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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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乾杯 3

 アサヒが指揮所でレンカと話していると、一般兵に案内され白い制服の褐色肌の男女を筆頭に複数の精鋭が帰ってくる。

 彼らは皆、制服は泥だらけで何人かは荷物もエクエリも持っていない状態だったが誰も疲弊した表情はなく笑いあい誇らしげに凱旋してきた。


「どうも、黄薔薇隊およびその他もろもろただいま魔都より帰還しました!」


 超大型のエクエリを部下に渡すとマホロはアサヒたちのほうへと向かってくる。


「お疲れさまです、現場を担当している躑躅隊の隊長です。疲れているでしょう、食べ物も水もご自由に向こうで休んでいてください。その前に各隊の隊長は報告を」


 黄薔薇隊の隊長のもとへと躑躅隊の女性隊長が迎え、足が悪いのか片方の足を少し引きずってマホロへと話しかけた。


「帰ってきた他の薔薇の隊は? 俺らは何番目ですか?」

「……帰ってきている薔薇の隊は、青薔薇隊とあなたたち黄薔薇隊だけだ」


 そのままレンカは一呼吸置き彼女の話に近くにいた精鋭たちは皆耳を傾ける。


「……白薔薇隊は篝火起動後に帰還不能の全滅の報告、紫薔薇隊も同様に篝火起動後に同伴していた一般兵から精鋭全滅との報告があった。橙薔薇隊の帰還を待つが、ここはまだ篝火を作動させていない。ここの帰還は絶望的かもしれない。一応はあと二日待つ、それで連絡がなければ魔都攻略作戦は終了し帰還する」


 レンカは重々しく答えタブレットをマホロへと差し出す。

 タブレットの画面には精鋭の名前が連なりいくつかの隊の名前には赤い線が入っている。


「帰還した隊の隊長はサインを、終わったら他の隊に渡していってくれ。どの隊がいるのかの確認が取りたい」

「わかった、まだ警戒状態みたいだけど隊員たちは自由時間でいいのか? バッテリーさえもらえれば戦えるんだけど、ほら死にかけの生体兵器もうろうろしてるだろ」


「ああ、私たち拠点防衛の精鋭が警戒と見張りは受け持つ。何かあれば協力してもらうがそれまで自由時間でいい。疲れただろう休んでいてくれ」

「わかった。みんな解散だ、お疲れ食べるなり休むなり自由にしていていいそうだ。ただし、敵が襲ってきたら戦闘らしい」


 話を聞いて精鋭たち返事を返すとぞろぞろと食事へと向かっていき、アサヒはマホロのもとへと向かうと頭を下げた。


「黄薔薇隊に生体兵器の討伐を任せてすまない。同じ薔薇の隊なのに逃げるようなことになってしまって」

「ああ、別に大丈夫ですよ頭を上げてください。俺たち以外にも大勢精鋭もいたし黄薔薇隊だけで倒したってわけじゃない。それにその腕……手負いじゃ倒せる敵も倒せないでしょう。でもまぁ、あのあと同じ型のがもう一匹出てきて、バッテリーがなくなっててんやわんやだったんですから」


「もう一匹あいつが、どうやって倒した? すでにバッテリーはなくなったのだろ?」

「ああ、それなら……おっと?」


 マホロの話を遮って二人の話に朝顔隊の隊長が混じってくると、彼女は得意げに話し始める。


「蒲公英隊が集めてきたなんかよくわからない粘着性のもので顎を固定したの。そしたらあのでかいやつ、攻撃手段失ったみたいで必死になって顎を開こうとしてさ。体当たりでもひっかきでも強力なのにずっと顎にこだわって、そこをみんなのエクエリのバッテリーをこの人に預けて総攻撃。しぶとかったけど私らのバッテリーのおかげで倒したってわけさ……誰後ろから押すの?」


 朝顔隊の隊長を押しのけ蒲公英隊が加わり、ヘルメットを脱ぎわきの抱えた少女は得意げに話し始めた。


「魔都の、出口のそばにいた、あの粘着性の、とりもちをマントに包んで拾ってきた。粘着性の強度、自ら実証済みだし、そしたらみんなと合流した。その後、もういっぴき出てきて、そいつの顎に、とりもち団子はっつけて、開かないようにした。総攻撃はしてない、超大型のエクエリで倒してもらっただけ、攻撃は全部黄薔薇隊任せ。MVPは私たち」


 二人の話を聞いて肩をすくめて顔を見合わせるマホロとアサヒ。


「……まぁ、そんな感じです。俺たちの戦いは」

「……なるほどよくわかった。では俺は戻らせてもらう、負傷した隊員の具合も見ないといけないしな。疲れてるだろうから休んでくれ」


 お互い軽く手を振り別れる。


 来た道を戻りアサヒが装甲バスへと帰ってくると、テーブル席でくつろいでいるキイとフルタカのもとへと向かう。


「おかえり、どうしたのさ。暗い顔して、とりあえずこっちに来なよアサヒ」

「いや、戻ってきた薔薇の隊が今のところ俺たちと黄薔薇隊だけだ」


「黄薔薇隊が返ってきたってことは他の精鋭も戻ってきたんだよね」

「そうだ、朝顔隊や鈴蘭隊を引き連れて戻ってきた。とりあえず、クラックホーネットの残党がおそってきても返り討ちにできる戦力にはなった。ここぜ俺らが死ぬなんてことはないだろう」


「なら、もう酒を飲んでもいいだろう?」

「なんでそうなる」


「どうせ私は戦力にはならないさ、この足だからね。みんなで無事に戻ってきたら飲もうって言ったろ、飲もうじゃないか」

「開き直ったか……お前は足を失ったんだからもう少しおとなしくしてろ。シェルターに帰ったら真っ先にお前の治療をさせる」


「アサヒも重症じゃないか、私の心配してる場合じゃないだろうに。さぁさぁ、そんなことよりさ。早くしようじゃないか」

「まったく……フルタカも止めろ」


 すでにテーブルに置かれたコップには酒が次いであり、キイがコップを掲げると二人もそれに続く。


「多くの犠牲を払ったけども過去への復讐、いま命があることと私たちの勝利に。かんぱい」

「「乾杯」」


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