表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
575/798

魔都を抜けて 2

 日が落ち暗がりが増えてくると進むのは危険と判断し、一同は建物の中に避難し生体兵器から身を隠す。

 一般兵たちと合流し一気に大所帯となったため、一つの建物に隠れると人の密度も濃くなる。


「一般兵は休め、周囲の警戒は精鋭だけで行う。明日の日の出とともに出発する十分に休んでおくように」

「なんでまた精鋭だけで? 見張りは多い方がいいんじゃない?」


「シェルターや前線基地を拠点として働いてきた彼らは、こういった野宿にあまり慣れていない。それに明日も魔都内を走り回る。戦力としてあまり頼りにならない彼らを守りながら進むには、すこしでも体力を回復させておくことだ」

「なるほどね」


 ヘルメットをかぶった精鋭の女性と同じ制服の男性が寄ってきて、二人のうちの女性が話しかけてきた。

 彼女はアサヒの前まで来るとヘルメットを外して、伸びた染めた黒と地毛の金髪をたらし頭を下げる。


「今日は助かった。鈴蘭隊の隊長が、逃げるって、私らの判断を無視して、戦い始めたから、困ってた。置いてもいけないし」

「そうか。鈴蘭隊の話は聞いていたから知っていたが、彼女を連れて逃げるのは苦労しただろうな」


「まったく、篝火で、巣を砲撃で叩くのであって、生体兵器と、戦いに来たわけじゃないのに。戦うための、バッテリーにも、限りがあるって、わからないのかな」

「生体兵器を倒すことにしか意識が向かないらしいからな。そういえば黄薔薇隊も帰りは徒歩だったのか」


「いや、車両だったけど、クラックホーネットの、大型が、建物を倒してきて、分断。向こうは精鋭だけ、私たちのほうに、一般兵はほどんどいた」

「分断された時、黄薔薇隊と他の精鋭と分断されて大変だったな」


「それからは、黄薔薇隊や、朝顔隊と、分かれて大移動、だった。そのあと、追撃で逃げていた、車両の半分が壊れて、乗り切らないみんなを置いても行けず、徒歩で逃げてたら。青薔薇隊、チームと合流できた」

「ああ。これだけの一般兵を連れよく逃げてきた」


「……悔しいけど、合流までの間、鈴蘭隊が、戦闘の指揮を、執ったおかげで、一般兵がパニック起こさなかったから、犠牲者も出なかった」

「そうか、明日はみんなで魔都を出る。蒲公英隊の活躍も期待する」


 周囲は見渡す限り疲れて眠っている一般兵。

 アサヒは精鋭と話しており少し離れたところでキイとフルタカは瓦礫に寄りかかって体を休めている。


 移動しながらの戦闘でけが人はなく、疲労がたまった一般兵たちは強化外骨格を外し手足を伸ばしていびきをかいて寝ていて、精鋭たちはそこから離れるように隊ごとに散らばり生体兵器の襲撃がないか別の建物で見張りを受け持つ。

 そのためいびきの五月蠅いこの室内にいるのは交代制で先に休んでいる精鋭と司令塔を任された青薔薇隊だけ。


「昨日の夜とは大違いだねぇ、いびきの大合奏だ。みんな疲れてるんだねぇ、音で生体兵器寄ってこないかい」

「そのために離れて精鋭たちが見張り受け持ってもらってるんだろ」


「見張りならフルタカが適役なんじゃないかい?」

「俺は夜目は効かないから、暗いところでは俺のいる意味がない。お前知ってるだろ、酔ってるのか?」


「そうだった、眠くてぼけたかな視野が広くて遠くが見えてもフルタカも暗いところは見えないんだった。そういやいままで夜戦闘する何時はどうしてたの」

「なるべく避けてたよ。それでも戦う時はよ、車両やケミカルライトとかの灯りでガンガン照らしてた」


「なるほどね。そんじゃやることない私らはアサヒがここで指示を出すために待機か。周囲に散らばった精鋭たちの無線の範囲内、私ら中継役かい?」

「司令塔だ。今日もよ、見張りするのは一番最後なんだろ。ならキイはもう薬飲んで寝ておけよ。明日も忙しいだろうからな、疲れを残すなよ」


「はいよ。んじゃお言葉に甘えてそうするかね、お休み。いびきが五月蠅くて寝られないなら私の睡眠薬まだあるから寝るとき分けてあげるよ?」

「まぁ、そうだな。必要になったら貰うよ」


 キイは鞄を外し錠剤の入った瓶とスキットルを取り出すが、ふたを開ける前にフルタカが彼女の手を掴んだ。


「酒と薬を一緒に飲むなよ」

「いいじゃないか、こんくらい。一口だよ」


 キイがフルタカと目を合わせ口を開く前に彼女の顔を腕で覆う。


「その手は食わねぇよ。薬を使うには水を飲めよ、危ないから」

「わかったよ、降参さ。おとなしく水を飲むよ、ここで体力を使ってもしょうがないからね」


 すると彼女はすぐにあきらめスキットルを手放しフルタカはそれをカバンにしまう。

 錠剤と水を飲むと三つ編みにしていた髪をほどき彼女はフルタカの上着のボタンを外すと懐に潜り込んで、羽織っていたマントを体にかける。


「うぅ、寒い寒い。はぁ、フルタカは暖かいねぇ」

「おい、何だよ?」


「地面は埃とかび臭いからここがいい、ここは暖かいし、ここで寝たいな。だめかい?」

「やってくれたな、目を見ちまったじゃないかよ」


 クスリと笑いキイはフルタカの中で目をとした。



 朝日が昇るとともに行動を開始する。

 崩落の危険はないところまで来たものの建物の中を進むには数が多い。

 朝もやのかかる道を白い息を吐き一般兵たちとともに魔都を駆けた。


「今日中に魔都の外が見られる場所に移動したい。距離的に今日には魔都から出られるはずだ。クラックホーネットの巣は破壊し我々の目的は完了した。作戦は失敗しても我々は胸を張って帰れる」

「そうだね、もうこんな場所にはいたくない」

「朝なら俺の目も頼りになるよな、任せとけ」


 向かう先には生き物の影。

 触覚が生えているが体は分厚い皮のようなもので覆われていた、細長い体の多脚の黒っぽい紫色の生体兵器が現れた。


「魔都の外で見たナメクジお化けじゃないかい!」


 その二対の触手がアサヒたちのほうを向く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ