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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
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来るものを迎え撃つ、3

 

 大扉の前まで移動してきたトキハル達は、大扉の外へ向かう用意をしていた。

 理由を説明して大扉を開けてもらおうとしたが、すでに一般兵たちは持ち場についていて大扉の前には誰もいなかったためトキハル達は大扉の開閉を行う部屋へと直接向かっている。


「ああ、もうメンドイ! 何で急に副隊長は一人でどっかいっちゃうかな! いっつもついてきてるだけのくせに」

「困った、俺っち怪我してるから外に出るとなると戦いに参加できないかも」


 イライラしているライカとうろたえるトガネ。

 トウジは前を歩いていたトキハルに話しかける。


「トキハルは分かってるか? どうしてトヨがいなくなったのか」

「ああ、あいつの過去のことだ」


 トキハルそれだけしか言わずライカがトウジに尋ねる。


「隊長それどういうことです?」


「隊長、トヨの個人的な話だが話してももいいか?」

「好きにしろ、精鋭のデーターベースを調べればそれぐらいのことならすぐわかる」


 トキハルに大扉を開けてもらうことを任せて3人は少し離れた場所でその様子を見ており、待っている時間にライカが尋ねるとトウジは話し始めた。


「昔、トヨの住んでいたシェルターは、特定危険種級の生体兵器に襲われ防壁が破壊された。数万人が暮らしていたシェルターは、生体兵器や破壊の二次災害で生存者は数千人しかおらず、あいつの友人や血縁者は皆そのときに大半が被害にあって死んだんだ。だから今でもシェルター近隣に生体兵器が現れると落ち着きがなくなる、この隊は王都や前線基地にいて今までそういったことはあまりなかったが」


 何かに気が付いたようでライカとトガネが反応する。


「……この間、私と先輩が外に戦いに行った時も私達より先に戦う準備してた……大型のエクエリだったから狙われたらどうしようもないから、一人で外に出られなかったらしいけど……」

「俺っちたちが行くから、休んでていいって言ったけどね」


「何でトウジはトヨっちの事そんな詳しいの?」

「トヨに詳しいわけじゃない、俺も同じシェルター出身ってだけだ」


 そういうと、二人は納得したというようにうなずいた。


「じゃあ、副隊長の居場所って」

「特定危険種をシェルターに近づかせないために、外へ迎え撃ちに行ったと考えるべきだろうな。あいつひとりに名こんなことをしなかっただろうが、朝顔隊がいた。それが副隊長をこんな強行に出させたんだろうな。隊長もわかったいるはずだ」


 溜息をつき大扉の方を見るトウジに対し、そわそわとライカの落ち着きがなくなる。


「やばいじゃん、どうすんの! 戦車の砲撃でも一撃で倒せないようなやばい奴なんでしょ、やばいじゃん!」

「一撃で倒せないだけで、何発か当てれば撃ちぬけるって話だったけど」


「それでも一緒だよ、大型のエクエリなんて重いじゃん! 狙われたら逃げられない」


 少し声が大きかったのか、3人の方を向いて一般兵と話していたトキハルが話を中断し三人のもとへとやってきて静かな声で注意する。


「少し静かにしてくれ、まだ厄介者達がいないことは極秘事項だ」

「ああ、ごめんなさい」


 そして一般兵と話していたトキハルが戻ってくる。


「開けてくれるそうだ、ここに用はない。戻るぞ」

「サジョウ隊長どうします? 外もみんなでギュウギュウだけどジープで向かいますか」


 トキハルは大扉まで乗って来たジープの泊めてある駐車場とは別方向に歩き出した、そのままついてくるライカに言う。


「そのことだが。シジマとムギハラにはここに残ってもらう」

「なんで!」


 静寂に包まれた防壁内側にこだまするライカの大声に、横にいたトガネが驚いて体を揺らす。


「怪我してるけど、俺っちだって戦える」


 少し間をおいてだったがトガネもここに残るのを拒否した。


「いや、二人にはここの指揮を任せる。蒼薔薇隊主導の作戦に誰もいないのはおかしいだろ」

「でも!」


 トガネはトキハルが出ていけば蒼薔薇隊は隊長と副隊長がいなくなるに、気が付いていないのを察し彼が冷静でないのを知ったがそのことを口に出して言おうとはしなかった。


「ライカちゃん、ここはトッキーに任せよう」

「いや、でも……」


 少し迷ったがライカのあきらめる。


「……絶対に連れ戻してくださいね」


 戦闘にならなくても本当はついていきたかったが、トガネの空気から何かを察しライカは渋々トガネの意見に賛成した。


「ここは任せた」


 トキハルは足を速めおいていたかれた3人は小走りで追いかけた。


「はい、じゃあとりまここは任せてください。サジョウ隊長、トヨちゃんの事任せましたからね」

「帰ったら、トヨちゃんをうんとおめかしさせて戦勝パーティーに放り込もう」


「トヨちゃん化粧嫌ってますもんね、いい罰です」

「そんでもって目立つところに連れていく」


 トキハルを中心に盛り上がっている二人に、一歩後ろを歩いていたトウジが声をかける。


「俺には何もないのか」

「トウジはおまけみたいなもんだからね。ダメだよ、二人の再開の邪魔しちゃ」


「そんな余裕があったらな」

「そこはトウジがその余裕を作ってあげるのさ」


 話しながら歩いているとトキハルたちは目的の場所についた。



 整備場、整備士たちがあわただしく、前線基地から逃げてきた一般兵の車両の整備で照明器具が整備場いったいを真昼のように照らしている。

 ライカとトガネを大扉の方に返し、トキハルとトガネは整備士たちの邪魔にならないように隅を通り整備場内を歩く。

 そして、整備場の奥で目的のものを見つけ、その車両に近寄る。


 それは大きなトラックだった、正確に言えば居住スペースを持った装甲車で、普段前線基地やシェルターで使われている物資輸送用の大型トラックより大きく、シェルターや廃墟など建物や障害物の多い場所を走るのは不向きな、前4輪、真ん中2輪、後ろ4輪の巨大な車両。


 そのためシェルターでの生活にこのシェルターでジープを借り、その間このトラックは整備に回していた。


「行くぞ、ハシラ。俺が運転する、お前は周囲を警戒してくれ」

「ああ、わかった。今行く」


 トキハルの後を追ってトウジも車両に乗り込む。

 そして開いた大扉を出て廃墟へ向かう。


「それで、どこに行くんだ」


 トラックはいつでも出発が可能なようにキーが差しっぱなしだったため、トキハルはトラックに乗り次第スムーズにエンジンをかける。


「このあたりで戦車が渡れるレベルの頑丈な橋が残っている場所はそうない。ここから近い場所は一か所だけだ、とりあえずそこへ行く。ろくな作戦もなく生体兵器を食い止めようとするなら引きながら戦うはずだ」

「了解だ」


 装甲トラックのオプション起動時のシステムアナウンスを聞き流しながら、トキハルたちは整備場を後にした。

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