表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
64/798

再出撃、5

 トヨとトウジは蒲公英隊の援護するために移動していた。

 場所は再び川原沿い、二人の後方でいまだに白い煙が立ち上っている。

 この場所は川と平行に直線の道路があり、蒲公英隊が引き連れてきた生体兵器を狙いやすくするためこの場所を選んだ。


「配置につきました、周囲が焼けますので川原には近づかないでください」


 そう言うとトヨは大型のエクエリを蒲公英隊の報告してきた予想進路に構える。


『もうすぐ着く、川原に、着いたら一気に距離を取るから、そっちを狙うと思う。仕留め損ねると、死ぬかも』

「的が大きいので外さないかと」


 大型のエクエリは重量があるため機動力が落ちる。

 生体兵器と向き合って戦うのはかなりリスクが高い。

 効果があるかわからないが迷彩マントをかぶりトヨは腰を下ろし、大型のエクエリを構えなおして蒲公英隊の連れてくる大ワニを待つ。


 あとは現れた大ワニに広域燃焼弾を撃ち込みその体を焼く。

 仮に一撃で死ななかったとしても目や鼻などの五感は使い物にならないだろうからすぐに場所を離れれば危険はない。

 その時だった、蒲公英隊の焦りの声が聞こえてきた。


『っ‼ なんだ!?』

『なに? なんで、ここに?』

「どうかしましたか!」


 迷彩マントをかぶり隠れていたトヨが思わず大きな声を出す。


『一般兵が居る、それも結構な数だ。っく、ノノこっちの道はダメだ鰐を引きつれて別の場所に行かないと』

『こんなところに? なぜ、援護など頼んでいないのに……他のシェルターから? ……いやありえない。ここは前線基地に近いからこんな道なんか通らないだろうし、どこからも遠すぎる』


 もぅ少し攻撃後に逃げるのにいい場所を探そうと、そっと場所を移動すると対岸に一匹小鰐が居たのでトヨが横から撃ちぬき頭と体を切り離し仕留めた。


「さすがに散らばってますよね」

「それでも数は減ってるっしょ、大丈夫。勝てるさ」


 さっきから小ワニや灰色のトカゲなどを警戒し黙っていたトガネがトヨの心配を和らげようと彼女の横に並ぶ。


「勝つとかという問題ではないんですけど」


 そこへ、ライカから通信が入る。


『副隊長、まだ川のそばに居ますか?』

「ええ、はい、います」


 エクエリを下ろし周囲を見てトヨが答える。


『こっちは灰色の蜥蜴の相手をしなければいけなくなったので、合流はできそうにありません』

「わかりました、頑張ってください」


『そっちも無理はしないようにマジお願いしますよ。マジでこれ以上けが人は出したくないからね』

「はい」


 通信を終えると川の向こうから朝顔隊が顔を出した。


『お、トヨっち。助けて、あいつ硬い』


 川の向こう側にいるツバメは、土手を登ってトヨとトガネに向かって手を振った。


「どうしました?」

『でっかい鰐が倒せない』


 息を切らしふざけている感じの口調ではない、何があったかを聞くと答えが返ってくる前に土手を登る大きな影が見える。

 小型のエクエリでは歯が立たないのだろう急いで援護をしようとエクエリを朝顔隊を追って土手を登って来た大ワニに向ける。

 しかしツバメの言葉と裏腹に大鰐は両目が潰れ腹や首に大きな穴がいくつも開いていた。

 それでも朝顔隊を追ってきているあたり、嗅覚や聴覚で位置を探っているのだろう。


「もうじき倒しせそうですけど?」

『私しか戦ってないって、イグサがぶーぶー不満言ってる』

『ぶーぶー』


 緊張感のない通信。


『ね』

『ふざけている場合じゃないでしょう隊長! これヤバい状況なんですから!』


 無線越しにコリュウの必至な声が聞こえてきた。


「え、何度そんな余裕そうなの、バメちゃん?」


 土手の向こうに見えている彼女たちは慌てていて切羽詰まっているのに、無線から聞こえる声はふざけている、視覚か聴覚どちらかが間違いなんじゃないかと困惑するトヨとトガネ。


『大体いつも通りだから。んで、あとはトヨっちに任せる。手柄を上げるよ、帰ったらおいし物奢ってあげる』

「え……あ、わかりました」


 ゆっくりとエクエリを構えた。

 奢る件はどうでもよくただ朝顔隊を助けようと動く。

 両目が潰れているのに朝顔隊を追いかけている気味の悪い大鰐へと銃身を向ける。


『おいしいもの食べたい』


 逃げていた朝顔隊のイグサが反転し追っかけてくる大鰐に向かって大型のエクエリを撃つ。

 着弾し青白い光を放ったが鰐は攻撃を嫌がり頭を上げて少し怯んだだけでほとんど効き目はなかった。


 そこにトヨの一撃が当たる。

 少し頭を上げたこともあり爛れた鱗の下を通って鰐の首を大きく抉った。

 そこから大量に出血する大ワニは土手を転がり増水した川に落ちた。


『おりがとートヨっち』

「アモリさんのおかげで比較的に楽に倒せました」

『じゃあ私のおかげだね、私の手柄だ』


 大きな水しぶきが上がる。

 巨体はゆっくりと転がりながら川を流れていった。


「そうですね、お手柄ですアモリさん」

『……えへへ、照れます』


 褒められイグサのうれしそうな声が聞こえてくる。


『じゃあ、子鰐の掃討に戻るね』


 対岸にいるツバメが手を振り、間に川を挟んで会話をすると朝顔隊は土手の向こうに消えていく。


「なんか朝顔隊ってすごいね」

「トガネが真面目なことを言うのって珍しいですね」


 話しながら大型のエクエリのバッテリーを取り換えるトヨ。


「俺っちに惚れるなよ」

「何ふざけた事言ってるんですか?」


「トヨちゃんが好きなのはトウジだもんね」

「違います、トハルです! ……わっわわ! 違います、今のは違います!」


 顔を真っ赤にするトヨに彼女をさらに追い詰める一言が。


『トヨっち告白のタイミングおかしくない?』


 ツバメが疑問の声を上げ。


『トヨちゃん……』


 ライカがつぶやき程度の小さな声を上げる。


『ユキミネさん……』


 イグサも同じような声を上げる。


『今のはトガネが悪いぞ』


 トウジは気まずそうに言うとトガネは本気でトヨに頭を下げる。


「えっ、えっ!?」


 無線の通話は自分の声を相手を選んで通話することができる。

 普段はヘットセットをつけていてもトキハルの指示を受ける為だけに無線はマイクをオフにしていたのだが、蒼薔薇隊を分けて行動していたことと蒲公英隊の引き連れてくる大ワニの相手をしようとしていた事に朝顔隊の会話に返事をしていたこともあって、自分たちの状況をいつでも報告できるようにすべての隊につなげていた。

 すでにトガネの言葉は耳に入っておらず、トヨは次々に帰ってきた声に目を見開きすでに手遅れだがヘットセットのマイクを手で押える。


「……仕事に集中しろ」


 トキハルは呆れた声を上げる。

 トガネは謝ったがトヨの顔はもう赤くはなかった、目元に涙をため、膝は内側を向きガクガクと震えている顔は蒼白。


『告白の、最中に悪いけど、もうすぐ、着くよ』


 ノノがあまり変わらない声色で廃墟の方から土煙を引き連れてくる。


『すみませんユキミネさん。俺たちにも聞こえてました』


 コウヘイが申し訳なさそうに言うと廃墟からエンジン音が聞こえ、バイクが土手の下を通過し廃墟から大鰐が姿を現す。

 今までのより一回りほど大きな大ワニ、他の生体兵器と戦った古傷が至る所にあり今までに戦った二匹の大ワニより凶悪で遠目からでも恐怖を感じるようなものだった。

 自分の誤爆で驚きから隠れることを忘れ棒立ちになったトヨを見つけると大ワニはその場で走る足を止め、体を地面につけその重装甲なただれた鱗で弱点を隠し、一撃で戦車すらかみ砕くであろう大顎を開けて地響きを立てて歩いてくる。


「あ、あぁ……うわぁぁあああああああ!」


 一度は冷静を保ったトヨが声の限り叫んで大鰐に向かって広域燃焼弾を放つ。

 真正面から放たれた広域燃焼弾は口から体内に入り大鰐を内側から燃やした。


 厚い肉と丈夫な鱗があり逃げ場のない熱は大鰐を一度大きく膨らませると、目鼻口から炎を吹き、分厚い鱗の間から火を漏らす。


 そして内側から焼かれた大鰐はそのまま膨れ上がり、鱗の下に隠した柔らかい腹部が破裂する。

 大鰐が動かなくなるのを確認し、そしてそのままトヨは大型のエクエリを投げ捨て腰の鞄を取り外すと、そのままは土手の上を全力で走っていった。


「ちょ、トヨちゃん! 待って俺っち走れない! というか荷物置いてどこ行くの!」


 トガネが反応した時にはトヨはすでに遠くへ走っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ