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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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魔都を抜けて 1

 倒れたビルを乗り越え戦っている者たちを合流を目指す。

 風切り音を立て土煙を上げ地面を抉る蜘蛛の長い脚を躱しながら反撃をする青薔薇隊。

 クラックホーネットは蜘蛛の糸に阻まれ降下してくることはなく高所からの毒の雨も降らさない。

 理由としては大型の足の長い蜘蛛が糸をつけた足を上空にも伸ばしクラックホーネットたちの注意がそれているため。


「デカいわりに動きが早いな。強化繊維でダメージは防げても、勢いまでは殺せないから壁や空中に吹っ飛ばされるぞ」

「それくらいわかるよ、足が長いからそう見えるだけなんじゃないかい?」


 本体は建物の陰にいるため三人は走りながら関節部を狙うが攻撃の効きは薄い。

 大型のエクエリは走りながら撃つには不安定で命中率の低かったフルタカがキイに笑われる。


「フルタカちゃんと当てておくれよ、あんたのエクエリが一番有効なんだからさ」

「走りながらあてられるもんじゃねえよ。走って体力も使ってるし正確な攻撃なんてできねぇよ。変わるか?」


「嫌だよそんな重たいのは、そんなの持ったらまっすぐ走れやしないんだから」

「前に大型のエクエリを持ったときそういや転んでいたな」


 彼女に馬鹿にされフルタカは銃口を上に向けると蜘蛛の糸に引っ掛かった小型の蜂を撃ち抜いた。


「それでもよ、動いていなければあてられるぜ。今の見たかよキイ」

「ごめん見てなかった。また足が来るよ避けて」


 三人のそばを生体兵器の長い脚が地面を切り分けながら通過していく。

 すでに戦闘のあった場所の道路はアスファルトが完全にめくれ上がり、深くえぐった地面の泥が見える。


「魔都に住んでる生体兵器、昆虫型の生体兵器同士でもよ協力はしないんだな」

「見境なく襲っているあたり空腹なんだろう。それとクラックホーネット以外は皆個別に行動する生体兵器だ」


「空腹……兵糧攻めのおかげか、ここに来てやっと実感のある展開になったよな」

「そうだな、もともと魔都に住む生体兵器は共食いをして生きているから。対生体兵器用の生体兵器が多く居ついている、俺らがここまで苦戦なく戦えたのも対人用の生体兵器でないからだろう」


 数匹もいれば足の数は多く、合流しようと進めば進むほど迫ってくる攻撃の数は増えていく。

 建物の陰に隠れている一匹が見えた。

 捕らえた小型の蜂を捕食しながら次の獲物を捕らえようと足を動かしている。


『で……か? ……す、もし……もしもし、こちら精鋭鈴蘭隊そっちは? もし、聞いてる? 聞こえてる? おーい』


 電波の届く範囲に入ったのか、突然聞こえてきた無線の音に慌てて携帯端末を取り出し返答しようとするアサヒ。

 彼が会話に集中できるようにキイとフルタカが援護をする。

 とはいえ青薔薇隊にはどうしようもない蜘蛛の足以外襲ってはこないが。


「こちら青薔薇隊だ、鈴蘭隊といったな。黄薔薇隊と行動したいた精鋭と記憶していたが、あっているか?」

『ああ、うん。あってる。でも大型の生体兵器との戦闘で逃げてる最中にばらけちゃって私ら孤立しちゃってるんだけど』


「孤立? 黄薔薇隊は一緒じゃないのか?」

『残念ながら。でも昨日同じようにばらけた精鋭たちと合流した。そっちのお仲間さんだとおもう。普段私ら隊でしか行動してないんだけどこういう時は手数が足りなかったから助かってる』


 攻撃をかいくぐり見えてくる襲ってくる蜘蛛の足を避けながら戦っている精鋭と一般兵の姿。

 数十人といる中で一際目立つ白い制服の隊に目が行く。


「黄薔薇隊?」

「じゃないよな。よく見ろキイ、黄薔薇隊の隊服はよ俺たちと同じスーツベースだ。スカートはない白い制服だけどよ別の隊だ」


「他の隊と合流したってこと?」

「らしい、とりあえずこれで生還率は上がったよな」


 黄薔薇隊からはぐれていた精鋭たちと合流し一団は移動を開始する。

 きちんと確認が取れていないが青薔薇隊とともに来た精鋭や一般兵の姿が確認でき合流できたとアサヒは安堵した。


「青薔薇隊隊長タカチホアサヒだ。混乱を避けるためこれから我々が指揮を取る、ひとまずこの戦場から離れそこで再度指示を出す。精鋭は各々一般兵を守るように陣形を組み我々の後に続いてくれ」


 青薔薇隊に続いて戦っていた精鋭と一般兵が一斉に走り出す。

 足の長い蜘蛛はクラックホーネットと戦うのに夢中で精鋭たちを追ってくる様子はない。

 逃げる精鋭たちの中、白い制服の女性が不満を漏らす。


「何で戦わないのさ? あいつら戦い終わったら追ってくるぞ、この数なら倒せたでしょ複数匹の大型相手でもさ」

「エクエリのバッテリーのことを考えろ」


 アサヒは周囲に気を配りながら答える。

 精鋭はともかく傷だらけの強化外骨格をつけている一般兵たちの消耗具合が激しく、息が上がっている者が多い。


「今の目的は魔都から出ることで、戦うのが目的ではないからだ。それに一般兵たちの様子を見ろ疲れている」

「気合の足りない大人だなぁ。クラックホーネットにシェルターを襲撃されて復讐を誓ったんだろ? もっと日ごろの鍛錬をしておけってんだ。いつか来るとわかっていたんだから準備なんかできるだろうに、やる気がないなら参加なんかしなくていいのに」


「口が悪いな、鈴蘭隊の隊長。声も大きい、士気が下がる少し言葉を選んでくれ」

「へいへーい。わかりましたよ、脱出脱出ね」


 戦闘を途中で切り上げられ機嫌の悪い白い制服の女性隊長は離れていった。


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