表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
1章 滅んだ国と生体兵器 ‐‐すべてを壊した怪物‐‐
7/798

前線基地、3

 基地にきて二日目の朝。

 朝食を終えるとコリュウとイグサの二人は自由時間をもらい目的もなく基地内をうろついていた。

 今歩いている方面は、来る時見たからと適当に流し見し二人は基地の奥の方へと向かう。

 基地にあるほとんどの建物が『工事中頭上注意』という看板とフェンスの向こうにあった。

 折角の仲直りのチャンスなので話し合いで何とかならないかとコリュウは話題を探す。


「しかしほんと、何にもないね。退屈だよ」

「え、ああ」


 昨日とはうって変わって、奇策に話しかけてくるイグサ。

 コリュウはそれに驚きとっさに言葉が出なかった。


「昨日のはもういいよ。いろいろもやもやしたけど」

「あれはごめん。俺が悪かった、何か一言言っていれば」


「もういいよ。でもしばらくコリュウは私の命令を聞いてね、私の命令は絶対」

「わかった」


「そんでさ、どこかにお店でもあればいいんだけどないかな。一緒に探してよ」

「店か、前線基地にあるとは思えないけどなぁ」


「だよね、でもどこか面白い場所でもあればいいんだけど。自由時間もらったのはいいけど何もすることがない。私一人だと暇だから」

「仲直りしようってなったのか、なんであれ良かった。店ねぇ……、前線基地にそんなもの作らないと思うけどなぁ」


 工事の音を鬱陶しそうにしてコリュウの隣を歩くイグサ。


「だよね……んー?」

「どうしたイグサ?」


 目的もなくダラダラと歩いてイグサが一点を見て急に立ち止まる。

 気づかすに彼女を追い越したので振り返り彼女の元に戻るコリュウ、彼女の眠そうな目はコリュウを見ておらず基地の一角を見ていた。

 いつも通りの返しをしているつもりだったが、昨日のこともありいまだ彼女の反応をいちいち気にかけるコリュウ。


「あ、お店あった。普通? のお店」

「いやいや、こんな基地にふつうの店なんかあるわけないだろ」


 そういうと彼女は一つの建物を指をさす。

 イグサの指さす方を見るが普通の建物が並んでいてコリュウの目には店らしいのぼりも看板もないため発見できずにいた。

 信じてもらえないようなのでイグサは指さしコリュウの手を引いてその方向へと歩き出す。


「いやほんとにお店だって、あれ見てよコリュウ」


 つられてその先を見るが見えるのは普通のビル、脇に金属の薄っぺらい階段が付いた普通の建物、一階には観音開きの扉が付いており前回に開かれていたそこから見える店内は棚と籠が置かれている。


 コリュウは半信半疑だったがイグサが見つけたそこには本当に売店があった。


 三階建ての建物はちゃんとした見張り台ができるまでの臨時の見張り台としての役割をしていたらしく双眼鏡や大型のエクエリが固定されていた痕が残っている。

 しかし今は基地も広がり当時は外側にあった見張り台も内側に飲み込まれ取り壊しを待つだけとなっていた。

 そんな建物を借りて営業しているお店。


「どうしてあんなところに」

「わからない」


 二人はそこを目指して歩き出す。


 店は天井まで大きな棚が届いており、人一人が通るのがやっとぐらいな細い通路を圧迫している。

 その狭い通路に上の物もとれるようご親切に脚立まで置いてあるものだから、ただでさえ通路の邪魔は完全に人を通す気などないように見えた。


 壁一面天井にまで届く棚には、一つ一つ籠が入っておりその中に商品がお菓子の詰め合わせのように並べられ入っている。


「何かいいものないかな……」


 イグサはそういいながら通路の端から籠を引き片っ端から中を漁っていた。

 夢中になって籠の中を漁る彼女にコリュウは近寄って話しかける。


「店があったけど、イグサはなに探してるんだ」


 コリュウは手の届くあらかた籠の中を見たが興味を引くような面白いものがなかったため、棚を流し見をしながらつまらなさそうに店内を散歩しているとイグサがしゃがみこんで近くの棚へとやってきた。


「ん~、特に何かを探してるわけじゃないんだけどね。ねぇコリュウ、こっちとこっちどっちがいいと思う?」


 そういうとイグサは籠から燻し銀の金属の鈴と赤銅色の細長い笛を取り出しコリュウに見せる。


「どれだ?」


 どちらも繊細な模様が施されており安物には見えなかったが、特別高そうにも見えなかった。


「どっちがいいかな?」

「こんなの何に使うんだ?」


 少し嬉しそうなイグサの顔を見てコリュウの頬も緩む。

 コリュウへと向かって突き出すように見せてはいるのだが微妙にその手を左右に振り、振り子のように揺れる笛と鈴。


「エクエリにつけるアクセサリー。あれ、ゴツゴツしててかわいくないから。ちゃんとした基地で塗装をお願いすれば多少の色は変わるんだけど、しっくりくる色がなくてさー。ねぇアクセサリーにするならどっちがいいかな?」

「アクセサリーを付けたところでエクエリはかわいくなんてならないだろう」


「いいの、気分の問題なんだから。私がかわいいと思えばかわいいの」

「そうなのか」


 そういってイグサは手にした二つを交互に見比べ真剣に悩んでいる。


「ふぅん、なら笛だな。鈴は音が鳴るから戦場に持ってったら隠れてても狙われるぞ」

「ああ、そっか。じゃあ、こっちにする」


 そういったことに気が付かなかったのか、わかりやすいリアクションをするイグサはコリュウの言う通り笛を選んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ