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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
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問題児、4

「隊長、サジョウ隊長! 起きてください!」


 トヨがいなくなった部屋でライカに揺すられトキハルが目を覚ます。

 すでにトガネもトウジも起きていて戦闘準備を整えていてその場に集まっていた。


「……なん、だ」

「トヨちゃんがどこ探しても居ません!」

「俺っちの赤いエクエリも消えてる」


 体が思うように動かず体を起こすのにも時間のかかるトキハル。


「ったく、くそ、体が重い。今何時だ、作戦開始までどれくらいある?」

「あと3時間、どうやら2時間ほど眠っていたようだ」


 部屋の壁にかけられている時計を指さしトウジが答える。


「そうか、すまないが俺の通信端末を探してくれないか」

「あ、はい」


 そういうとライカがあわてて机の上に置いてあるトキハルの端末を取りに行く。


「さっきから何度もトヨにかけているが、アイツは出ないぞ?」

「そうか……」


 ライカから端末を受けトキハルは取りどこかへメールを送る。


「今のは?」


 トガネの質問にトキハルが答える前に彼の端末に連絡が入る。

 それを見て舌打ちをし、トキハルが眉間に指を置いた。


「やはりな……」

「どうしたんですか、トヨちゃん何かヤバいことにでも巻き込まれたんですか?」

「今、寝ずに起きている隊にからメールでいいから送るようにメールした。結果、朝顔隊をはじめとした面倒事を起こす厄介な隊から一つも返事が帰ってこない」


 立ち上がりコーヒー以外の飲み物を取りに行くライカ。

 トウジもトガネも先ほど起きたばかりか現状がいまいち把握できておらず、その場でトキハルの指示を待つ。


「みんな俺達みたいに眠らされてるとか、無視して返事を返さないだけなんじゃ?」

「そう思うか。態度が悪い隊はそうかもしれないが一刻も早く戦闘を始めたくて騒いでいるような隊もだぞ?」


「……わるい、そうだな」

「一番厄介なのは蒲公英隊からも返事がないことだ」


「蒲公英隊? なんで」

「まだ帰ってきていないんじゃ?」


 ライカはとりあえずここにいる全員分のコップに新しく水を汲んで運んできた。


「端末に生体兵器の資料が届いている。俺たちが寝ている間に帰ってきたのは間違いがない。それに彼らには帰ったらここへ一番に直に報告に来るように言ってあるから来ていないとすると」

「一緒に……」

「で、トッキーどうする」


 トキハルは立ち上がり大きく伸びをすると、装備の置いてある自室に戻る。

 腰の鞄をつけ自分のエクエリがあるのを確認すると3人のいるリビングに戻った。


「全員支度はできているな、これから大扉に向かうぞ」

「ああ、迎えに行くのか」


 トキハル、トウジ、トガネが部屋を出ようと移動しようとするとライカが小さく手を上げる。


「すみません。私のパーカー洗濯にまわしているので、乾燥が終わるまでもう少し待ってもらっていいですか?」

「それは、冗談で言っているのか?」


「私、寒いの苦手なんです。汗っかきだけど」

「なら、あの派手なコートでも着ていけば? 迎えに行くだけなんだし」




 シェルターでトキハルたちが動き出しているころ、シェルターの外、大鰐との戦闘があった川のさらに向こう側。

 彼女たちがいるあたり一帯は廃墟の中央部らしく、4階以上の高い建物が群集している。


 その別々の建物の屋上で精鋭達は建物の上から敵が戦闘区域に入るのを待っていた。

 全身をこげ茶色の鱗で覆われた動物型の生体兵器が、夜闇の中を広範囲爆撃やトラップなどに引っかからないようにお互い適度な距離を取り、V字の傘型陣形でシェルターに向かって廃墟を巨体を揺らして歩いてくる。


 生体兵器たちはまだ建物の上や隠れている精鋭達に気が付いていない様子で、皆双眼鏡を使い建物の屋上や瓦礫の影からその動きを観察していた。


「ツバメ、何あれ? 原形は何、すごく刺々してるけど? 恐竜? というか爬虫類じゃないですね、なんだあれ?」

「胃がきりきりしてきた。何で作戦開始直前になるといつもこうなるんだろ、隊長になってからずっとこうだ。そのうち血とか私吐くんじゃないか、これ?」

「アオゾラさん大丈夫? 戦闘が始まるまで休んでてええよ?」


 小型のエクエリを持つアミツとツバメ、彼女らは現在することがなく双眼鏡を手に自由におしゃべりしていた。


「いや、気分がわるいとかじゃなくて、双眼鏡越しでも生体兵器を正面から見ると、どうしても心の奥で怖くって」

「ふぅん、まぁ実際人を殺すためにできた生体兵器なんだから、いちおー当たり前の反応なんだろうけど。それで、作戦は聞いたけどその後はどうやって戦えばええの?」

「とりあえずケサ君とノノちゃんに、今回の生体兵器のこと説明してもらおうか」


 そういって一同は蒲公英隊をみる。


「さっきした、なんできいてない! ちゃんときいててよ、死んじゃうよ、バカじゃないの!」


 ツバメの呑気な振りに、できるだけ小さな声で感情をあらわにするノノ。

 ツンとしているが感情をあらわにして怒ることのない彼女がオーバーリアクション気味に怒る。

 その彼女に一番驚いているのは他でもない蒲公英隊の隊長であるコウヘイで、普段彼以外とは全く他人と話さない彼女を見たままぽかんとしている。


「そういわずにもう一度説明お願い、ノノちゃん」

「へーき、へーき。そう怒らんといてよー、ほらこっちへおいでな」


 アミツが立ち上がりのそっとした動きでノノへと迫る。


「なに、するの。来ないで」


 そういうとアミツは両腕を大きく広げノノを上から抱きしめると地面を転がる。

 そのまま馬乗りになり対抗のできないノノの脇に腕を伸ばす。


「やっやめ、そこくすぐったい、やめ! コウ、助け、コウヘー!」


 腰までかかる迷彩マントと派手な法被の中で行われているノノとアミツの戦闘に、コウヘイは戸惑うことしかできていなかった。


「あーあー、あんなに足広げちゃって、とりあえず二人ともスカートだということを認識すべきだよね」

「隊長とイグサもですけどね」

「でもそういう時、コリューは見てるだけで注意してくれないんでしょ。えっち」


 朝顔他の横でトヨが呆れる。


「これから、戦闘だってのに本当に緊張感無いですね」

「まぁ、準備体操みたいなもんだよ。体と心をほぐすの。トヨも混ざる?」


 傍観者として二人を見ているツバメに遠慮しますと一言返すと、トヨは双眼鏡を手にまた生体兵器の方を見る。

 騒いでいる精鋭達から少し離れたところで、トヨはシャツのボタンを開け肌色面積を広げた。

 廃ビルの屋上でしゃがみ眼下に見える生体兵器そ双眼鏡片手に大型のエクエリを構える。


「別にフラれたわけじゃないんでしょ」

「何のことです?」


 ふらっとやってきたツバメに突然話題を変えられ困惑するトヨ。


「いいじゃん、今度こそ正面から告白して付き合えば」


 その言葉でツバメが何を言っているのかを理解する、そしてトヨは重々しく口を開いた。


「ああ、他の精鋭はその辺ゆるいですが、王都直属の薔薇の部隊は、同じ隊の精鋭同士で付き合ってはいけないんです」

「へー、そうなんだ、なんで?」

「えっと、他のメンバーの士気が落ちるからと戦闘中思い人の事が気になり周りが見えなくなることなどですかね。風紀が乱れるという話も聞いたことがあります」

「ああ、なるほどよくわかったよ。面倒くさいからね、周りが見えなくなるのは」


 ツバメがそれとなくコリュウを見る。

 イグサはなぜコリュウが見られているのかよくわかっていない様子だったが、言われてすぐに俯いて隠した彼の顔は真っ赤になっていた。


「ええ、ですので私がいると隊の関係が悪化する可能性があるので自主的に、みんな優しいから黙って許してはくれるのでしょうけど。私はもうあの人の事をまともに見られない、ので、独断で勝手なことをして強制的に除隊処分を受けることにしたんです」


『せ、説明、始める』


 必至に逃げ出してコウヘイの後ろに隠れた息の荒いノノが、ヘットセットを使い他の隊に通信を繋げる。


『あの生体兵器の、ベースは熊。穿山甲が、混ぜられているとみられ、体毛が見た通り硬い鱗状、硬さはエクエリの戦車砲すら、数発防げると思われる。巨体でエクエリが当てやすいからって、前に出ると痛い目を見る。硬さだけじゃなくて、動きも見た目ほど、のんびりしていない、油断すると太い腕で潰される。さっきまでの調査中に、他の生体兵器を、捕食するのを見たけど、中型の生体兵器が一撃でミンチになった、そうなりたくなかったらふざけない事。最後、イタチをベースにした、小型の生体兵器を、お供に連れている。熊に気を取られると、横から襲われる、注意。ざっくりとだけど、熊が15匹、イタチが20匹ほど』


 話を聞いてツバメがエクエリのバッテリーを確認する。


「一応小型のエクエリにも出番はあるんだね」

「熊から引きはがさないと危険だけどね」


 そういうと一同はお喋りをやめトヨの合図を待つ。

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