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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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報告を待つ 1

 シェルターの中央に空を支える柱のような巨大な建物の立っている王都中央。

 その建物の通路をジャラジャラと腰につけた鍵束を鳴らし速足で歩くキサキは一つの部屋の前で立ち止まる。

 携帯端末を鏡代わりに身だしなみを整え扉をノックをし返事を待つ。


「誰ですか?」

「カガリ様。王都技術開発部八重桜隊隊長セングウキサキ、ただいま魔都侵攻部隊の駐屯地より帰りました!」


「おかえりなさい、鍵は開いています入ってきてくださいな」

「失礼します!」


 部屋の中から応答があり戸を開け中へと入ると出迎えるカガリに走りだして抱き着く。

 カガリの胸元に顔をうずめキサキは大きく息を吸うと、ゆっくりカガリから離れ姿勢を正した。


「おかえりなさいキサキ、元気いっぱいね。どうでしたか、演説のことハナビは機嫌を悪くしただろうけど協力してくれました?」

「ええすごく怒っていました。私どうにかされてしまうのかと身構えるほどに」


「そうでしょうね、ハナビは魔都攻略作戦には現状反対的でしたから。もう少し時間が立てば変わったのでしょうけど。とりあえず座って話をしましょうキサキ」


 カガリに連れられキサキはお茶とお菓子の用意してある席へと向かい腰を下ろす。

 二人は向かい合ってではなく隣り合って座ったがカガリはそれについては何も言わず話をつづけ、部屋の隅で待機していたカガリの部下がキサキの分のお茶を入れた。


「カガリ様のお名前を使って場を収めましたけど、大丈夫だったでしょうか?」

「ええ、かまいません。王都の人間が、それも王族の者が激励に来たというだけでこの作戦への期待度がどれほどのものかというものが伝わり一般兵の士気が上がりますから。それだけの価値はあります」


「ついでに激励と作戦説明だけでなく、篝火の説明にもカガリ様の名前を出したら協力してもくれました」

「王都のそれも王族、第三王女の立場の彼女にそれをやらせるだなんて命知らずね。いくら私の部下とはいえその大胆さが彼女の癇に触れると庇いきれない、苦情の一つでもあれば私はあなたを処分しなければならないのですよ? そのうち私の名前を使って好き勝手しそうで怖いわねキサキは、でも他に人とちゃんと話せる人はいないしこのまま使っていくしかないのだけど……」


「勝手なことをして、私は罰ですか?」

「そうね、少し勝手が過ぎるから再教育しておく必要はあるでしょうね。久々に会えたんですものそれも悪くないでしょう、二人っきりでゆっくり話もできますし。でもキサキはあの薬好きでしょう? 痛みによる恐怖の植え付けが目的で、それで言うとキサキには罰にならないのだけれども。それを褒美としたらあなたはどんどん勝手をしていくでしょう、悩ましいものです」


「大丈夫です、心の準備はできていますよ」

「普通なら血の気が引いて真っ青になるのに、キサキはにやけて高揚しちゃうんですものいじめがいがないわね。と、それは後にしてハナビが待っていた戦力の増強。偵察、主力、防衛、支援、輸送の5種の新型の戦闘車両の量産も決まりました。何か月かすれば他のシェルターにも配備できるでしょう。その時には売り込みにキサキにはまた働いてもらいますよ」


「開発が担当でしたけど、わかりました任せてください!」

「いい返事ね、ユユキやウシャクにもそのぐらい元気があるといいのだけども」


 カガリはお茶を飲み一息つきタブレットを操作しそれを横からキサキが覗く。

 タブレットには灰色の戦車の画像。

 車両設計と書かれた欄には妃のいる八重桜隊の名前。


「ほんともうすこし待てばより強化された兵器で戦えた、せっかく要望に応えて対空兵装も付け加えたのに。そうすれば今回の作戦での犠牲者減らせるというのに、何でそうしなかったのでしょうか?」

「簡単な話、王都の人間の身勝手というだけのこと。戦闘で戦車や装甲車が壊れれば次量産される車両がその分多く取引されること、一般兵は消耗品だと思われていること、精鋭を増やしたのはいいけど割と金がかかるからその口減らし、それを機に言うことを聞かない問題児の精鋭の処分を兼ねたってところでしょうね」


 タブレットをスライドさせると車体の性能説明文と試験運用時の戦闘結果が表示される。


「マクウチシェルターの時もそうだったけど、強い生体兵器と戦わせるから彼らは強いのであって連携も大事だけど練度も大事ってこと忘れられてるのよね」

「薔薇の隊もすべて魔都攻略戦につぎ込んでましたよね」


「5つの薔薇の部隊は一般兵の指揮の向上と作戦成功率の引き上げ。そもそも薔薇の部隊は災害種と戦う時のための精鋭なのだから。折角、時間と人と物を使って戦うのだから災害種の討伐は成功はしてもらわないと困るというはなしよ。今回の作戦で失敗した場合薔薇の隊の数が減って次に災害種が生まれてきた場合倒せるものが居なくなるでしょう。その時はまた王都が優秀だった精鋭を選んで薔薇の隊を増やす」

「ずいぶん勝手な話なんですね」


「えぇ、成功しようが失敗しようが王都には関係がないのでしょうね。もっと言えば王都以外のシェルターなんてどうなっても構わないでしょうから」

「流石王都」


「ともあれ今頃、魔都では作戦も終了し撤退の準備をしているころでしょう。成功か失敗か、手際が良ければアンテナ車を使ってシェルター間をメールを少しずつ転送し、明日くらいには王都に居ても作戦報告が聞けるでしょう」

「本当に通信機器の衰退は由々しき問題です」


「無線を使えば生体兵器を引き付けてしまうし、地上構造物は破壊される可能性がある。地下に線を埋めれば他のシェルターともやり取りはできるけど、工事は時間がかかるし生体兵器がうよつく状態でそれは難しいものね」

「生体兵器をひきつけるから最低限のまま通信範囲を拡張できず、いまだ情報が届くまで時間がかかる。不便です」


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