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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
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来るものを迎え撃つ、7

 エントランスでベヤーを倒しほっと一息つく4人。

 無線で他の隊の状況を聞こうとトヨがヘットセットに手を伸ばすと壁を壊して現れた黒い色をしたベヤー。


「ん?」

「あ?」

「とっと!」

「なんです?」


 完全に気を抜いていた4人は様々な反応をしながらエクエリを構える。


「も一匹来たよ!」

「んあ? 黒い」


 ビル群を去る際最後にトヨが放った広域燃焼弾を直接受け黒く焼かれた背中、太い二本の腕には熱で溶け張り付いたプラスチックなどがついている。


 プラスチックは小さい子供用の遊具だったのか、赤やら黄色やら緑やらのカラフルな色合いで多少の原形をとどめ張り付いている。


「こんなのどこにいた! さっきまでいなかったよね!?」

「黒いから見つけられなかった? 一旦体勢を立て直しましょう、さっき言ったようにここはあまり広くない。狭いところは危険です」


 そういうとイグサを連れてトヨはホールの中へと続く通路を走る。


「どうせ死にかけ、すぐに倒せるさ。行くぞコリュウ」

「ユキミネさんの指示を聞いた方がよくないですか、隊長」


 コリュウとツバメは生体兵器の気を引くために走り出した。


 しかし、エントランスの階段の下は狭く四分の一をベヤーの死体と黒いベヤーが占拠する、分が悪いと判断しすぐに進行方向を変えホールの中へと入っていく。


 それを見届け援護するか迷ったトヨとイグサもホールの中へ入る。


 ホールはエントランスの何倍も広く客席の間に要された通路も広かった


 天井に空いたわずかな穴から入る光を頼りに奥へと進む。


 緩やかな階段を下り一階、このホールでは二階客席に当たる場所で演壇が見える場所に立つと、大型のエクエリを向けられるギリギリの角度で下を狙い左手でヘットセットを使う。


「暗いですね、ユキミネさん」

「今、照明弾打ち上げますね」


 そういって茶色と白の大型のエクエリを構えるトヨをイグサがうらやましそうに見る。


「何でもできるんですね、その大型」

「ええ、試作型ではありますが十分強力な武器です。まぁ、照明弾はオプションですけどね」


 鞄からエクエリの追加パーツを取り出しつけると大型のエクエリをホールの天井に向ける。

 引き金を引くタイミングでヘットセットから下にいる二人の声が聞こえてきた。


『え、ちょっと、ここ真っ暗だよ?』

「今照明弾打ち上げます、それで生体兵器はどうしました?」

『俺達を追ってきます』


 照明弾を撃ちあげるとトヨとイグサはホール全体を見回し潜んでいる生体兵器がいないか探す。

 下では二重の防音扉を破壊し黒い生体兵器がホールに入って来ていた。

 予想以上に上へと上がった照明弾は天井に張り付いてホール内を明るく照らしている。


 そこを入り口の左右に隠れていたツバメとコリュウが攻撃を仕掛けているようで指示を飛ばす声と何かが壊れる音が聞こえていた。


「早く演壇の方へ来てください、ここからだと私たち撃てません」

『わかった今行く』


 ツバメたちは生体兵器を引き付けるように坂になっている扇状の客席を下っていく。


 それを追いかける生体兵器。

 その速度は鬼ごっこにもならずあっという間にその距離は縮まる。


 その頭にトヨとイグサが大型のエクエリの銃口を向け、そして放つ。

 攻撃は回避され背中に命中したが、焦げた鱗をそぎ大きな傷を与えながらも生体兵器は怯まない。


 背中の鱗は多く密度も高く、これを撃ち抜くのは今ある火力では容易ではないと諦め、ならば攻撃手段を奪おうと焼け鱗の薄くなったその腕に向けて攻撃をした。


 だが腕を狙ったその攻撃は思った以上の威力が出ない、それがエクエリの故障でもないこともトヨにはすぐに分かった。


「プラスチック!?」

『腕にべったりついたやつが、ただでさえ効きにくいエクエリの威力を減らしてるの?』


 イグサが続いて打つ。

 しかし腕に着いたもので攻撃を防げると理解したベヤーはその腕で頭を守る。


「ダメか!」

『隊長、危ない!』


 ツバメの居た場所を熊の両腕が抉り剥がす。


 逃げることに専念しツバメは熊の下を潜り抜けその場から離れる。


『危なかった、思った以上に機敏だな。手負いの獣はなんとやら』

「まだ来ますよ、もっと離れて!」


 掠めた腕が客席を弾き壁の端まで吹き飛ばす。

 ツバメとコリュウを狙った攻撃と思わせ破壊された客席はトヨとイグサの方へと飛んできた。


「危ない!」

『おお、あっぶな』

『イグサ、トヨ、二人とも怪我は?』


 心配しながらも追撃をかわし飛び跳ね転がりながら、ツバメは客席を走り回る。


「ありません、アモリさんは」

「へーきです、こうなったら私の秘密兵器の出番だね」


 コリュウも生体兵器を挟んでツバメの反対側を走る。

 どちらかが生体兵器の死角を取ろうと生体兵器から逃げどちらかが追う。


「みんな、耳を塞いで!」


 そういうとホール客席二階にいるイグサは赤銅色の棒を咥え、肺の中の空気を一気に吐き出す。


 直後、耳を裂くような高音がホールに反響する。


「くっ」

「ああぅ」

「耳っ!」

「うぁっ!」


 トヨが大型のエクエリから手を放して耳を塞ぐ。

 ツバメとコリュウが体を硬直させ転んで、吹いたイグサはふらつきその場に崩れた。


 四人とも聴覚に一時的に異常をきたして誰が何を言っているかわからない状態だったが、おそらくイグサに何かを言っているのだろうと予想はできた。


 聴覚が壊れた熊はその場で暴れていて客席が次々と地面ごと捲りあげられ二階客席へと飛ばす。

 隙をついてツバメ達はホールから逃げ出した。


「私たちもここから離れますよ、アモリちゃん」

「はい」


 聴覚が回復し始めたところで二人の脱出を確認したトヨは、大型のエクエリを担ぐとその場を離れようとする。


 イグサも返事を返し、大型のエクエリを持ち上げた。


 そしてホールから出るため非常口へと向かおうをしたとき、もともと朽ちていた建物は最前席の通路の手すりとともにトヨの足もとが崩れ下の階に落ちる。


「えっ?」

「ユキミネさん!」


 急なことではあったがトヨは足場の悪い下の階にバランスを取り着地する。

 落ち着きを取り戻しツバメたちを追いかけようとした黒い巨体の目の前に。


 頭に瓦礫が当たったようでベアーは目と鼻の先に落ちたトヨにすぐには気が付かなかった。


「と!」


 移動しようと構えを解きエクエリを背負ったことが災いし、トヨは着地後すぐに行動が出来なかった。


「ユキミネさん!」


 イグサも崩壊した場所に近寄らず、別の場所から顔をだして下を除く。


 咄嗟に腰の鞄からワインレットのエクエリを取り出したが、つかんだ右手に激痛が走り思わずそれを手放した。

 それは生体兵器に向けるための勢いが付きそのまま飛んでいったため、ベヤーの足元に転がっていった。


「っつ、しまった」


 直後、生体兵器が腕を払う。


 プラスチックのついた手の甲に弾かれ、癖毛長身の体はいとも簡単に宙を舞う。


 誰もが黒いベヤーに気を取られていたが天井に張り付いた照明弾が天井を焼き始めていた。

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