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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
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来るものを迎え撃つ、4

 廃墟では生体兵器の数を減らすべく、散発的に大型のエクエリが特定危険種に攻撃を仕掛けていた。


 瓦礫で射線の通りにくい市街地と戦車を返したことは大きく、それから特定危険種は一匹も撃破できなかった。


 川の向こうに居る特定危険種の姿が双眼鏡なしにはっきりと映るようになり、灰色の蜥蜴を騒ぎながら戦っていた精鋭達も、特定危険種の連れていた小型の生体兵器を警戒して真面目に周囲を警戒している。


「んで、トヨっちこれ接近戦で何とかなるものなの? 特定ききゃん種、噛んだぁ」

「ですから、逃げないと危ないんですって」

「もう遅いよ、すぐそばまで来てるんだから。んじゃ、土筆隊よろしく」


『おう、まかされた。あれだけ大きな破壊をした後で少し迫力に欠けるが、これもまた作戦の一部、だったら全力を持って……』


「いいから早くお願いします」


 そして橋が爆発と共に崩れ落ちた、その瓦礫は流されていきそこには何も無くなった。


「これでやつらはこの濁流を渡らないといけなくなったね。ていうかコードネーム決めない? また噛みそう」

「じゃあ、アモリちゃん。あの特定危険種の見て目で一言」

「ベヤー?」


 イグサがそういうとトヨはヘットセットに手を当てる。


「あの特定危険種達を以降ベヤーと呼びます」

「コードネームって、そんなんでいいの?」

「じっくり考えても意味ないです。こういうのは外観や印象でパッと決めるものですから」


 そういうと双眼鏡をのぞき廃墟に消えた生体兵器を探す。


「熊ってベアだぞ、イグサ」

「え……じゃあ今のなしで」


 雨は止んでいても茶色く濁った川の水かさは減らない、小型の生体兵器は土手の半分の高さまで増水した川を泳いで渡る力はないだろうが油断はできない。


「そんな、真剣に見なくてもベヤーはまだ先でしょ?」

「川を飛び越えるという手があるのを忘れてます」


「あの巨体で?」

「小型の方です。多少流されてでも意地でも泳いで渡ってくるかもしれません」


「その場合どうするの?」

「ここまで来たら、それはもう戦うしかありません」


「そうだね」


 コリュウと話していたイグサがトヨのそばにやってくると、目を輝かせて茶色と白の大型のエクエリを見ながら話しかける。


「もう一度、さっきの燃えるやつ見せてください」

「いいですよ。まだ、距離ありますし、バッテリーももうすぐ切れそうですから使い切ってしまいましょう」


 そう言って構えると射線の通るのを待ち、瓦礫の乗り越え頭を出したところに広域燃焼弾を放つ。


 放たれた光は真っ直ぐと特定危険種の頭に吸い込まれるように飛んで行ったが、特定危険種も一方的にやられることはなく、ついにその攻撃は防がれた。


「おや!」

「あ!」


 移動しながら足元の瓦礫を持ち上げその下に潜り込むようにして攻撃を防ごうとした、既に切れかけていたバッテリーだったため、もともと直接あたっても仕留めきれない威力だっただろうが、それでも攻撃している側の精鋭達には大きな衝撃を与えた。


「燃えてる」


 誰にでもわかる状況を呟くイグサ。


「使いかけだったのでそれほどの威力は無いですからね、どのみち当たってもそれほどのダメージにはならないでしょう」


 そのつぶやきに答えるとツバメがトヨの横に立つ。


「でも防がれるようになった、これでさらに倒しづらくなったね」

「ええ、まぁ同じ手で倒せるようならば、人類がこんなに追い詰められることなんてなかったんでしょうけど」


 燃えた瓦礫の下から無傷の特定危険種が顔を出す。


「まぁ、そもそも始めから倒せる一撃ではありませんでしたから」

「負け惜しみ?」


「違います」

「さて、んじゃ小型のエクエリ使いは、みんなで戦場をかき回す用意でもしますか」


「そうですね、戦いやすい場所へ行きましょう」


 そういうとトヨはヘットセットに手を当て精鋭達に最後の指示を出す。


「皆さん、ここでの戦闘は終了です。ここを降りたら各自各隊の隊長の指示に任せます。戦ってもよし、逃げてもよし、倒してもよし、やっつけてもよしです。できることなら皆さんが怪我をしないで全ての生体兵器と特定危険種の排除を望みます、では好き勝手に暴れてください」


 黙って聞いていた他の精鋭達は一斉に騒ぎ出す、王都直属の精鋭の中から選ばれた薔薇の名前を持つ蒼薔薇隊ということもあって、最低限の敬意を表して最低限大人しくしていた問題児たちはその言葉を聞いてスイッチを切り替えた。


「いいね、自分たちの好きなようにって」


 周囲の雰囲気に流されてツバメが楽しそうに言う。


「そうですか? もう提案された作戦ありませんから、撤退もしてくれないし、各自の好きなようにやってもらった方が、私としては責任を持たなくていいかなぁと。もう面倒くさくなって」

「え! トヨっち、ほんとに大丈夫!? 最悪、引っ張ってでも連れて帰るからね」


 心配するツバメをよそに少し楽しそうにトヨは大型のエクエリを持ち上げ、この場所から離れる用意をする。


「えっと、冗談です。各自判断に任せたのは、指示されるよりもやる気を出してもらえるでしょうからです」

「間違ってはないんだろうけど、なんかトヨっちらしくない」

「らしくない……やっぱり、多少自暴自棄なのでしょうか? 自分ではよくわかりません」


 他の精鋭達は騒ぎながらも車両に乗り込み、各々が戦いやすい場所を探す為廃墟へと消えていく。


「さぁ、気を取り直してシェルターには行かせないようにここで全て仕留めますよ」

「おうよ」


 今度こそ車両に乗り込み川から離れ移動を開始する。


 トヨは朝顔隊と行動を共にし、ヘットセットで二台の車両は通信で行先を決める。


『んで、どこで戦うよ?』

「バメちゃん。昨日、ここの近くで作戦会議したの覚えてます?」


『そりゃ覚えてるよ。馬鹿にしてんの!』

「いえいえ、その場所へ向かってもらっていいですか」


 そういうと、二台は市民ホールだった大きな建物に向かって行った。

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