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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
15章 青々として毒々しい呪われた魔境 --命を硝子の中に閉じ込めて--
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捕縛 3

 倒れた仲間に気を取られていると装甲バスの下から光の弾が飛んできて、追放者のリーダーの腹と横にいた報告に来た男を一度に貫いた。

 突然リーダーを失った追放者たちは光の弾が飛んできた方向を探しそこへ向かって火薬兵器を撃ちまくる。

 先程のテンマと同じように竜胆隊も隙を見て装甲バスの裏へと走って消えた。



 川に落ちたリンネが穴が開き倒れた追放者の一人のもとへと這っていき、彼の持っていたナイフで縛られた紐を切る。

 火薬兵器とともに落ちた小型のエクエリを二つを拾い上げると、装甲バスの下を狙う男たちを狙って引き金を引き撃ち抜いていく。

 命中率が悪くても数を撃てばどこかしらに当たり、最後に生体兵器の血の入ったタンクを持った男に穴が開き川に倒れるとそれを見てリンネは川の中からふらふらと立ち上がる。


 同じタイミングで装甲バスの車体の下からからテンマが中型のエクエリを抱えて現れた。


「ふう、ちょうどだったわね」

「……人を殺しちまった、俺もこいつらと変わらねえな」


 身に着けたプロテクターに穴が開いているが強化繊維で食い止められテンマは無傷。

 顔に張り付いた髪を左右に分けリンネはテンマのほうに歩こうとしたが、足に力が入らず膝から崩れへたり込んだ。


「大丈夫かよ、手貸すぞ。俺に触れればだけど」

「安心してないでまだ生きているわ、殺していない。甘いわねテンマ」


 リンネはエクエリの銃口をテンマが腹や足を撃ち抜き倒れている追放者たちに向けると引き金を引く。

 テンマに撃たれ体に穴が開き悶絶して倒れていた男たちの頭に穴が開きそれ以降動かなくなる。


「おいおい、そこまでするかよ」

「何言っているのテンマ? 放って置いても出血か生体兵器に襲われ死ぬでしょうけどだからと言って放置しておいていいわけでもない。何してくるかわからないじゃない」


 リンネの足元で絶命しているリーダーの男が、いつの間にかテンマに向けていた火薬兵器を手にした小型のエクエリの先ではじいて川に沈める。


「……でもよ」

「一般兵は仲間を見殺しにして生き残る職業じゃない、それに本当に罪悪感があるならもっとショックを受けているはずよ。あとこれは生体兵器との戦闘で起きた誤射だから気にする必要はないわ、生体兵器が近くに寄って来ての乱戦時は流れ弾が味方を貫くものよ。そう考えれば気も和らぐでしょ」


「誤射でも夢に出るときは出るぞ、……それでもあんたにいなくなられると困るから助けたんだ。俺が狙える位置に移動している間にこいつら全員一か所に集まっていてくれて助かったな」

「私が身を挺して時間を稼いだからなんだけど、まぁいいわ。車両に戻るから散らばった服を持ってきて頂戴。川の水冷たいわ」


「あんたは、人殺してもなんとも思わないのか?」

「そういわれても何人も薬の実験で殺しているわ、もう何にも感じない。ええ、そうよ感じないわ」


 テンマが持ち主のいなくなった装甲車まで歩いていき強引に脱がされたリンネの制服を拾い集める。

 振り返ればリンネは川の中に座り込んだまま。


「先に装甲車戻ってなくていいのか? 川の中冷たいだろ」

「自分で歩ければそうしているわ、膝が笑ってもう立ち上がることもできないの」


「俺が持ち上げてバスへ連れていけばいいのか?」

「他に方法もないしお願いできる?」


「男に触られるの辛いんだろ?」

「必要なことだし多少の接触は我慢するわ。でもおんぶがいいわ、触られるよりも私から触った方が辛さは少し気分はマシになる」


 テンマは中型のエクエリを拾った服とともに手で抱えて背を向けてしゃがみこみ、川の中で座り込み腕を伸ばしたリンネを川から引き揚げ背負う。

 ボロい装甲車の向こうでは大きな水しぶきが上がる音と生き物の鳴き声が聞こえている。


「……その自慢のデカいマシュマロ、俺に当たってるぞ。も少し体を放してくれ、あんたも嫌だろ」

「今強張って動けないから気にしないで早く進みなさい、ほとんど裸で恥ずかしいから。ところで変な気起こさないでよ」


「ずぶ濡れた幽霊に後ろからしがみつかれてると考えると逆に血の気が引くよ、このまま川の深みに引きずり込まれてもおかしくない状態だ」

「体は動かなくても口は動かせるから首に噛みつけるわよ」


「あんた吸血鬼かゾンビの類だったか、というか意外とあんたあったかいな」

「ええ体温は人より高いほうよ、これで生きているってわかってくれたかしら」


「いちいち軽い冗談を本気にするなよ。あんただって俺を馬鹿にしてるだろ」

「馬鹿にはしていないわ。何度となく幽霊扱いされれば嫌にもなる。ただでさえ今は心も体も弱っているのに追い打ちをかけないで、呪うわよ」


「やめてと言いながら自分で言っていくのはどうかと思うぞ、悪いと思ったのに」

「この程度で弱音を吐いたら王都で生きていけない、あなたをからかっただけよ」


「いっぺん川に落としていいか?」

「遊んでいる場合じゃないわ、さっさと運びなさい」


 木の根は滑りやすく泥はぬかるむ川底をリンネを背負いながら装甲バスへと戻るテンマ。

 タラップを上がり車内の床を水浸しにしながら戻ってくるとリンネが肩を叩く。


「もう大丈夫、震えも止まった。自力で歩けるわ」

「ここで転んだら怪我するぞ」


 車内に入るとリンネはテンマの背中から降り荷物からタオルを取り出す。


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