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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
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野に咲く花、6

 

 次の日、蒲公英隊は昨日蒼薔薇隊の戦闘のあった川へと生体兵器の情報を集めるため、雨の降る中大扉をくぐに抜け廃墟へ向かった。


 それを知らないツバメはトヨに話しかける。


「蒲公英隊はどこに行ったの?」

「生体兵器の生態調査に、外へ」


「昨日言ってたやつ?」

「そうです」


 呼んでもいないのに朝顔隊は蒼薔薇隊の部屋に集まっていた。


 トキハルは部屋の中央スペースを陣取っている彼女たちの姿を見てため息をつき眉間に指を置く。

 本日出撃の予定はなく朝顔隊はここで買ったかほかのシェルターで買った普段着姿で、精鋭というオーラはみじんもなく三人とも年相応の少年少女に見えた。



 しかもライカやトガネと親しげに会話しており完全になじんでいる。

その光景にトキハルはまゆを曇らせる。


「私たちはこの間どうすればいい?」

「ツバメ、時間があるなら買い物に街へ繰り出しててもいいですか?」


「そうだね、イグサの買い物でも付き合うかな」

「あんまり無駄な荷物が増え無いようにしろよ、イグサ。たくさん買って車に積んでも、生体兵器に襲われて車が壊れたら置いて行くしかないんだから」


「前みたいにね」


 生体兵器との戦闘で精鋭は自身の身を守ることができるが、車や荷物はそうはいかない。

 最悪放棄して生体兵器を隠れやり過ごしたり所持していた食料などで囮に使いそれに夢中になっている間に奇襲を仕掛けたりする。


「トヨちゃんのエクエリのメンテが終わるまでそんなにかからないでしょ、蒲公英隊の情報収集にどれだけかかるかわからないけど急がせたし。とりま、朝顔隊はそれまでどっかいって手もいいんじゃない?」

「そうだねー、イグサの買い物にでも付き合うかなー」


 そういうとイグサとツバメは席を立つ。


「置いてくよーコリュー」


 ライカと二人で話していたコリュウは、急いで部屋から出ていこうとする二人を追う。


「え、ちょっと。まって。急にどこ行くんです?」

「かいもの、コリューは荷物持ち」

「んじゃ。トヨ、またね」


「また来ますねー」

「お邪魔しました」


 そういうと朝顔隊は蒼薔薇隊の部屋から出ていき、トヨは朝顔隊を限界まで見送りにいく。

 彼女らがいなくなると途端に部屋は静かになった。


「部屋が広くなりましたね」

「イグサちゃん、妹に欲しかったなー」


「先輩がそういうとヤバい怖いね、犯罪の臭いがする」

「ライカちゃんは何話してたの?」


「女の子が喜びそうなプレゼントの渡し方とか、デートの誘い方とか?」

「何で疑問形なの、ライカちゃん?」


「実際、やったことがないからアドバイスじゃなくて勝手な妄想だったから、雑誌とかのおまけ的な」

「可哀想。変な勘違いしてたらどうするのさ、俺っちに聞いてくれればいいのに」


「トガネ先輩、男の子とあんまり喋らないじゃん」

「そういえば、そうだね。女の子と話している方が楽しいからね」


 朝顔隊のいなくなった後、トキハルが椅子に座ると朝顔隊を見送って来たトヨに話しかける。


「それで、トヨのエクエリはいつ治るんだ?」

「えっと、整備からの報告ですと私のエクエリは今日中には治るかと、トガネの怪我は?」

「俺っち? んー、暴れなければ傷口も開かないってさ。他の傷も大したことはないしね」


 トガネはシャツをめくって包帯の巻かれた腹部を見せる。


「おまえとシジマは戦闘には連れて行かない方がいいか」

「いや、大丈夫。俺っちも連れってって、ヤバいと思ったら逃げるから」


 前日から予想していたとおり二人は首を横に振る、今回戦った生体兵器は非常に硬く戦力としては大型のエクエリで致命傷を与えるか小型のエクエリで地道にダメージを与え衰弱させたのち脳や心臓といった重要機関を破壊するどちらにしろ人では多いに越したことはない。


「……仕方ない。ムギハラ、お前は当日トヨの護衛に居ろ。傷口が開いて足手まといになられるのも困る」

「おっけー、トッキーさんきゅー」

「無茶はしないでくださいね」


 何と言われようとついていこうとしていた二人の顔は明るくなる。


「今度はしっかり身だしなみ整えてくださいね」

「今度は強化繊維のベスト着るから大丈夫」


「そういう問題ではないんですけどね。ちゃんとボタン閉めてください」


 静かになった部屋でトキハルはいつも通りの日常を送る。



 次の日、やはり朝顔隊は蒼薔薇隊の部屋に来ていた。

 当たり前のようにいる彼女たちを見て、本日もトキハルは眉間に指を置く。


「~ってなわけで私たちはしばらく、卵料理というか黄色と赤の料理を見ると食欲をなくすんだよ」

「昆虫型の幼体かー、見たことないなー」


 ツバメを挟むようにライカやトガネが座っている。


「でも生物へ基地と戦ってるんでしょ? どこかで出会っててもおかしくない?」

「基本的に私たちの隊は、特定危険種専門だからね。雑務につき合わされる他の隊とは違うよ」


 朝顔隊の自慢話のような戦果を聞かされて、反撃とばかりに自慢を交じえてライカが相槌を打つ。


「何だー、ライカ。うちの隊を馬鹿にしているのかー」


 ライカとツバメは昨日会ったばかりの初対面だったが短時間の間に打ち解け親し気に話している。

自信家で口の悪いライカの悪い部分もツバメは気にしない。


「うちの隊が特別って言いたかったんです」

「どうせうちの隊は雑用ですよー」


 ライカに口を挟まれ、子供の様に拗ねるツバメ。


「ツバメはここの生活に慣れて、体が鈍っていて、馬鹿にされて、ふてくされてるんです」

「いきなり危険な生体兵器と闘って俺たち大丈夫なんでしょうかね」

「何とかなるだろ、たぶん」


 イグサとコリュウが不貞腐れたツバメをなだめる。

 お盆に乗せ人数分の飲み物を持って来たトヨが五人のもとにやって来た。


「飲み物を持ってきましたよ」

「お、ありがとうトヨちゃん」


 トヨの持って来たのも物を配る手伝いをするトガネ。


「次の戦闘でもう怪我はしたくないなぁ」

「朝顔隊は蒲公英隊がサポートしてくれるように作戦たててますから、その辺はたぶん大丈夫です」


「そう? 蒲公英隊に迷惑かかるね」

「あの小さい子が怒りそう、なめてるのかって」


「癒しだよね」

「……たぶんそれはトガネだけかと」


 大体は軽くあしらう程度の反応をする噂をするトヨもさすがにその発言には引いていた、そしてタイミングを見計らったかのように蒲公英隊が返ってきた。

 濡れた迷彩マントを脱ぎ蒲公英隊の二人はトキハルの方へと報告に向かう。


「ただ今戻りました」

「仕事して、帰ってきた。お前達が、遊んでいる間に」


 蒲公英隊の二人を席に着かせ、トヨは席を立ち風呂場へ向かうと雨に濡れた二人にタオルを渡す。


「これでみんな揃いましたし、出撃ですねトハル」

「ああ、そうだな」

「決着つけようぜ」

「倒せるのか?」

「ダルイわー」


 と蒼薔薇隊。


「パパッとやっつけちゃいましょ」

「そう簡単に行けばいいけどな」

「まぁ、何とかなるでしょ」


 と朝顔隊。


「えっと、俺たちの補給がありますから……すぐにはちょっと」

「せっかち。兵器とは言え、たかが動物、情報をもとに、しっかり準備、してれば、勝利は確実。ゆっくり構えて、いけばいい」


 と蒲公英隊。


「蒲公英隊。生体兵器に関しての説明は、戦場となる川原付近でしてもらうことで構わないか?」


 トキハルは濡れた髪を乾かす蒲公英隊に向かって話しかける。


「べつにいい、どこでも」


 ノノは被ったヘルメットを取って濡れた前髪などを拭いている、彼女の地毛は金色の様でそれを黒く染めていたらしく旋毛付近に新たに伸びてきた金色の毛が見えた。


「だそうです」


 眼鏡を拭いていたコウヘイは急いで眼鏡をかけなおしてトキハルに返事を返す。


「それでは準備ができ次第大扉に集合しろ」


 そういうと一時解散して、各自戦闘の準備をするため自室に帰った。

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