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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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終止符を 2

 フルタカは大型のエクエリを構えアサヒに襲い掛かる生体兵器に狙いをつける。


「フルタカ上を、そこの死骸の上にいる。気を付けて、羽が残ってるから飛ぶかもしれない」


 キイの指さす先、大型の死骸の上にもう一匹小型の生体兵器が現れ、アサヒたちを見ると燃え残った羽を広げ重低音の羽音を立て威嚇をした。


「一匹じゃないのか」


 さらに数匹、死に底なったクラックホーネットの生き残りが出てくる。

 何とか片腕で一匹を倒したアサヒがフルタカのほうへと向かっていく。


「ミサイルの熱で羽だけ燃えてよ、ぎりぎり焼死しなかったって感じか」

「死ぬ手前までのダメージだったけど回復したんだろうね」

「キイも動けないだろうが戦えるか? 自分の身を守る程度でいい」


 座ったまま小型のエクエリを構えるキイ。

 クラックホーネットたちは一斉にとびかかってくるが相手は死にかけで弱り切った生体兵器、エクエリさえあればあしらうのは容易だった。

 バッテリー内のエネルギーが残っているうちは。


「あれっ、おやや……弾が出ない。二人ともごめん。バッテリー切れだ戦えなくなった。たすけて」

「俺もよバッテリーが10パー切った、俺もよもうすぐ戦えなくなる。どうするよアサヒ」


 怪我をしていないほうのキイの足が噛まれたが、弱った小型の生体兵器程度の攻撃では強化繊維は傷つかない。

 そういってキイに近づいてきた小型の生体兵器を、フルスイングの大型のエクエリでぶっ叩いて追い払うフルタカ。


「焼けた部分は脆くなってるから、倒せなくはないけどよ。こいつら倒してないで進んだ方がいいか?」

「ああ、もう敷地内に入っているから。とりあえずは駐車場が近い、装甲バスのほうへと行こう」


 戦闘をあきらめフルタカはキイを担ぐと拠点内部へと向かって歩き出すが、死んでいたと思われた目の前の巨体が動き出す。

 触角も燃え顔の半分も黒く焼け光沢はない巨体は焼けた跡のほかに攻撃を受けた後もあり、折れた足で立ち上がりゆっくりアサヒたちのほうへと方向転換をしていく。


「なんで俺らが来たらこいつら襲ってくるんだよ。この道一般兵も逃げたときに使った道だろ」

「ダメージを受けこいつらが眠って回復していたところを、先に行った一般兵たちが通りかかったことで目を覚まし襲い掛かってきたんだろうな」


「なんだよ、別の道だったら変わってたのかよ?」

「さぁ、同じだったかもな。俺もバッテリーもなくなった替えも使い切った、強引にでもとっとと進もう。フルタカ、目の前のあいつをなんとかできるか?」


 片足で立たせたキイをアサヒに渡すとフルタカは大型のエクエリをこちらへと向かってゆっくり動き出す巨体へとむける。


「私を物みたいに扱わないでおくれよ」

「飛んだり跳ねたりできなくなった今のお前は荷物と変わらないだろ。バッテリーもなくなったし」


「まだ私には目があるよ」

「取扱注意だな、今その力は必要ない。フルタカがあの大型を倒したら小型を振り切るため一気に駆け抜けるしっかりつかまっていろ」


 アサヒは片腕で彼女を抱きかかえ走り出すタイミングを見計らっていると、横から飛び掛かってきた小型の体当たりを受けて転倒する。

 投げ出されたキイは地面を転がり空を見上げた。


「あれ、空?」

「避けろキイ!」


 キイが回避しようと体をよじるがフルタカと戦う大型の生体兵器に足に蹴飛ばされ、吹っ飛ばされ地面を転がり他の生体兵器の死骸にぶつかりむせこむ。

 フルタカがキイのもとへと駆け寄ると孤立した彼女に飛び掛かる小型生体兵器を大型のエクエリでぶん殴り追い払う。


「無事か?」

「なんとか、ありがと」


 アサヒも飛び掛かってきた生体兵器をバッテリー切れの小型のエクエリで滅多打ちにし、頭の外骨格を破壊し仕留めると彼女を掴んで後ろに下がっていく。


「フルタカまだ戦えるか?」

「数発、炸裂榴弾ならよ一発撃てるか怪しい」


「弱った小型は脅威にならない、あの大型だけなんとかしてくれ」

「その割にはよ、息がだいぶ上がってるけど大丈夫かよ。その脅威にならない相手に吹っ飛ばされてキイを危険目に合わせたのは誰だよ」


「対空攻撃を受けたらしき頭の傷口に見えるだろ、炸裂榴弾を撃ちこめ。そうすれば倒せるはずだ、たとえ死ななくても頭を失ったやつが追ってくることはない」

「わかった。でも攻撃するつってもよ、ここじゃ角度が悪くてよ動く的に当てられる気がしない」


 こうしている間も大型の生体兵器は折れた足で三人のもとへと向かおうとしており、小型達も取り囲むように移動している。


「キイの目の力を借りる。大型の気を引ければいい」

「大丈夫かよ、周りが見えなくなるぞ?」


 フルタカは預かっていたスキットルをキイへと返す。



「え、なんだい?」

「それを飲んでいいから目の力を貸せってことだよ」


 アサヒはしゃがみこみキイの目を見る。

 フルタカも大型のエクエリを大型に向け構えてはいるが、撃てるのが数発と大型の生体兵器を相手にするには心もとなく引き金に指をかけてはいない。


「俺が囮になる。キイ、力の底上げ頼めるか」

「わかった、行くよ……」


 一つ息をつきキイはアサヒの手を握る。


「その身を私にためにつかい、私たちが生き残るために戦って」

「ああ」


 キイから離れたアサヒは大型のほうへと向かって走り出す。

 迫ってきた小型の頭と胸の間の関節部を力の限り踏みつけるとバキリと音を立てて砕け動かなくなる。


「不安ならそれでも飲んでろよ」

「ば、馬鹿にしないでおくれ。突然過ぎて雰囲気作れなくてちゃんと魅了がかかったか不安なんだよ」


 もう一度息を吸いキイはフルタカを見上げる。


「フルタカ、アサヒと二人で協力して私のためにあの大型の生体兵器を倒して。この戦いに終止符を」

「やってやるよ」

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