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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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魔都を抜けて 5

 大型の生体兵器は精鋭たちを追い越し後ろに飛んだため、拠点へと向かって走る一般兵たちのほうへと飛んでいく。

 そして大型の生体兵器は着地地点にいた逃げる一般兵を踏みつぶす。

 大型の生体兵器の勢いのついたその重量、地面を抉り半壊の建物すら簡単に破壊するその力の前に一般兵たちはなすすべない。

 離れたところにいるアサヒたちは重たい音と若干の地面の揺れを感じた。


「あんにゃろ、よくも!」


 生体兵器を追って鈴蘭隊が飛び出す。

 巨体は悲鳴とうめき声をあげる足元には目もくれず、向かってくる精鋭に向かって大きな顎を広げ威嚇。

 一般兵をひきつれ拠点へと向かって走っていた精鋭たちが生体兵器を追い払い再びハンミョウは精鋭たちから距離を取る。


「待て、なるべく距離を取って戦うんだ。相手は甲虫、ただでさえ普通の生体兵器より硬い。間合いに入るのは危険すぎる、近づくのは危険だ距離を取れ!」

「つっても、懐に入らないとあの硬い体を砕くのは難しいだろうが! 大型ならば小型で倒すのに時間がかかる、そんなことしている間に一般兵が全滅するぞ!」


 アサヒの制止を振り切り鈴蘭隊は走り出すと、大型の生体兵器とは思えない素早い動きで迎え撃つ。

 まるで鋏と閉じるようにバクンバクンとおぞましい音を立てて閉じる顎をエクエリで攻撃をしながら身軽に回避する鈴蘭隊の隊長。


「すごいけど、援護しないと、やられる。でも大型のエクエリが、火力が足りない、どうするの青薔薇隊?」

「助けるに決まってる。蒲公英隊は右から俺らは左から背後を狙う」


 鈴蘭隊が注意を引いている隙に蒲公英隊と青薔薇隊は走り出す。

 小型のエクエリの攻撃すら嫌がる巨体は挟み込むように動くアサヒたちを見てさらに逃げるように移動する。


「うごきが早い。追うだけで精一杯さ」

「しかし逃げてばかりだ、顎への攻撃を嫌がっているように見える。このまま攻撃させずダメージを蓄積させていく」

「俺のエクエリ重いんだ、走り続けるのは辛いってのをよ忘れるなよな」


 動ける一般兵たちは拠点を目指してまた走りだしていた、ただし彼らはパニックを起こしており隊列も組まず周囲の確認も怠ってバラバラに走っていて拠点へ向かう役目の精鋭たちが慌てて追いかけている。

 そんな彼らに再び襲い掛からないようにアサヒたちは一生懸命生体兵器の気を引く。

 幸いにも鈴蘭隊が目下最大の脅威なようで生体兵器はその排除に忙しく襲いに行く様子はない。


「鈴蘭隊がひきつけてくれてるね。なんであれでやられないのか」

「だがそれも持たない、一般兵が拠点へと行くまで今度は俺らで引き付ける」


 フルタカを援護に残しアサヒとキイは生体兵器へと向かう。

 少しの間生体兵器の気を引いていた鈴蘭隊の隊長も体力の限界を迎え一度身を引く。

 動きも攻撃の速度も速い生体兵器だが武器は鋸刃の顎のみ、巨体ということもあって攻撃が当たらないということもない。


 近場で戦っていた鈴蘭隊の攻撃で硬い頭の一部に穴が開いている。

 攻撃を避けながら同じ個所を攻撃し続けていたのかとアサヒは感心するも、彼女のカバーに部下の男性が前に出て戦っていてそれを見ていたキイがつぶやく。


「これなら顎に気を付けて、取り付いたほうが早いような気がするねぇ」

「行けるか? 足を切れば動きも遅くなる、だがあの速さだ回り込んでも距離を取られるぞ」


「倒すためなら何でもやっては見るさ、だめなら助けておくれ」

「頼む」


 キイは荷物から黒い刀を抜き生体兵器へと向かって真っすぐ走り出した。

 それは今までとは違く瞬発力に振り切り放たれた矢のように走るキイは、白薔薇隊からこちらを向き閉じる顎を躱して頭に下へと潜り込むと、その刀身を足の付け根につき差し。

 刀を深くつき差すと小型のエクエリを構えその周囲へと撃ち込んだ。


 キイの攻撃を受け黙ってやられるわけもなく、ジグザグに走り回りキイを振り落とそうとするが、彼女は柄にしがみつき必死に耐える。


「キイ、無理なら離れろ!」

「無理だよ、ちょいとこれは降りるとかそういうんじゃ。思ったより関節が硬い、ちぎれなかった」


 彼女に当たる可能性があり暴れている間にバッテリーを替え反撃の隙を伺うアサヒたち。

 キイは刀を握りしめ生体兵器の暴れるがままに振り回されていたが、その頼りにしていた刀が周囲を攻撃し傷穴を広げようとしたことから生体兵器の体から抜ける。


「ヤッバ!」


 刀を手放し頭を守り瓦礫だらけの地面を転がる彼女を狙って顎が開くがアサヒとフルタカ、鈴欄隊、蒲公英隊の援護でその鋸刃に挟まれることはなく地面に落ちた。


「いてて、助かったよ。地面転がって目がまわちった」

「キイ、早くこっちへ。ボサっとしてるな」


 暴れまわる生体兵器に再度接近するのは危険と判断し、キイはエクエリで反撃しながら一度距離を取ろうとする。

 しかし、踏み出そうとした足が上がらなかった。


「嘘でしょ」


 見れば着地した場所が悪く彼女の足が瓦礫の間に挟まっていて、慌てて瓦礫の中から足を引き抜く。

 バランスを崩し倒れ転がりながら攻撃を避けるキイだったが、大型の生体兵器の鋸刃のような彼女の顎が足首をとらえ持ち上げた。


「あ、ちょっとまった」


 逆さ吊りになるキイを助けるためフルタカが、大型のエクエリで生体兵器を狙うが攻撃を受けても意にも返さず彼女の足を挟んだまま羽を広げる。


「何やってんだよ!」


 フルタカは硬い頭部から腹部へと狙いを変えその一撃は巨体に次々と光の弾を当てるが、それでも動きは止まらない。

 巨体は距離を取るため羽を羽ばたかせ後ろに飛ぶと直後、バツンッと大きな音を立て強化繊維がちぎれ宙づりになっていたキイが地面の落ちる。


「キイ!!」


 飛翔する生体兵器を狙っていたフルタカの大型のエクエリの銃身に回転し鮮血を流す重たいブーツの切れ端がぶつかった。


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