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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
15章 青々として毒々しい呪われた魔境 --命を硝子の中に閉じ込めて--
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捕縛 2

 

 装甲車から降りてきた追放者たちの手には大きさも形も違う火薬兵器が握られていてテンマたちに向ける。

 追放者たちは20名前後で何人かは火薬兵器ではなく生体兵器が襲って来た時様にか小型のエクエリを持っていた。

 髪を引っ張られ装甲車の前まで連れてこられるとリンネのこめかみに銃口が突き付ける。


「王都の人間を捕まえるのに私を殺してしまえば意味がないとわかってこれを?」

「こうすれば、お仲間は手出しできないだろ。それぐらいはわかっている、本気で殺すつもりはないさ手足でも撃って怪我させる程度。大丈夫こっちは手足失うような治療になれている」


 それを聞いてリンネは強がって肩をすくめてみせた。

 しかし彼女は息は浅く声が震えており体も強張っていて追放者たちは自分たちの持つ銃での脅しが効いていると思っていた。


「確かに、向こうに対しての人質として十分私は機能しますね」

「自分の立場が分かっているのか? 王都の人間てのは頭がおかしくて困る」


 リンネの頭から銃を下ろすと集まってきた仲間にリーダーの男は言い放つ。


「その女の服は強化繊維だ、生体兵器に襲われても耐えられる素材でできてる。売れば足がつくが、役に立たないわけじゃない。それにおとなしくなるだろ、ひん剥いておけ」


 リーダーの言葉に追放者の仲間たちはリンネを囲み我先にと手を伸ばしその体に触れる。

 さすがにリンネもなんとか体を動かし身をよじって抵抗するが、屈強な男の力に力ずくで押さえつけられ上着、シャツ、スカートを脱がしていく。

 ボタンも強化繊維で止められているため引きちぎれず、またナイフの刃も通さないためボタンを外すのに手間取っていた。

 制服を脱がされ下着とブーツを履いたままでは脱げなかったタイツだけ姿に恥じらい細い腕でできる限り露出した肌を隠す。


「黒い服に黒い下着、かわいい下着付けてるじゃないか」

「残念ながら大きくしすぎてサイズ的にかわいいのがなくてね、オーダーメイドよ」


「逃亡できないよう縛って連れて行け、逃げても生体兵器に食われるだけがな」


 服を脱がしたリンネの腕を後ろで縛ると、彼女の髪を掴んで無理矢理に歩かせ装甲車へと向かわせる。

 先に装甲車の運転席に戻ろうとするリーダーの男の後を歩かされるリンネは呼び止めた。


「あなたに言っておきたいことがある、耳寄りな情報よ。私は能力を持っているわ」

「能力?」


 話題に食いつきリーダーの男は引き返してきて首根っこを掴むと、虚ろな目のリンネと目を合わせる。

 そしてリンネは首を絞めつけられたままリーダーだけに聞こえるように声を絞って話始めた。


「カハッ。ええ、もう私はどうしようもないから命乞い代わりに教えてあげる。誰も知らないから登録はされていないけどあえて名前を付けるとしたら、私の能力は胡蝶の夢。私の夢は眠った次の日一日を映す。夢の中は私の意志で動くことができ、夢に一日が終われば再び、その日をやり直すことができる。一日先を見る未来予知というところね」

「未来予知だと?」


 首を掴んだまま装甲車へと強引に引きずり車内へと押し込む。

 車内の床に勢いよく打ち付けられリンネは恐怖と痛みに目に涙を浮かべながら言葉を紡ぐ。


「予知は確実で、起きる出来事すべてを見ることのできるわ。ただし見たい部分の選択はできない、必ず最初から最後まで一日を通さないといけない。必要なら何日分、場合によっては何十日分繰り返し同じ次の日を夢見ることができる力。毎回違う場所へ行けばいつどこで何が起きているかすべて把握できるわ」

「一度に言うな、整理が追い付かん。何度も未来を見て自分の都合のいい未来になるようにできるってことか、そんなたいそうな能力を持っていながらお前は捕まったのか?」


「どうしようもないこともあるわ、あなたたちの待ち伏せに気が付き逃げ出そうとしたけど間に合わなかった。胡蝶の夢は、眠っているときにしか発動しないし、寝ているときの予知はできない。予知は目を覚ました瞬間から目を瞑り眠りに落ちるまでの間、一日といったけども、実際は18時間程度。今回は私の眠っている夜にこられたから対処できなかった。ついでを言えば所詮は夢、時間が立てば些細なことは忘れてくる」

「なるほどな、捕まえられたのは俺たちの運がよかったってわけか。よくできた話だ、話はあとで聞こう」


「疑っているわね。いいわ、もうすぐ報告にお仲間がやってくる。生体兵器が集まってきたから早く逃げようという内容よ。実際その通り、これから何が起きてもあなたはこの車両を降りずに急いでここを離れるべき」

「何を言って……」


 そこへ追放者の仲間がやってくる。


「周囲を囲む生体兵器の数が増えてきた、早くここから離れないとやばいぜ。こいつが連れてた精鋭を囮にして逃げるなら今しかない」

「……よし、来た道を引き返すぞ。こんなところ人が来るもんじゃない。おい、誰かあれを撒いてやれ」


 リーダーはそのにいた歯の欠けた男に指示を出すと、男は液体の入った黒いタンクを背負いそこから延びるホースを竜胆隊に向けた。


「おいそら見ろよ精鋭さん、この中には生体兵器の血液が入ってる。固まらないよう薬が入っているが生体兵器の古い血だ、ここで撒けばその香しい匂いに集まってきた生体兵器は涎をたらしてお前たちを狙うだろうよ、精鋭は精鋭らしく戦って死ねるんだ本望だろ」


 そう言って歯の欠けた男は竜胆隊に向かってホースを振りコックを捻るとタンクの中身をぶちまけた。



 意識が下着姿で押し倒されているリンネに向かい、見張りが竜胆隊に向けて血を撒く男一人になったタイミングでテンマは装甲バスの裏に逃げ出す。

 その水しぶきを上げて逃げる背後を走る水音に気が付いた追放者の数人が急いで火薬兵器を構えて撃ち、その背を撃たれたテンマは水の中に倒れる。


「一人が逃げたから処分した」

「そうか」


 リンネの首から手を放しリーダーの男は運転席へと移動すると、代わりに彼女に服を脱がせた男の一人が入ってきた。


「話はここで終わりだ、続きはここを出たら話してもらおうか。しかし、そんな大層な力の話をべらべらと話すだなんてよっぽどの馬鹿なのか、それともこの先の未来が見えていて先に言ったのか?」

「馬鹿じゃないわ。そうそう、あと一つ重要なことが」


「なんだ? こっちは急いでいるんだ、後はここを出てから話してもらおうか」

「私の能力を知って生かしておくわけないじゃない。心の準備ができるまでの時間稼ぎ、長話ご拝聴いただきどうもありがとう、さようなら」


 そういってリンネが意を決し車内から飛び出すとそのまま水面に落ちる。

 腕を拘束されていたため頭から落ちる体制は変えられず大きな水しぶきをあげた。

 集まっていた追放者たちが彼女を捕まえようと駆け寄ってくると、最初にリンネの髪を掴んだ男の腹に大きな穴が開く。

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