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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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魔都を抜けて 7

 攻撃に驚き巨体は今までにないくらいの遠くへと跳び距離を取る。


「死なないのかよ、大ダメージ与えたと思ったんだがまだ動けそうだなおい」

「あぶないことするな、攻撃外してたら食いちぎられるか頭踏まれて死んでもおかしくない距離だった」


 舌打ちをし巨体を追いかけるフルタカに鈴蘭隊の隊長が駆け寄ってくる。


「俺らがどう倒すか悩んでいる間ずっと生体兵器と1メートル未満の距離で攻防してたあんたに言われたくねぇよ。それによここでへまするなら薔薇の精鋭に呼ばれないって」

「というか、さっきの人もあなたもさ無理に前出ないほうがいいんじゃない? 普通に戦えばいいじゃん」


「悪いがよ、キイも俺も生体兵器の相手は近距離戦が得意だ。あいつは失敗したがよ、ついでに言うとよ、もうバッテリーがほとんど空だ」

「その大型のエクエリで接近戦? バッテリーなら向こうに壊れた強化外骨格がいっぱい転がってるからそこから回収するといいんじゃない。血まみれだろうけど」


「接近戦は別に変な話じゃないだろよ、重さに耐えれる筋力と体力さえあればこれも小型のエクエリと同じように扱えるだろ」

「すぐに疲れそうだしその長物、狭いとこで戦えないでしょ」


「だからよ、こうして開けた場所で戦ってるだろ」

「まいいや、来るよ。深手を負って何ができるかわからないけど、弱った様子はない。ごめん適当言った、昆虫型は表情でないからわからない」


 生体兵器はキイを運ぶアサヒのほうを向く。

 そして羽を広げるとエクエリを撃つフルタカと鈴蘭隊を飛び越えていきアサヒへと走り出す。


「そっちかよ、お前の相手はこっちだろ。くそっ止まらない」

「追うよ。見た感じだと弱ってないみたいだね、もう何発か今の傷穴から撃ちこまないと動きは止まらないか。さっきのもっかいやるか? 」


 フルタカたちは生体兵器を追いかけ、追われているアサヒは生体兵器の接近に舌打ちをし片手でエクエリを構えて引き金を引く。


「こっちに来るか、小型のエクエリしかないってのに」

「お願いだからさ私を置いていかないでね」


「キイもフルタカも隊長の俺が守るのが仕事だ、見捨てない」

「頼むよ」


 背負ったキイが強くアサヒの体を掴む。

 彼女を抱え直すと振り返り生体兵器と向き合うが、生体兵器は一度止まると急に横に跳ねアサヒの側面に回り込んできた。

 その風圧で人を背負った瓦礫の上の不安定な体が揺れる。


「くそがっ!」


 アサヒは倒れる手前、力の限りキイを投げ捨てた。

 彼女を投げる際伸ばした腕を長い大きな顎が滑り込んできて即座に挟む。

 振り回されることなくバツンと音を立て強化繊維ごと手首が切断される。


「アサヒ、腕っ!」


 キイが悲鳴のような声で叫ぶ。

 鮮血を流しながら無事なほうの腕で反撃、当然効き目は薄く二度目の攻撃が迫り首を狙われとっさに鮮血のながれる腕を前に出す。

 肘まで失いながらもアサヒは引き金を引き続けたが生体兵器は止まらない。



 追いついてきたフルタカたちはアサヒの傷の具合を見て顔をしかめ生体兵器を睨む。


「くそ、アサヒまでやられたのかよ」


 そこへ複数の光の弾が飛来し生体兵器が後ろへと跳躍。

 弾が飛んできた方向をみれば魔都から出てきた新たな精鋭たちがまっすぐこちらへと向かってきている。


「他の精鋭も来た、これで楽になる。すこし守るから止血してちゃんと治療をしろよ、アサヒ!」

「ああ、まかせる」


 鈴蘭隊とフルタカが前に出てきて生体兵器を牽制し、アサヒはエクエリをしまって下がるとしゃがみ鞄の中を漁った。

 四つん這いになって瓦礫の上を歩いてきたキイがアサヒの傷をみて泣きつく。


「ああ、あああ、こんなになって。私のせいで」

「泣くのは後にしてくれ、キイ。傷を縛って俺がお前にしたように薬を塗ってくれ」


「そ、そうだよね。今やるから、縛るから。わたしが怪我したせいで」

「優しく頼む」


 手が震えたままアサヒの傷口を縛り掬った軟膏を激しく塗りたくり荒っぽく治療をするキイ。

 激痛から意識を逸らすため増援に来てくれた精鋭のほうを見る。

 大型のエクエリを持つ見覚えのある隊服がいくつか見え、アサヒはほっと胸をなでおろす。


「蒲公英隊が連れてきたのか……あれは、黄薔薇隊か? 彼らも車両を失って徒歩で魔都を彷徨ってたのか」

「治療さ、お、おわったけど、腕は大丈夫かい? わたし、わたしさ……」


「大丈夫だ落ち着いてくれ。キイと同じで、見た目ほど痛みはない。それでなんだ?」

「そのさ、私さこの足じゃ逃げられないからさ。これ以上怪我する前に荷物になるから私を置いて……」


 言い切る前に彼女を頭を強く押し付ける。


「うが、何するのさ」

「目を向けるな、感情が不安定な今お前の目が力を使ったらお前をここに置いていくことになるだろ。置いていかないでって自分で言ったんだ。他の隊ともう合流もした、大丈夫だ蹴りはすぐにつく」


 キイが怒るがアサヒは立ち上がり彼女を背負う。


「狙われないよう向こうと合流する」

「フルタカたちも疲れてる休ませてあげなきゃ」


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