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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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魔都を抜けて 4

 フルタカが一般兵を連れ落ちたクラックホーネットの死を確認しに行き、アサヒは戦闘に向かった精鋭たちを呼び戻し報告を待つ。

 脱出の状況を見に行くためにとりもちの方へと向かっていったキイが小走りで戻ってくるとアサヒは尋ねる。


「さっきと今の戦闘でのけが人は?」

「墜落してきたクラックホーネットや建物の破片に当たり死者が三人、軽傷者が十二人、重傷者が八人くらい。動けない一般兵を狙って飛んできた方向から攻撃を受け進行方向に落下したからねぇ」


「そうか、死者と重傷者を担いで撤退はできるか?」

「篝火運搬用に身に着けていた強化外骨格があるから、負傷者を運んでも走る速度が落ちることはないでしょ。戦闘にならなければ大丈夫さ」


「なら全員とりもちからの脱出次第、このまま進んで魔都を出る」

「了解。しっかし行きより帰りのほうが生体兵器との接敵率多いね、嫌になっちまうよ。バッテリーも残り少ないってのにさ」


「帰りは徒歩で車両で移動するときより時間がかかってるし、行きは先に魔都へと向かった精鋭たちの陽動があったからな。それがなくなったから生体兵器たちが戦闘音を聞いてこちらへと向かってきたんだろうな」

「それじゃ、次が来る前にさっさと移動しようじゃないか」


 一般兵たち全員がとりもちから脱出し負傷者を背負って再び走り出す。

 しかし救出に時間がかかったことでその周囲には多くの生体兵器が集まってきていた。

 そして魔都内を吹き抜ける風によって返り討ちにあった生体兵器たちの臭いは、さらに多くの生体兵器のもとへと届く。



 複数の小型の生体兵器と戦いながら走っていた青薔薇隊たちが建物の瓦礫を超えると、周囲の建物はいくつかを残してすべて崩れ急に高い建物が消え開けた土地に出る。


「魔都を抜けたか! やっと建物から落ちてくる生体兵器を警戒しないで済む、一般兵たちの負担も減るだろう」

「といってもよ、クラックホーネットは警戒しないといけないんだけどな。見た限りだと空にはいないな、魔都に入るときよあいつらがわんさか襲ってくるもんだと思ってたんだがな」


「一度休憩しよう。見晴らしがよくなった分、クラックホーネットに見つかれば一気に囲まれる」

「あと一息走るだけだけどやっぱ簡単にはいかないよな。まぁ、さすがに腕が付かれちまったよ」


「何よりキイが無言だ。さすがに連日走り疲れたようだ」

「どおりでそれでかよ、静かだと思ったぜ」


 指示を出し一団は外が見える建物の中で休む。

 あと一息で精鋭たちもここから離れられるということで明るく、拠点へと帰れるということもあり一般兵隊の士気は高い。

 建物の上の階へと向かいフルタカは窓もとへ向かうと双眼鏡を使って魔都の外の様子を見ていた。


「拠点の様子はここから見えるか?」


 遠くに見える煙を見ていたアサヒがフルタカに尋ねる。

 双眼鏡を下ろしフルタカは窓のそばに腰を下ろす。


「ああばっちり。戦闘は終わっているみたいだが拠点の周囲はよ、生体兵器の死骸だらけだ。黒焦げやバラバラでよくわからないがよ、特徴的にクラックホーネットだろうな」

「基地内の一般兵か精鋭は見えるか? 動いている車両でもいい、今人がいる痕跡は」


「流石に見えるとこにはいないな……それとよアサヒ。バリケードや仮設の建物はさておきよ拠点にあったドームがよ崩れているぜ、もしかしたらあの拠点を放棄して逃げたのかも」

「そうか。でもいい、一度拠点へと帰る。人は居なくても車両があるだろうし、バッテリーにしろ食料にしろ今の俺達には必要だ」


「確かに、シェルターへ帰るにもこのまま徒歩は辛いよな。それに崩れたとはいえよ、ドームに避難している者がいるのかもしれないしな」

「さて、それじゃ。最後のひとっ走り行くとするか。そうだこの付近の生体兵器は」


「右も左も影も形もねぇよ、瓦礫の下に隠れていない限りは安心して大丈夫だ」

「そうかわかった、ではいこう」


 休憩が済み建物の外に出る。

 偶然の接敵と背後から追ってくる生体兵器に備え、進行方向の前と後ろに精鋭を配置し走り出す。

 建物出て走り出したすぐの出来事、背後の破壊音に振り返った殿の精鋭が叫ぶ。

 先程休憩していた建物の中から大型の生体兵器が飛び出てきていた。


「後方に生体兵器! 大型!」

「ハンミョウ!」


 赤みがかった光沢をもつ黒く大きな巨体、長い脚、荒いのこぎりのようなギザギザのある大きな顎。

 黒い巨体もその臭いを嗅ぎつけ移動を開始していていたところ、怪我をした一般兵の臭いを偶然見つけた。

 顎を動かし中身のない生体兵器の外骨格を吐き出すと、精鋭たちを見て動きが止まる。

 そして生体兵器の出てきた建物が傾いていき派手に崩れ、大型の生体兵器は土煙の中へと消えていった。


「くるぞ! 一般兵はこのまま退避、数はあるにしても小型のエクエリで対処できない。食い止めている間に逃げてくれ!」


 アサヒが一般兵たちへと向かって叫ぶ。


「いいのかい、アサヒ? 小型でも囲んで叩けば……」

「こいつはたぶん今ある戦力で勝つのは厳しい、ダメージを与えるには戦車砲か超大型のエクエリがいる」


「それを拠点へとってきてもらうのか」

「そういうことだ。それとキイも間合いには気をつけろ」


 そして土煙の中から飛び出てくる生体兵器。

 長い足を素早く動かし羽で体を浮かす程度の浮力を得ているその巨体は瓦礫の山の上を滑るように進む。


 拠点へと向かうため先頭を進む精鋭と一般兵を先に走らせ、残った精鋭は戦闘に気が付き大型の生体兵器に向かってエクエリを構えるが、巨大なハンミョウは引き金を引く頃には既に眼前まで迫ってきており攻撃より回避を優先した。


「大型のくせに早いぞ! 回避回避回避、ぼんやりしてるとそのまま死ぬぞ!」


 地面を転がりながら鈴蘭隊の隊長が叫ぶ。

 巨体は重量から急ブレーキはできず精鋭たちを通り過ぎたあたりで止まり振り返る。

 長い脚に何人も跳ね飛ばされ地面を転がっていたがすぐに立ち上がりエクエリを構えなおす。


「機動力が小型以上!」

「思っている以上に攻撃範囲が広い」


 起き上がる仲間を助けるためエクエリを撃つが、大型の生体兵器の外骨格は硬く攻撃が全く通じない。

 しかしいくつもの光の弾を受け巨体は羽を広げ大きく後ろに飛んだ。


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