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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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魔都を抜けて 6

 

 キイの負傷を見て生体兵器から距離を取る蒲公英隊。

 フルタカの援護で大型の生体兵器を追い払い、アサヒが唇をかみ悲鳴を押さえ失った足を押さえうずくまるキイのもとへと駆け寄る。

 彼女は瓦礫のくぼみへと身を隠し駆け付けたアサヒを見て、涙を浮かべた目でアサヒを見て赤く染まった手を伸ばす。


「見せろ。傷を縛って血を止めるから」

「ごめんよ、避ける自信はあったんだけど、地面に足取られちゃって、ついてないね私」


 謝るキイの足を持ち上げ傷口を見た。

 強化繊維も骨もたやすく切られ扉に挟まれ千切れたような無断な断面から鮮血があふれている。


「これから縛るが少し痛むぞ、血が勢いよく出ていたら止血の軟膏が濡れないからな」

「もう、洒落にならないくらい痛いから変わらないよぉ」


 キイの血にまみれた手をどけ脛に残るブーツの残りはしを脱がせると破けた裾をめくりポケットから取り出したハンカチを広げ彼女の切断面を強く縛った。

 鈴蘭隊が再び前に出てフルタカとともに生体兵器と対峙し注意をひき、アサヒのもとへ蒲公英隊がかけよって来て地面に倒れるキイの状態を見る。


「その人の傷の、様子は、大丈夫?」

「足がバッサリ切られて、傷口は縛ったがそれでも血は止まらない」


 蒲公英隊が出血を止める傷薬を差し出す。

 血と反応し固まる軟膏状の薬。


「これ、つかって。傷口埋めて、瘡蓋つくるやつ。切断面でも、血を止めるくらいできるから」

「助かる、手持ちのじゃ量が不安だった。キイ、さらに痛むが我慢しろ」


 滝のように汗を流すキイはアサヒの上着の裾を掴み何度も頷く。

 傷口を強く縛り断面から流れる血が抑え気味になると、アサヒは鞄から出した軟膏と蒲公英隊からもらった軟膏を開け中身を大量を掬い上げるとキイの足に塗る。

 痛みで跳ね上がるように反応を見せるがそれでも彼女は声は押し殺した。



 フルタカは鈴蘭隊と合流し巨体を追う。

 大型の生体兵器は精鋭の脅威を認識し排除のために、先ほどから攻撃を避けながら反撃を加えてくる鈴蘭隊を集中的に狙っている。

 鈴蘭隊の隊員とフルタカは戦っている生体兵器を囲むように移動するが、鈴蘭隊の隊長を常に二人の正面になるように移動し位置を変え盾にしていた。


「あの隊長さんが真っ向から戦っているからよ、ここからじゃ頭を狙えないな。鈴蘭隊の隊長は大丈夫なのかよ。さっきからずっとあんな距離で」

「うちの隊長はいつもこんなことばっかりです。何度言っても一人で突っ込んでいって、死にに行くような戦いをしている」


 生体兵器は顎を狙われると羽を広げ大きく後ろに飛び、着地と同時に一気に瓦礫を巻き上げ地面を走って即座に戻ってくる。

 狙った獲物を啄むように顎を閉じそれを鈴蘭隊の隊長は不安定な瓦礫の山の上でアクロバットし回避。

 怪物と化け物じみた人の動きを見ながらフルタカは隙を伺う鈴蘭隊の男性隊員の横まで歩み寄る。


「大変だなそういう隊長はよ」

「まったくです、援護する身にもなってもらいたい。ただでさえ一人になった負担が増しているっていうのに」


 ちらりとキイの手当てに向かったアサヒのほうを見みた。

 戦闘から離れた蒲公英隊は魔都へと向かって走って行き、アサヒはキイを背負って安全な場所へと向かって走っていく。

 エクエリを構えなおすと唯一の武器である顎への攻撃を嫌がり逃げる巨体へと狙いをつける。


「鈴蘭の隊長さんよ、一度離れてくれ。炸裂榴弾を撃ちたい。ダメージを与えて動きがよ鈍くなった方が戦いやすいだろ」

「あ? 今ここから離れたら無防備な向こうに行っちまうかもしれないよ、いいのそれでも。今戦ってる私が視界を私が塞いでいる状態だけど、私が離れれば周囲の状態を見渡すことで向こうが狙われるよ、いや実際知らんけど」


 フルタカの声に振り返ることなく生体兵器の顎の攻撃を回避を続けながら神とスカートを揺らし鈴蘭隊の隊長は答えた。


「ならよもっと、遠くに、魔都のほうまで後退させられないか? じゃないとこの距離だとよ、やられたキイが戦闘の巻き添えを受けちまう」

「やってみるけど、戦ってるの私らだけだろ? わたしは今こうやって戦うだけで精いっぱいなんだけど、どうするの、この位置変わってくれるの?」


「い、いや、俺にはその動き無理だ。その調子で何とかよ、できないのか」

「じゃあ考えてよなんとかする方法をさ!」


 錆びた鉄骨だろうが朽ちたコンクリートの塊だろうがその大きな顎の前では等しく脆い。

 ふいに生体兵器の顎が鈴蘭隊の隊長から小型のエクエリを奪い取ると、それを顎に挟んだまま後ろへと飛んだ。

 しかし彼女の反応は軽く大きく後ろに跳ね飛んで同じく距離を取った。


「お前のよこせ!」

「は、はい!」


 彼女は後ろで援護しようと立っていた隊員に叫ぶと、彼が投げた小型のエクエリを受け取り再び向かってきた巨体と戦闘を始める。


「……わかった。そのままよ、少し頼む。キイの敵を討つ」


 突然出てきたフルタカに驚き羽を広げ再び距離を取ろうと飛ぼうとするが、羽を広げ宙を舞ったとたんにフルタカは大型のエクエリを構えた。


「くらえ!」


 引き金を引くと光の弾が発射される。

 弾種は炸裂榴弾、柔らかい部位に限定されるが当たれば広い範囲にダメージを与える特殊弾。


 一発は羽に当たり弾けるように広がるとバランスを崩し不安定な飛行をして地面に降りた。

 二発目は鈴蘭隊の隊長が開けた頭の傷に撃ちこもうとしたが避けられ硬い外骨格に当たり効果が出なかった。


 フルタカの攻撃に脅威度を上げたハンミョウはダメージを受けた羽を広げ飛び掛かってくる。

 その攻撃を逃げるではなくぎりぎりで躱そうとするフルタカ、巨体が頭から突っ込んでくるが着地のため姿勢を変えたその体に狙いをつける。


 三発目は光の弾は複数の足の付け根の一つの傷口へと吸い込まれていく。


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