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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
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問題児、2

 蒼薔薇隊が戻り、緊急でシェルターに居る精鋭すべてが集められる。

 朝顔隊や蒲公英隊を含めた十を超える精鋭の隊長が集められ、会議室の大きなテーブルは強化繊維で出来たブレザー、学ラン、スーツ、正装軍服姿の精鋭の隊長達が囲む。


「シェルター防衛措置、第32項により生体兵器の攻撃がシェルターに危険が及ぶ際、周囲の精鋭はシェルターの守るため最善の行動する。これに従い皆を招集した」


 その言葉を聞いて一同がざわつく。


「ということは、外で騒ぎになってる前線基地を破壊したっていう生体兵器がこのシェルターに来てるってのはデマじゃないんだね」「動物型か? 昆虫型か?」「数は?」「どこからくる?」


 集まった精鋭たちが口々に質問する。

 精鋭の大半はこういった場面に立ち会う機会がなく、数体の精鋭と行動する程度の連携しかなくこれだけの大人数の作戦となるとどう戦っていいのか予想ができていない。


「このシェルターに危険が迫ってるってのは、このシェルターに被害が出るかもってことか?」

「ああ。もっとも前線基地を破壊した生体兵器を放って置くこともできない。仮にここに襲ってこないにしろ近いうちに倒しておく必要がある」


「んじゃ、例の生体兵器は戦車の主砲の効き目がなかったというのも本当のことなの?」

「それをこれから説明するところだ朝顔隊。トヨ」


 名前を呼ばれトキハルの後ろで、手を後ろで組んで立っていたトヨが資料を読み上げる。


「はい。情報では鱗があったとされていますが戦場での情報の混乱はよくあること。戦車に搭載されたエクエリを通さない程の皮膚の厚さと判断、サイや象、アルマジロの様な物が混ぜられているのかと思われます」


 左手でまとめられた資料を読み淡々と話すトヨ。

 ほとんどの精鋭は小型のエクエリがメインとなっていて、よほどのもの好きでもない限りは大型のエクエリを複数所持することはなかった。

 もちろん精鋭程度の実力者なら一匹程度なら攻撃を集中することで小型のエクエリでも倒すことができる。

 しかし複数となると話は変わる。

 そのため、大型のエクエリより威力のある戦車の主砲が通じにくいというのは彼らにさらなる動揺を招いた。


「ふーん、そんなやつをどうやって倒すの?」


 話をじっと聞いていられずツバメが相槌を打つ。

 トキハルがスクリーンに映された映像を流した。

 戦闘中の映像で画質が荒くピントもあっていないため生体兵器の大まかなシルエットがぶれて映される。


「我々の使っているものはほとんどが小型のエクエリ、戦車や大型のエクエリだけで報告に会った今回の特定危険種を倒し切るのは困難。どこかに消えてしまう前にここまで誘導し防壁に備え付けられている砲台、それも使ってシェルター手前で迎撃する」


 シェルターの命運がかかっているだけあってか、他の精鋭達はその情報の少ない映像を真剣見て分析する。


「手数はあったほうがええし、それでええんちゃう?」


 強化繊維の制服の上に孔雀の様な鮮やかな法被を羽織った精鋭、藪椿隊隊長が気怠そうに言うと他の隊長たちもうなずいた。


「地面に爆弾をいっぱい埋めて、まとめて生体兵器を吹っ飛ばそうぜ。足を吹き飛ばして動けなくなったところを、フルアタックでボコボコにしてよぉ!」


 丸いレンズのサングラスをかけた精鋭、土筆隊の隊長が意味もなく席を立ち、周囲の注目を集め自信満々に考えた作戦を提案したが、副隊長や他の隊長たちに席に座るよう言われおとなしく座りなおした。


「それはタイミングを計るのが難しいよ、みんなで分担しても爆弾の上を通らないかもしれないし、そもそもそんな量の爆薬このシェルターに無いでしょ。前線基地じゃないんだから」


 突っ込みを入れる何時になくまじめな朝顔隊隊長。

 朝顔隊は隊長しか出席していなかったが、それでも十隊以上いる精鋭の隊長と副隊長の二十名以上が部屋におり、席にあまりはなく副隊長の何人かは隊長の後ろに立って話を聞いている。


「俺たちは蒼薔薇隊の指示に従います。うちの隊、みんな小型のエクエリなんですけど、どうすればよろしいでしょうか」


 小型のエクエリのため戦闘以外にできることがあればと蒲公英隊。


「精鋭の制服は目立つから指揮権限預かって、シェルターの砲台や戦車隊に指示を出す中継係をやればいいよ。混乱が減る」

「なんであれ、大型のエクエリを持った隊員がいる私たちはその生体兵器を倒せばいいんでしょ」


 ツバメが声を上げた。


「それでは、シェルター防壁での特定危険種迎撃作戦ということで、現在一般兵から特定危険種のより詳細な情報を詳しく集めている、私たちの蒼薔薇隊の他のメンバーをここに呼んで、生体兵器の詳細な情報がないか確かめたのち、作戦の内容を詰めていこうと思います」


 トヨが前に出てきてスクリーンにこのあたり一帯の地図を映す。



 淡々と会議が進んで、それから一時間もしないうちに作戦会議は終わる。

 いつもなら聞き分けのない隊長、自分勝手な隊長、やる気のない隊長達で長期化する会議もシェルターの危機ということがあってか1時間と少しで会議は終了した。

 そして会議室の扉が開き、中からぞろぞろと精鋭の隊長たちが出てくる。

 作戦会議が終わり、各隊が戦闘準備を始めるため通信端末で、他の部屋で待機している自分たちの隊員を呼び集めた。


「戦闘開始まで待機かー、待機が多いな」

「別に朝顔隊は勝手にしてていいと思うけど? どうせ指示通り動かないんだろうから」

「ええやん、なかよーしよーよー。朝顔隊、おもろい事するゆーて、ゆーめーよー」

「面白い、ねぇ……」


 朝顔隊に興味を持つ隊長たちはツバメのそばにより、関わりたくないがうわさに聞く朝顔隊の隊長がどんな人物か見ておこうとする隊長たちは遠巻きにツバメを隊長が囲み各々の感想を述べる。


「んじゃ、俺たちはまた外に行ってきます」

「じゃま、道の真ん中で、とまらないで」


 隊長と副隊長しかいない蒲公英隊は隊員に作戦の事を伝えることがないため、いち早く行動を開始する。

 蒲公英隊は二人とも小型のエクエリを主に使うため戦力としてはいらず、情報伝達や偵察を仕事とした。

 バイクで生体兵器の現在位置を把握し、群れの数を正確に数え、進行速度からシェルターまでの到着時刻を割り出す。

 どこか別の場所へと行こうとしている場合はちょっかいを出し進路を変える。


「ああ、遠目から見た情報でいい。相手は群れで行動をする生体兵器だ、特定危険種ということもあり戦闘を学習されると厄介だ、戦おうとはするな」

「わかってる、そのぐらい。より詳細な情報が、欲しかったけど、我慢する」


 そういうと人ごみをかき分け蒲公英隊は駐車場へと向かった。



 作戦会議後、トヨは誰もいなくなった会議部屋の片隅で携帯端末を操作していた。

 会議が終わるのを外で待っていたトガネがトヨの覗き込もうとしたら彼女は急いで端末を隠した。


「誰にメールしたの?」


 驚いた様子でトヨはトガネから距離を取る。


「バメちゃんです、内容は内緒です」

「きになるなぁー」


「えへへ、内緒です。それじゃ会議も終わりましたしご飯の買い出しに行ってきますね」


 どことなく嬉しそうなトヨにつられトガネが調子よく話しかける。


「俺っちも同行しようか?」

「いえ、バメちゃんと一緒に行く予定なので大丈夫です」


 そういうとトヨは出口に向かって歩き出す。

 トガネもその後を追いかけ歩き出す。


「ああ、今のはその連絡か」

「あ。ああ、はい、そうです。それじゃあ、私は行きますので、あとお願いしますね」


「そうだね、じゃあ俺っちは帰ってこなかったトウジを捜しに行くよ」

「お願いします。というか、なんで迷子になるってわかってるのに一人で行動させちゃうんですか」



 作戦会議後、トキハルは建物から出て蒼薔薇隊の借りている部屋に戻ろうとしていた。

 会議終了と同時に帰ろうとするトキハルの後をライカが追ってきて並ぶと人目を気にして声を潜めながら話しかけた。


「サジョウ隊長、トヨちゃんのことはどうするんです?」

「どうとは?」


 トキハルは速度を緩めず、そのまま停めてあるジープまで歩く。


「いえ、あの……」

「今日のはトヨとトガネの会話だろう」


 そういうとトキハルはジープに乗り込む。


「……そう、ですね。そういうことにしておきます、けど」

「トヨとは時期が来たら話す」


「そうですか、なら……早いうちがいいかと、ああ見えて結構気にしてますから」

「話は終わりだ、時間があるときに戦闘準備を済ませておけ。乗っていくか?」


「はい」


 助手席にライカを乗せると車は蒼薔薇隊の借りている部屋に向かって走り出した。



 作戦会議が終わってしばらくして、会議用の建物に帰ってきたトウジの元にトヨと別れたトガネがやってくる。


「今までどこいたのトウジ。もう会議おわったぜ」

「ここに戻ってこようとしたんだが、道に迷っちまって……もう会議が終わったのか、早かったな」


「それだけ危機が迫ってたんじゃないのかな」


 そういうと顔をしかめるよトウジ。


「トヨちゃんは朝顔隊乗せてジープで買い物に行ったし、トッキーは先に帰ったよ、ライカちゃんは行方不明。……どうかしたの、トウジ?」

「……いや、なんか違和感がしてな」


「ん? 会議を誰かに盗聴とかされてたとか?」

「そういうことじゃなくて、なんだろうな……会議が早く終わりすぎた気がした」


 次々と会議専用の建物から出てくる精鋭達を見てトウジが言葉に詰まる。


「ああ、そういえばそうだね。曲者ぞろいの隊長達も今回ばかりはシェルターの危機だし、真面目な時もあるでしょ」

「いや……なんというか、そういうことじゃなくて。作戦会議後のトヨは様子はどうだった」


「んー、落ち着いてたよ。いや、まいったね川原でのことはついつい口が滑っちゃってさ」

「そういうことじゃなくて、トヨは焦ってたり、パニックを起こしていたりとかしていなかったか?」


 トウジが何を言いたいのかわからず疑問符を浮かべるトガネ。


「いいや、いつも通り、普通。まぁ、とりあえず部屋に戻ろうぜ、また迷子になっちまう前にさ」

「……それもそうだな、でどうやって俺たちは帰るんだ? トヨとトキハルがそれぞれのって行っちまったんだろ?」


「あー、どこかの隊に送ってもらうか、歩くしかないか」

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