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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
15章 青々として毒々しい呪われた魔境 --命を硝子の中に閉じ込めて--
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蠢く悪意 2

 車両は速度を上げていき霊峰樹海へと突っ込む。

 舗装されていない道、木の根など踏み越えサスペンションでも揺れを消しきれず車内は揺れ、ぶつかった勢いで改造植物がちぎれ植物の汁がフロントガラスを汚す。

 その勢いと反動でリンネの手から携帯端末が離れ床に落ち意志を持ったように車内を滑り周る。


「これ大丈夫なのか? 速度結構出てるけどぶつかって運転席が潰れたりしないだろうな」

「昨日確かめたでしょ、ここらの植物は鉈で切れる程度の硬さしかない。太い幹に直接ぶつからなければ大丈夫よ。あと念のため見たことない植物には近寄らないで」


「前を走る竜胆隊に行ってくれ」


 霊峰樹海の外に生えていたものより何倍も巨大な球体植物をよけるため車内は左右に大きく振られ、テンマがハンドルを切るたびに髪を勢いに振られながらシートベルトを強く握るリンネ。


「この森の中走って生体兵器に襲われたりしないだろうな」

「何言ってるの、生体兵器の縄張りに入ったんだから襲われるに決まっているわ。こんな大きな音立てて走っているのだからすぐにでも寄ってくるわ」


「どうするんだよ」

「逃げるの、他に道はないから」


 前を走る竜胆隊の乗った戦闘車両が砲塔を回し主砲を放つ。

 激しく動く中後ろを走る装甲バスからはその光の弾がなにに当たったかどうかは確認できない。


「ほら来た」

「んなこといってないでよ、どうするんだ。運転変わるか? 後ろに置いてあるエクエリ持って戦うか?」


「何もしないわ、どうせ私たちじゃ倒せないし、無意味よ」

「攻撃すれば少しでも追い払えるだろ」


 運転席の無線機から竜胆隊の声。

 リンネの携帯端末は床を滑りまわっていて手元になく運転席の無線機を取る。


『いわれるがまま逃げ込んだのだが、どこに行けばいい?』

「どこで待ち伏せているかわからない、出来ればさっきの場所からできるだけ遠くへ。もっと樹海の奥へとすすんで」


 眉間をさすりリンネが竜胆隊と会話にテンマが口を挟む。


「このまま樹海の奥へと進むと自分の位置がわからなくなるぞ?」

「別に方位磁石が使えないわけじゃないしドローンだって使える。一度入ったら樹海から脱出できなくなるわけじゃない、自分の居場所はちゃんと確認できることは過去の報告で分かっているわ」


「ならさっきのやつらがドローンを使って追ってくるんじゃ」

「だから森の奥へと進むのよ。生体兵器を寄せ付けるからドローンや無線はアンテナ車がないと電波の範囲はすごく小さいし、ドローンを長時間使っていればエネルギー切れをおこして墜落するか引き返していく、これだけ葉の密度が多いから上からでは見つけるのは不可能でしょうね」


「……なるほど、でも特定危険種クラスの生体兵器が出てきたらどうするんだよ」

「竜胆隊に任せるわ、薔薇の精鋭に並ぶ強力な精鋭だものそれぐらい倒してもらわないと困る。他の精鋭の同伴を拒否するくらいだしね」


 毒づくリンネに話を聞いていた無線は答える。


『むろん出てきたら対処する。それで、このまま樹海の奥に進んでいくのか?』

「ええ進みなさい」


『だが、進んだところで結局は樹海から出るのだろ?』

「私たちには竜胆隊がいるけど、彼らはよくて一般兵崩れ奥までは追ってこれない。彼らに見失ってもらえば逃げ出すチャンスはあるでしょ。さすがに樹海全体を監視するほどの人員もいないし、地雷もそんな数はないはず。携帯食料もあるし2日程度ここで過ごせば生体兵器にやられたと勘違いしてくれるでしょう」


『せめて、ここにいるなら4日以上だろうな。霊峰樹海の地図によればもう少しすると廃墟街へとたどり着く、障害物が多いから速度を下げるぞ。乗り上げて横転するなよ』

「ええ、わかりました。生体兵器が怖いけどどこか休めるような建物を見つけ休みましょう。さすがに揺られすぎて酔ってきたわ、朝食を抜いたから胃の中身はないけど辛い」


『わかった、惨事になる前にたどり着けるようにしよう』

「お願いするわ」


 その後改造植物の間を抜け蔓や蔦にまかれた建物が並ぶ廃墟についた。

 蔦は建物に絡みつき倒壊しないように支えながら締め付けるように破壊している。

 速度を落とし廃墟の中を進む二台は草に覆われて見えにくくなっていて、瓦礫に何度か乗り上げ大きな車体は大きく揺らしていた。



 地面を割り建物の中に入っていたり窓から出てきたり好き放題伸びる蔓、道の真ん中で建物に負けじと大きく育つ球体植物、建物やほかの植物に巻き付く蔦、赤に青に緑と大きく育った果実が改造植物に飲み込まれた廃墟をなんとも言えない不思議な景色を作っている。

 その中で多少の衝撃で崩れなさそうな大きな建物を探し、あてはまるものを見つけると車両ごと建物の中に突っ込みそこで停車した。


 中型のエクエリを抱えてテンマは装甲バスから降りると、外の空気を大きく吸って深呼吸をし水筒に口をつける。


「酔った、気持ち悪ぃ……」


 改造植物の蔓が壁や天井を這いそんな天井を見上げ呆けていると、そこへ強化外骨格を身に包んだ竜胆隊の隊長がやってきてテンマを見下ろす。


『陽光隊の副隊長は?』

「空っぽのいの中身吐き出そうと頑張ってるよ。背中さすってやろうとしたら出ていけとキレられた。情緒不安定なんだ、もともと薬の実験体だったらしいし」


『そうか。ところでお前も酔ったのか?』

「そっちは酔ってなさそうだな」


『生体兵器に踏み荒らされ舗装された道が少ないシェルターの外ではこのくらいの揺れは珍しくない。特に俺らのような精鋭は道なき道で走りながら戦闘することもあるからな』

「確かにそうだけど、今回は揺れすぎた。話すのもつらい。俺もしばらく放って置いてくれ、生体兵器の相手は任せる。万全だったとしてもどうせ役には立たねぇけどな」


 他の隊員は建物の外と室内の安全を確認しに走り回っていて、テンマと話し終えた竜胆隊隊長のオキも乗ってきた車両が入ってきた入り口の警戒へと向かった。

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