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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
15章 青々として毒々しい呪われた魔境 --命を硝子の中に閉じ込めて--
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明日を見る 1

 その後戦闘もなく前線基地へと帰ってくると基地の中央安全な場所で装甲バスは停止し護衛の終わった戦闘車両は基地内の宿舎へと向かう。

 装甲バスは駐車場にとまるとリンネは今日採取した改造植物の入っている瓶へと向かった。


「戻ってきたわね」

「戻ってきたな」


 リンネはトランクを開け瓶の中で揺れる保存液に浸った植物の破片を取り出す。


「なんだよ……慌てて逃げてもちゃんと蓋閉めたぞ」

「ええ、しっかり閉まっている。傷がついたけどひびは入っていない」


 樹海の淵で集めた二種類の改造植物、5つの瓶を床に並べリンネは携帯端末で写真を撮り始めた。

 テンマは彼女の後ろから瓶を見る。


「ふっとばされて転んだ時に、瓶が割れていないのはよかったよ。もし割れてたらもう一度取りに行けなんて言いそうだ。で、何してんだ」

「外じゃじっくり見れなかったからここで確認したかっただけ、ここなら襲われる心配はないから。あと、報告用の添付画像に写真を撮っている」


「じっくり見るって、俺がこれを切ってる集めてるときとき何もせずじっと見てただろ」

「そうね。たしかに何もしなかったわね」


「なんでちょっと怒ってんだよ」

「別に怒ってなどいないわ。さて、折角前線基地に帰ってきたのだから食堂にでもよってお昼でも食べに行く? 楽しみにしていた携帯食料はお預けね」


 リンネが写真を撮り終えると二人は傘を差し小雨の降る外に出た。

 遠くに霊峰樹海が見え基地内の大砲のほとんどがその方向に向いている。

 基地内はデザイン性のない同じような建物が立ち並びテンマは周囲を見回し食堂を探すべく濡れた地面を歩き出す。


「さてじゃあ、食堂に行きましょう。どこ行くのテンマ、ついてきなさい」

「始めて来た基地だよな? 食堂がどこにあんのかわかってるのか」


「ええ、任せておきなさい。食堂の位置からあなたが何を食べるかまでお見通しよ」

「そいつはすげえな」


 リンネの後に続きながら興味のないテンマが軽く返事を返した。


「疑ってるわね、だったら勝負しましょう。私が先にあなたの食べるであろう食券を買うからあなたは後から来て買って頂戴」

「めんどくせえよ、普通に食おうぜ」


 リンネの案内で二人は注文した食事をもって席につく。

 大盛りのかつ丼が二つテーブルの上に置かれリンネが表情も変えずに勝ち誇る。


「当たりね。私の勝ち」

「たまたまにしてもすげえな、あんたは食いそうにない大盛りのさらに上の特盛を選んだんだが」


「さあ、正解者に商品を頂戴」

「なんでだよ、何も持ってないぞ」


「命でいいわ」

「軽いな俺の命」


 そう一言返すとテンマは箸を取って食事を始めた。

 テンマは黙々と食べていたが、少しして食事に手を付けないリンネに話しかける。


「どうした?」

「かったのはいいけど、私少食だからこんな量食べられないわ」


「……馬鹿なのか?」

「馬鹿じゃないわ」


「そんなの買う前にわかるだろ、このスペシャルメニューだって量だって写真付きであったし」

「もちろん買う前から分かっていた。まだ手を付けていないから自分の分は小鉢に取るわ。後は食べなさい」


「おいおいここから一人前分取ったとしてもかなりの量だぞ、こんなに食えない」

「大丈夫よあなたは食べきれるから、といってももったいないと無理に食べるのだけど。そこ後食べ過ぎで動けなくなるけど問題はないわ」


「あんた何がしたんだ」

「あなたを困らせたい」


 その後食事を済ませたリンネは先に装甲バスへと戻り、食堂に取り残されたテンマはほぼ二人分の大盛りのカツ丼と格闘する。



 午後、生体兵器の襲撃も竜胆隊と基地の設備で問題なく片付けられいく。

 雨の中、傘をさして生体兵器と一般兵の戦闘の様子を精鋭用の宿舎その屋上からリンネはて見ていた。

 昼食を食べすぎたテンマは腹をさすり屋上の階段の手すりにもたれかかって休んでいる。


「生体兵器との戦闘も精鋭が戦っていると安心してみられるわ、あなただったら返り討ちもいいところ秒殺ね」

「そうだよ、俺は一般兵だからあんな風に戦えねぇよ」


「今は桜の精鋭陽光隊よ」

「桜って戦わない精鋭なんだろ、王都に住んでたんだからそれくらい知ってる。そういうあんたは戦えるのか?」


「何を言っているの生体兵器にであったら私なんか秒殺よ、だから今日だって予定を大幅に切り上げて戦闘を回避してるんじゃない」

「威張るとこじゃないと思うんだが、そのドヤ顔俺が間違ってんのか?」


 生体兵器が討伐されその後片づけが始まった。

 小さいものは数人がかりで、大きいものはその場で解体され部位ごとにトラックに乗せらていく。

 血は大きな袋に入った粉をまき上から土をかぶせて埋めた。


「あれは何しているの」

「地面にしみこんだ水で洗い流せない血や体液はあの粉で固めて臭いが散らないように土かぶせてんだよ」


「一般兵の仕事は重労働ばかりね、こんな雨の中汗水たらして」

「戦う前も戦っている最中も戦った後も毎日毎日重労働だよ一般兵は」


「王都周囲は生体兵器がいないんでしょ、暇じゃない?」

「だからわざわざ遠出してまでして戦ってるんだろ。日が昇る前から日が落ちるまで行きと帰りで人数の違う遠征を毎日」


「土にまみれて指揮官にも恵まれず絶対やりたくない仕事ね」

「俺はこの間までやってたよ、わかってて言ってるよな」


 戦闘を見終えたリンネは傘を回しながらテンマのほうへと歩み寄る。


「さて今日一番の見世物も終わったし、この後は暇でつまらないわ。テンマ、身の上話でもしなさい」

「ほんといきなりだな」


「私のはこの間したでしょ」

「へいへい」


 リンネが階段を下り初めテンマもそのあとに続く。


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