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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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報告を待つ 3 終

 拠点内はすぐに鉄蛇へと続く道すべての生体兵器の死骸が片づけられる。

 そして残った建物から物資を回収し鉄蛇へと積み込んでいく。

 動ける車両は撤退時に鉄蛇ともに帰るときように列車の近くへと移動させられ、同じく鉄蛇のそばに装甲バスを移動させたアサヒはフルタカとともに列車へと向かう。

 クラックホーネットのいなくなった空はドローンが落とされることなく飛び回り戦闘の戦果その情報を集めるために魔都へと向かって飛んで行っていた。


「なぁアサヒ、ドローンすごい数だよな。空中でぶつかってよ頭の上に落ちてこないか心配だ」

「そう思うならポケットに手を突っ込んでいないで頭を守ればいいんじゃないか?」


 空を見上げ次々に飛んでいくドローンを追いかけるフルタカ。


「ところで、あれだけいた精鋭たちはどこ行ったんだ? あのでけぇ列車が来てからほとんど姿見なくなったな」

「ああ、指揮所は列車内の一室に移動したからな。いまだに魔都から襲ってくる生体兵器の撃退のために戦っている精鋭以外は皆列車に移動し帰還まで待機して休んでいるのだろう」


 回収された巨大な大砲、草薙の剣の上では精鋭たちが魔都を見ていた。

 アサヒとフルタカも遅れて草薙の剣の上に上がり魔都のほうを向く。


「高いな、あまり高いところは苦手なんだ。しかしここから魔都がよく見えるな。というか見ないと思った精鋭の大半はここにいたのか」

「でも見たところでよ、こっちに向かってくる生体兵器ぐらいしか見えないだろうよ。つうかこのデカい大砲は結局使ったのかよ?」


「使ったんじゃないか、わからないが。ところでフルタカ、ここから見てクラックホーネットは飛んでいないか?」

「飛んでいないこともないけどよ、でもそれだけでこっちに来る様子はないな。魔都の上を行ったり来た入りしてるよ。ここを出る前にもう一バトル置きそうだよな」


 双眼鏡を取り出しアサヒも魔都を見た。

 建物ほどの高さの上からでは魔都の中央の崩落は見ることはできないが、魔都から出てくる生体兵器をいち早く発見でき、一般兵たちはそこから向かってくる生体兵器の位置を戦っている精鋭に教えている。


「数を揃えてここへきそうか?」

「わからねぇよ、今のところはよその様子はないようだけどそうならないように祈りたいよな。ここまで全滅はしたくない」


「作業を手伝っている精鋭も、魔都からやってくる生体兵器相手に苦戦もしていないようだしここにいる俺たちが応援に行く必要もなさそうだ」

「そうみたいだな。お前とよキイを怪我させたあの大型もよ、ここから見たところ居ねぇみたいだし大丈夫じゃないか」


「あいつが何匹も現れたら、こうしてゆっくり資材の回収作業もできないだろ」

「まあな……あいつ強かったよな、単体で特定危険種? ギリ災害種くらいは行けたんじゃないか?」


「疲れていない万全の状態ならもう少しうまく戦えた」

「生体兵器でも負けず嫌いだよな。俺らはよ大型の討伐は専門外だろ」


 アサヒたちの背後の一般兵が騒ぐ。


「おい、あれを見ろ! 何かいるぞ!」

「西の空に生体兵器! 数は一、大きさは……デカい、大型……いや、あれは……」


「報告だ、司令部聞こえているか?」

「こっちに向かってきてる……あれは、あいつは」


 後ろから大きな声が聞こえてきてアサヒとフルタカは振り返ると、見張りの一般兵が魔都とは反対側の空を指さしている。

 フルタカも目を凝らしアサヒも双眼鏡を向けた。

 はっきりとしない報告だが次第に騒ぎは大きくなり、次第に魔都を見ていた皆が西の空を見る。

 視線の先には遠く空に浮かぶ黒い影。


「デカい災害種だ、まっすぐこっちへ向かってきている!」

「災害種、レットターゲット!」


 精鋭が増えたことにより目撃情報が増えていた巨大な飛行型生体兵器。

 遠くに見えていた影はみるみる大きくなり鉄蛇の真上を通過し魔都へと向かう。


「早い!」


 戦車、装甲車、対空砲を積んだトラックがエクエリを向けるが、砲塔を旋回させ狙いをつける前に巨体は通りすぎていく。

 後から強烈な風が吹き生体兵器の死骸や瓦礫、軽いトラックなどが地面を転がった。

 手すりに摑まり鉄蛇の上から落ちないように耐える精鋭たち、風が収まってからアサヒがその巨体の後姿を双眼鏡で追いかける。


「最後の飛行型の災害種、たった一匹で災害種扱いの蜻蛉型の巨大昆虫」

「シュトルム、クラックホーネットも倒したしよ。各地を自由に飛び回るあいつを倒すのもよ、もう時間の問題だよな」


「あれを倒すのは今の俺たちではないな。だが、きっとフルタカの言う通りあいつも近いうちに倒す時が来るだろう」

「そしたらよ、もう空の脅威に怯えることはないんだよな」


 二人の視線の先で巨体は魔都の上空を飛ぶクラックホーネットの残党へとまっすぐ飛んでいき6本の足で捕まえ捕食する。

 まともに統率の取れないクラックホーネットは巨獣に弄ばれるように弾かれ掴まり食われていく。

 それはクラックホーネットがたった一匹の生体兵器相手に、反撃する力が残っていないことを示していた。



 数日後、災害種クラックホーネットの討伐の報告が帰還した鉄蛇の精鋭たちの話などで各地のシェルターに届きどこもかしこも歓喜にわいていたころの話。

 二種類の災害種に襲われ破壊された廃シェルターハギに向かう十数代の装甲車。

 防壁や施設など破壊された箇所が少なく今でも機能する場所もあるため、お金がなくシェルターに移住できなかった者たちが住んでいる。

 その廃シェルターを一人の女性が多くの護衛を連れて元は中央区画だった場所へと向かっていた。

 ぞろぞろと嫌でも目立つ彼女たちから距離を取りシェルターの住人たちは屋内から遠巻きに監視し警戒している。


「何だい、あんたらは?」


 ハギの高層区画だった場所へとたどり着くと一団の前に立ちふさがる大柄の女性、その後ろに黒い刃のナイフを構えたつ人影が出迎える。


「そこで止まるんだ、それ以上近づいたらこの子らが飛び掛かるよ。少なくともあんたは道連れにできる」


 厚着をした大柄の女性は前に出ると腕を組み一団睨みつけ威圧感のある声で話しかけるも、気にせず一団を率いてきた背の低いこげ茶色の短い髪の女性は恭しく頭を下げた。


「私は王都の使いとしてまいりました、シュゴウベニと申します」

「王都の使いが何の様だい」


 胸元で煌めく金色の階級章がなければ少女と見間違えそうな女性は部下からタブレットを受け取りそれを操作する。

 王都と聞いて大柄の女性の後ろに控えていた者たちがいつでも戦えるように身構え一段と警戒の色を強くした。


「あなたたちに朗報よ、災害種クラックホーネットは倒されました。もう空の脅威に怯える必要はありません。そして、王都アマノガワシェルターはこの廃シェルターをシェルターに戻すことを決めました」

「……なんだって?」


「このシェルターを作り直すにあたってあなたたちはここを出ていく必要はありません、13年でだいぶ荒んでしまいましただ作り直せばいいこと。もちろんあなたたちには多かれ少なかれシェルター再建を手伝ってもらいます。そのために、今一度住人の登録をしたいから協力してもらえるでしょうか?」

「いまさら、なんでこのシェルターを直そうとしているんだい? 潰れたシェルターの修理なんてとんでもない費用が掛かるじゃないか」


「このあたりの最大の脅威クラックホーネットが倒されたからです。もっと言えばここは人が住んでいて建物やシェルター維持に重要な施設の破損度が低いこと、シェルターキノウラ、シェルターホウキの二つの開発系シェルターに近いこと。今後生体兵器と戦い生活を豊かにするため必要となる重要な複数のシェルターの中心にあり、物流を円滑に流すために必要だと思われていること。一度捨てられた廃シェルターを元通りに戻せるかの試験、再建の際生態兵器との戦闘が少ないと考えられていることの5点からです。再建の際このシェルターは昔の姿とは変わってしまいますが、生まれ変わったこのシェルターは多くの人で行きかう巨大なシェルターになることでしょう」

「私たちはまた普通の生活に戻れるのかい?」


「ええ、もちろん。希望とあれば出ていった住人を戻すことも視野に入れた計画です、シュトルム、クラックホーネットの空からの脅威が去った今、一般兵の大規模な移動は以前よりずっと危険度が減り、ハギシェルターは周囲のシェルターの協力を経て瞬く間に復興することでしょう」

「本当に、ここはシェルターに戻るんだね? 人の住めるきれいな街に戻るんだね?」


「王都、アマノガワシェルターの名に誓って、お約束します。ここは安全に人の住めるきれいなシェルターに生まれ変わることをお約束します」


 大柄な女性が王都の使者へと向かって歩きだす。

 同時に王都の使者も大柄の女性に向かって歩きだした。

 彼女たちが握手をすると大柄の女性の後ろにいた者たちがゆっくりとナイフを鞘へと納めていく。

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