戦力となる彼らを手放そうとせず滅多に報告はない。


「そう。いないの一言で話が終わってしまうのは私としては残念だけど話が早く進んでいいわね、その指揮官についてはこちらで後で調べることにしましょう。では次に今回の特定危険種について」

「部分的な話しか聞けずよくはわかっていないが、ただの生体兵器の集まりにすぎなかったらしいとのことだ。俺が言った時にはもう戦闘はほとんど終わっていた」


 そのためトウジのように精鋭が自ら一般兵を見て回り生体兵器との闘い方を見て、精鋭としての素質ある人材を直に探し出し王都の報告する。


 しかし、この仕事は前線基地やシェルターだけでなくほかの同僚や他の精鋭に知られてはならない。


「あ、そう。基地を破壊したという話だったから少しばかり興味があったのですが、そんなものですか。拠点壊しも全く情報がなくこの辺りにいないようですし、ここで長居をする必要もなしですね」

「まぁ、こちらからの話しは以上だ」


 前線基地やシェルター側も精鋭が素質ある人材を直に探していることを知っており、探しているとバレてしまえば彼らを配置換えや資材回収班としてシェルターから一時的に遠ざけられてしまう。


 彼らは精鋭の素質があり精鋭に近い実力を持った兵士なのだからそれがいなくなってしまえば戦力が落ちるので無理もないが。


 同僚やほかの精鋭にばれてしまえば、気まぐれやお節介などで協力しようというものもいてそこからばれてしまう場合もあるため知られてはいけない。


「わかりましたお疲れ様です。ではもう戻っていいですよ、怪しまれないうちに」


 そういうと彼女は続ける。


「この後、この騒ぎで精鋭が一か所に固まっているうちに人目を盗んで、私たちはもっと北の方のシェルターへ移動します、雪の降る前にね。とても大事な用があるので」


 言い終わるとトウジは部屋を出ていき、間接照明などの明かりが消え部屋には静寂が戻る。



 シェルターの大扉の前では朝顔隊を中心とした精鋭たちが騒いでいた。

 もちろんこの間にも一般兵は防壁の外を警備しているが、当直を終えたもの非番のものは騒ぎに参加している

 騒がしい祭りの中にたまに怒号が飛び交うがほとんどのものは気にしない、ほとんどは酔っ払い同士の喧嘩だ。


「トヨちゃんは逃げ出さないかな?」


 ライカはお祭り状態の戦勝パーティーの中央部から離れたところに止めてある装甲トラックのそばでここにいない二人のことを考えていた。


「大丈夫でしょ、トウジが連れて行ったし……まぁ、迷子になって約束に時間に到着しなかったらトッキーが怒りそうだけどさ」


 二人の間を土筆隊の隊長からサングラスを盗んだイグサとその後ろをノノが迷彩マントをはためかせ走り抜ける、まかないに出された多種多様な料理を皿によそって戻って来たトガネが走り去っていく二人を躱してライカのそばに座る。


「何であれ、トヨちゃんが抜けるならこの隊はおしまいじゃない? 火力が減るし、特定危険種を今の戦力で狩るにはヤバい無茶しないといけないし。そもそも先輩も私も接近して戦う戦い方だし、隊長とトウジは中衛で指示や援護でサポートがメインで生体兵器に距離詰められると危ないし」

「そうかもね、んじゃ俺っちたちで新しい隊でも作っちゃう?」


 走っていった先でイグサがコリュウにつかまり土筆隊の元へとサングラスを返しに行かされると、その後ろをノノが付いていく。


「無理でしょ、隊長に誰がなるの? 私先輩の指示には従いたくないし」

「ライカちゃんは指揮できそうにないもんね、無理か」


 騒ぐ精鋭や一般兵をかき分け二人の前にアミツがやって来てノノがどっちに行ったかを聞いてきたので、ライカがイグサとともに走っていった方を指さし答えると礼を言い彼女はその方向へ走り去っていった。


「じゃあ、別々の隊に引き取られるのかな?」

「まぁ、そうだろうね。数人固まっての隊の人事移動はなじもうとせずそこだけで固まっちゃうだろうから完全にバラバラになっちゃうと思うよ、トウジともトッキーとも」


 ライカはトガネの持って来た食べ物に手を付ける。


「せっかく薔薇の名前の精鋭になれたんだけどなぁ、せっかく馴染んだのに一から人間関係築くの怠いなぁ」

「うまくいけば他の薔薇の隊に引き取ってくれるんじゃないかな。というかライカちゃん他の人とちゃんと喋れる?」


 トガネも自分の持って来たごちゃまぜになった食べ物に手を付ける。


 すでに夜明けも近いことあって次第に人の数が減り始めていた。


「とりま大丈夫でしょ。朝顔隊とも蒲公英隊の人とともちゃんと会話で来てたし。人と話せなかったのって昔の話じゃん」

「新しい隊になったらライカちゃんがちゃんと周りに溶け込めるか俺っちは心配だよ」


 ノノがアミツに捕まったのを見ながら欠伸をするライカ。


「うぜー。……それはそうと先輩、私眠くなってきたんでそろそろ寝ますね。連絡あったらなんか適当にお願いします」


 そういうとライカは立ち上がり装甲トラックの扉を開け中へと入る。


「お休みライカちゃん。トッキー達には俺っちから連絡しとくよ」


 トガネに手を振って返事を返すとライカはドアを閉めた。

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