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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
15章 青々として毒々しい呪われた魔境 --命を硝子の中に閉じ込めて--
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霊峰樹海 3

 大型バッテリーから延びる太いケーブルを大型のエクエリに繋ぎ、正常につながっているかを確かめるとエクエリを肩に背負う。

 外骨格に身をまとった竜胆隊を見ているとテンマがつぶやく。


「昔見たヒーローものからロボット漫画みたいになってきたな」

「流石に竜胆隊も完全武装ね、あなたもエクエリを一応持っておけば? 陽光隊は非戦闘部隊だから、武装積んでないわよ」


「まじかよ、あんたは守ってもらう気満々だな。んじゃ、小型のエクエリをもらってくるとするよ。とりあえず一般兵に話しかけてくる」

「倉庫は青い屋根の建物よ。バッテリーをもらってくるのを忘れずに、ここで時間を取られて作業の時間が減るから」


 リンネは走って行くテンマの後姿を見送ると霊峰樹海のほうを見た。


「さぁ、問題はここから……ね」



 少しして武装をもらいに行ったテンマは中型のエクエリを持って帰ってくる。

 制服の上から一般兵が気休めに身に着ける軽装甲のプロテクターを身に着け、バッテリーの収まったマガジンホルダーを身に着けた。


「え、大型のエクエリを取りに行ったんじゃないの?」

「なんで俺がエクエリ取りに行ったときに竜胆隊が持ってたような大型のエクエリを思い出して、精鋭になったからせっかくならそっちを選ぼうとしたこと知ってんだ?」


「気にしなくていいわ、で大型はいいの?」

「悩んだけどなんか、前に来た精鋭が置いていったらしく中型のエクエリってのがあったんでそっちにした。こっちの方が精鋭っぽく見えるだろ」


 そういって中型のエクエリを構えて見せる。

 エクエリを抱え玩具をもらった子供の用に目を輝かせるテンマをみてリンネは首をかしげた。


「またか、なんでうまくいかないんだろ? 私の見た景色と変わってきた、頼むからちゃんと動いて頂戴」

「何の話だ? エクエリ取ってこいって話だったはずだろ、ちゃんと持ってきたぞ?」


 バッテリーの取り換え、構えの時の動作の確認、操作方法を何度も確認しテンマはスリングをかけエクエリを背負う。

 溜息をつきリンネはプロテクターを見る。


「というかその鎧、強化繊維より脆いから身につける必要なんかないと思うけど? それも竜胆隊を見てまねしたの?」

「……別にいいだろ。気休めだ、布より金属を身につけてる方が安心感があるんだよ」


 リンネはテンマのつけた胸当てに拳を当てる。

 戦闘中ガチャガチャならないよう計算されて作られた光沢の消された黒い胸当ては、叩かれても動いても大きな音を立てることはない。


「強化繊維、せっかくの軽量化の利点を潰すのね。感心するわ」

「今までこんな感じで戦ってたんだ、この服が硬いって話は聞いてるけど軽すぎて気になってしょうがない」


「まぁ、すきにしなさい。あなたの命だし」

「……そうさせてもらうよ」


 リンネの携帯端末に竜胆隊から連絡が入る。


『こちらは準備ができた、いつでも出発できる。そちらはどうだ?』

「こちらも、大丈夫です。では行きましょうかあの樹海へ」


 戦闘車両と装甲バスは前線基地を後にし走り出す。

 そこらの植物とは違う緑色の塊へと向かっている車内で運転しているテンマは、助手席で周囲に動物型の生体兵器が居ないか見張っているリンネに話しかける。


「思ったんだけどよ動かない植物型の生体兵器は五月雨で薙ぎ払えないのか?」

「戦車とかに乗ってる砲台のエクエリの弾種の一つ? でも無理ね。こう見ると植物しかないように見えるけど、広い範囲の廃墟を飲み込んでいて非生物を貫けないエクエリの弾では途中で弾が消えてしまうらしいわ。後そんなことして生体兵器が黙っているとも思えないけど」


「地道に駆除していくしかないのか、結構広範囲に広がってるな」

「あの大きな山の向こうまでびっしり生えてるわね、多少の気温差は物ともせいないんでしょうね」


「すごいな、世界がこの植物に包まれちまうもの時間の問題か?」

「だいぶ気の遠くなる時間がかかるけどね、そうさせないために私たちが除草剤を作るのよ。さらにこの樹海の中には何種類かの生体兵器が潜んでいる、普通のね」


「……まじか近寄るなんて自殺行為じゃねえか」

「もう一ついいことを教えてあげる。ここは大昔の生体兵器の研究所があって、そこでは植物型の生体兵器の研究がされていた。これもその作品のひとつ」


「一つってことはあの緑の塊だけじゃなくて、まだいるのか植物型」

「正解、その数種類の生体兵器のサンプルを持って帰る。危ないところはあなたにやってもらうから」


「護衛は?」

「ないわ。あなたにはつかない」


「馬鹿じゃねぇの?」

「馬鹿じゃないわ」


 霊峰樹海のその端に二台の車両は止まる。

 家屋ほどの大きな丸く育つ植物、周囲の地面の栄養を根こそぎ吸い取っているのか普通の植物が生えてはいない。

 竜胆隊は戦闘車両から降りると周囲を見回し装甲バスを守るように展開した。

 それを運転席で見届けリンネたち二人はドアを開け樹海を見る。


「これだけ存在感のある植物はなかなかないな」

「生体兵器だもの、さぁ仕事よテンマ。トランクを持ってきて、保存液も」


「……近くで見ればよりデカいじゃないか。ほんとにあれ、パクリと俺らを食いに来ないだろうな?」

「そういう植物もあるけど、直に触れて見ないとわからないわ。私も資料を読んできただけだから」


 防護マスクをかぶりリンネは荷物から厚手の皮の手袋を取り出すとテンマに投げつける。


「俺も手袋必要か?」

「一応ね。この改造植物、漆、イラクサ、クサノオウ、ギンピーギンピーなどどれかが使われていたら持ってきた塗り薬で対処できるかわからないから」


 そういうとリンネは手袋の上から皮の手袋をはめ傘を持って装甲バスを降りた。


「俺の心配してくれてるのか?」

「荷物誰が積み込むと思ってるの? さ、早くついてきて。そこの鞄に鉈とトングが入ってるからそれもよろしく」


 テンマも荷物を背負ってバスから降りるとリンネを追って成長の途中であろう植物型に近寄る。

 小さくても人の背丈ほどの高さに膨れ上がった丸い植物。


「なんかパイナップルみたいだな」

「どこが、普通にゆり根じゃない? というかたぶんこれの原型はアロエよ」


 葉の先端は外側を向いていて小さなギザギザが見えた。


「これからこの小さいのの葉を採取する、瓶を取り出しておいて」

「わかった」


 傘を閉じマスクをつけトングで植物をつつくリンネの後ろで、テンマはしゃがみトランクを開き中から大きな瓶を取り出す。


「でかい瓶だな、8リットル瓶か? 果実酒でもつけられそうな大きさだ」

「実際これで隊長が漬けて毎晩一人で楽しんでいるわ、最初のころは晩酌に誘われたけどすぐに呼ばれなくなったわ」


「夜中にあんたの顔見たら心臓止まっちまうからだろうな」

「……在庫はあのバスの乗っている通り山ほどあるから」


「結局俺はリンネ以外のこの服の精鋭のお仲間さんに合わなかったな。隊員が隊長の顔を知らないってのはどうなんだ?」

「皆実験が好きだから早々部屋から出てこない。別にあったところで歓迎なんてされないわ、水飲むかって言われて一服盛られるだけよ」

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